一本歯下駄と小指の支え セカンドシーズン ロック&クライ&愚
と言う訳で卵焼きを作ってみた。
作るのかよ。作るのである。
卵は軽く解く。軽く一つまみ砂糖を入れる。こうすることで卵焼きの水分を保持する組織を維持できる。ためしてガッテンでやってたことだ。
鴉野家の卵焼きは醤油味なので醤油を入れる。バターを落としてひょいっと下駄に乗って焼き始める。こんな状態で日本風の巻き卵は無理である。頑張ったが半分オムレツになった。自分で作って食べた手前、味は保証できるが誠に不細工である。
数分で本日の更新分の記事ネタが終わっちゃたじゃないか。卵焼きなんてパッパと焼いたほうが汁気があって旨いのだ。異論は認めない。
多少は不安定だが所詮鴉野家の調理器具は電子調理器でフラット構造で火傷の危険はほぼ無いので全然怖くない。美味しい卵焼きを作るならガスに限るそうだが知ったことではない。多少の不安定さも問題なく彼方此方に手を付けるのでこまりゃしない。文字数稼いでも良いことなどないので別の事にチャレンジである。
一本歯下駄を手に装着して逆立ちに再度チャレンジしよう。
しかし逆立ちと言う奴は掌を中心とした円運動九〇度で行う。唐突に半径が一六センチも増えれば並外れて怖い。前回はコレで断念した。臆病風に吹かれてアレだが本当に怖いのである。
仕方ないので頭で逆立ちして腕立て伏せの要領で逆立ちを試みた。普通なら出来るのだが一六㎝分の位置エネルギーを鴉野は舐めていた。
動けん。
バタバタと逆立ち状態でもがく鴉野。お前は頭のおかしい白鳥か。優美に泳ぐ白鳥は水面下で足を必死で動かしているが鴉野は眼に見える位置で身体を醜くばたつかせている。何をやっているのだ。逆立ちをしたいらしい。
仕方ないのでコタツに入りながら執筆するときに使う座椅子を持ってくる。頭から落下しても良いようにこれをクッションとして用意。思いっきり壁に向かって飛ぶ。少し高い位置での逆立ちで自分の部屋を見る。
ちょっと視点の違う自分の部屋が見えた。
奇行はロックだ。
悲喜劇を乗り越えて泣いて笑う愚かさと優しさをヒトは持っている。
そう思いながら鴉野は重力に屈した。




