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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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一本歯下駄と小指の支え セカンドシーズン Go! マイハウスの中はアドベンチャーワールド

 だいたい下駄履いたくらいで人間の生活が激変することは無いのである。鴉野の昨今の変化と言えば仕事で別店舗の管理の手伝いを命じられた程度であり、今更放送大学に通うことを決めて裏千家の初心者茶道講座を申し込んだ、あるいはアイドル志望の若い子を雇うことになった程度だ。

 仕事柄鴉野は結構人様の履歴書を見ることはある。あるにはあるが『高校卒業、大学卒業』しか書いていない履歴書は斬新だ。親御さんと知り合いじゃなければ雇うのを躊躇ったであろう。身内は最強の履歴書である。読者の皆さんは親御さんを存分に労わってほしい。


 これらの変化は別段下駄を履いたからといってもたらされたものではない。そもそもこの新しい下駄で素振りは現時点では無謀だ。

 空手の突きだって一三回やる前に壁に手をついた。前蹴りも危険である。前の一本歯下駄で後ろ回し蹴りの練習をしていたがどう見ても変態行為だ。

 なお、横蹴りの練習と後ろ蹴りの練習と前蹴りの練習をしっかりやれば後ろ回し蹴りも綺麗に使えるようになる。誰得情報。

 酒を飲みながら鴉野は『無笑』のネタを考えるが考え付くわけがない。取り敢えず家の中を移動してみようか。鴉野の部屋は三階にあるので階下に降りないといけない。

挿絵(By みてみん)

 この通り螺旋階段である。超怖い。


 鴉野は図らずしてヒキコモリが自らの部屋を出るときの苦悩を想ってしまった。確かにこれは怖い。トイレに行かねばならぬときのみ出る気持ちが解る。そもそも土踏まずまでしかない履物を履いているのに靴サイズの幅の階段を下る恐怖はハンパない。鴉野は図らずして老人が階下に降りる恐怖を知った。

 あと一六㎝も一気に身長が伸びればチビには夢である頭を上にぶつける恐怖を味わえる。実際にぶつかる事は無い。必死で柱に捕まって背伸びしてみようとしたが履物の構造上つま先立ちは向いていない。壁に取りつき必死で降りる。怖い。めっちゃ怖いし。なにこれ。

 終わったら往復。夜中四時に何をやっている。家人は寝ている。

 何を考えて自らの家の中をアドベンチャーワールドにしているのだ。鴉野。


 流石に下駄を履いて風呂には入らないがこれでは食う寝る着るだけでも大変である。老人は立って寝るだけで大変だと思う。いや、こんなものはいて寝転がるのは大変怖い。怖いというかコケたら永眠する。鴉野の分の食費が浮いて結構なことである。


 鴉野は前蹴りの練習を部屋の中でやってみた。気分は通信空手で段位を目指すオタクだがあながち間違ってもいない。オタクと言うか変態だがまぁ大差ないし。

 身体のバランスが弱ると人間は自らの家ですら危険地帯になる。


 意外と人間、冒険のネタはそこらに転がっているかも知れない。

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