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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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一本歯下駄と小指の支え セカンドシーズン 壱

 足を横にくじくと当然転ぶ。もう豪快に転ぶ。鴉野は一本歯下駄を履いていても超大股かつ腰を落として走れば問題なく走れる事に気付き、ナンバ走法を会得するべく走っていた。右手と右手、左手と左手を同時に突きだし、滑るように走るのである。


 す ん げ ー 気 持 ち 悪 い 。


 間違っても真似してはいけない。誰もしない。


 アスファルトの上でやると豪快に転ぶ。


 すべーん!


 鴉野は小学校以来、走って滑って転ぶというアホな体験をして膝を豪快に擦りむいた。痛いだけではなくあまりの自分の阿呆さ加減に大笑いをしたが笑いごとではない。この時のアザは今だに残っている。

 活動報告でコケた話をしたのは一月九日。実に二か月経っても無くなっていない。愚行の代償だが別段痛くも痒くもなく後遺症もないので気にしていない。それはそうと左右の揺れだ。なんとかして克服せねばならない。


 さて、一本歯下駄を履くコツは『常に転ぶ』感覚にある。実際に転んだら怪我をする。当たり前だ。

 しかしまっすぐ立とうとせず、最低転ばない程度に揺れ続ければ逆に安定する。結果的に首から下全てを使う事になる。

 お蔭で『蹴りは脚で撃たぬ! 首から下の動きで撃ちだすのだ!』とかワケのわからぬ愚かなことを言いながら蹴りの練習をしだすようになる。

 普通なら親が止めるところだが母は多くの場合冒険旅行に旅立っている。


 左右に転ぶならR角つけて底を丸くしたらころばないんじゃね? 謎理論を鴉野が考えたのは愛宕で転びながらだった。


 しかしそれだと足の指の踏ん張りがすべてになってしまう。


 この案を鴉野が投げていたとき、面白いモノの話を鴉野は聞いた。


「『足半あしなか』って知ってるか。兄ちゃん」


 一応鴉野にも知識があるが、実際に履いていたという人間に遭遇するのは初めてだ。

 足半というのはチッコイ草鞋だ。足の土踏まずくらいまでの大きさしかないので足の爪と土踏まずで全体を掴んで足の指をスパイクのように使って履く。これは足の裏に泥がつくことを考えなければ非常に具合の良い履物で、古くは武士たちが使い、今でも鵜飼いの人たちが使っている。


「いやぁ。その下駄見たらなんか懐かしくてねぇ」

「ああ。多分一本歯下駄より足半のほうが実用度も身体への健康度も上だと思いますよ」

 そもそも一本歯下駄じゃ和式便所にマトモに座れないからな(棒読み)。立ちションだって億劫だ。


「こう、普通に作ったら足が痛いから、すっごく頑張って藁を叩くんだけど藁を叩く棒が大人のサイズで子供の手には痛くてねぇ。みんなで作ったものさ」

「ほうほう」


 ココは散髪屋だったので店の親父も茶化す。


「ああ。あの時はそんな感じだったねぇ」


 思い出話に花が咲く二人。貧乏だったけど子供の頃が懐かしくてたまらないとおっしゃる年輩の話に耳を傾けていた鴉野は思った。


「足半と混ぜれば良いじゃん」


 そもそも足首をひねるのは足首を固定しようと思うからだ。底を丸くして足首をあえてぐらつかせりゃ大丈夫だ。それに踵を地面につける構造にすれば土踏まずの力も使える。足の指で下駄を掴めば更に安定する。コレだ。コレで行こう。


 鴉野はさっそくそのワケの解らぬふざけた下駄をメールにして某下駄屋さんに注文した。下駄屋さんは恐らく超困ったことであろう。誠に申し訳ない。

 踵を使えば良いと言いつつ高さを一六センチにして踵を使えない構造にしてしまったのは鴉野の設計ミスである。

 真似をする者はいないと思うが、鴉野と同じような下駄を作る場合は是非踵が地面につく高さで作ることを推奨する。

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