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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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正義の味方 前篇

 鴉野の弟と鴉野は結構歳が離れており、彼に関するエピソードは結構多いのだが、まぁ鴉野本人で既にいっぱいいっぱいなので当コラムで彼や鴉野の姉が被害を被ることはあまりない。それでなくても久さん(父。仮名)と由紀子さん(母。仮名)でネタ満載なのに。


 鴉野の父は今でこそ穏やか。で、良い筈だ。多分。……穏やか。だと思いたい人物で通っている。少なくとも小さな子供には穏やかな人物だ。どうも子供好きなのは血筋らしい。弟は子供が嫌いだとか言いながら親戚の子供に突撃を喰らいまくっているので彼が年末に帰ってくるか否かで鴉野の負担は激減する程度には子供に好かれる。之も血筋かもしれない。閑話休題。


 弟はさておき、そんな穏やかなのかなぁ……な父だが昔は可也アレだったらしく、婚約者の飼い犬が襲ってきたのでなぐり殺してしまったり、空手の先輩のアバラを飛び込み二弾蹴りで次々砕いたり、遊んでばかりで片づけない鴉野のブロックを二階から放り投げたり、延々と終わった愚痴を繰り返す母にキレて薬缶を水場に放り投げる(※ 流石に床を水浸しにするのは避けたらしい)と実に短絡的な行為もしないではなかった。

 母が言うには『理想の夫婦と言うのは最初からじゃない』だそうである。女性読者も男性読者もゆめゆめ記憶にとどめておくべきであろう。


 拙作『人類は滅亡しやがりました。』(。も含めて題名)の主人公、ハルカナル大地ダイチに言わせればこーなる。


「男の子は若い女の子のお肉を狙う狼さん。餌付けして野良犬。飼いならして飼い犬。文句を言わず働いて家に金を入れる番犬になるのはずっと先」


 この話をそのまま『佐倉さん家の短編』の主人公のモデルになったツイ友の母に話したところかの母は腹筋崩壊したそうである。夫婦円満何より。


 拙作『夜明けまで恋して』では父や母の若き日の奇行をモデルにしたエピソードが幾何かあるが、痴漢を殴り倒して自ら警察を呼び、被害者の女性が逃亡。証拠不十分で暴行扱いになりひとり留置所にポイされる程度には我が父も正義感のある男だった。やりすぎ自重。


 そんな父だが中学を卒業、高校に進学して間もなく中退して大阪に出てくることになる。離れ小島に住まう彼には次の月の船代を親に請求することが出来なかったからだと父から伺っているがそうやって小さいころから働きづめだったので意外なことを知らない時がある。

 普段本をよく読み、工業系の資格を多数持ち、無駄に博識なので余計ギャップが凄い。

 下手な大学生より外国人の空手のお弟子さんと意志疎通出来ていた男なので『こんなことを知らんのか』な事があると余計周囲を驚かせる。


 かつておせち料理を知らず『正月はミカンとナマコとダイコンと、あと餅でもあれば立派な正月じゃないか』と言い放ち、鳥取県の田舎から出てきた母を呆れさせる程度には知識が偏っていた。


 長々と書いたが結論を述べる。


 具体的に述べると彼は国民的漫画のヒーロー、ア○パンマンを知らなかった。


 子供が絵本を読んでいたのに。てか、弟が毎日見てるやん?!


 鴉野兄弟は帰宅して『背中揉んでくれ』と言って子供たちにマッサージされる気持ちよさに熟睡を始めた父に赤いマジックインキを取り出し、背中に豪快にアン○ンマンのイラストを描きだした。

『僕が正義の○ンパンマンだ』

 デカデカと描く鴉野。自分で言うのもなんだが改心の出来だ。

「いれずみいれずみ」


 母と姉は黙認である。というか姉も参加していたかもしれない。


 翌日、事情を知らぬ父は四〇度を越す工場の中で『熱くない』と強がりをいって自分の扇風機の類を他の従業員に譲って作業に没頭。終業時間になり汗だくで作業服を脱ぐ彼に同僚が声をかけた。


「おい。なんだその入れ墨」


 大笑いだが父も同僚もアンパンマンを知らない。


「あれ、なんだったの?」


 素でボケる父に鴉野兄弟は「アンパンマンは優しくて強いんだ」と必死で基本的知識からレクチャーする羽目になった。


「なんで知らないの?!」

「いや、知らん」


 結構博識な父なので余計疑問を呈する姉弟たち。


「『掌を太陽に』の人だよ」


 たまりかねて教養人な母が補足するが首を捻る父。


「まぁ悪気が無いならいいや」


 父は鷹揚に納得すると「肩揉んで」と言って許した。


 なお、鴉野兄弟が描いたアンパンマンは一週間落ちることが無かったと付記しておく。

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