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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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死んだらドラゴン○ールで生き返る

 鴉野の親戚の子供は普段こう言っていたらしい。


「死んだら生き返る」


 なんでも今日日の漫画やアニメ、ゲームは皆そうだかららしい。娯楽小説と称して駄文を書き散らかしている身としては苦笑いせざるを得ない。

 確かに転生トラックに轢かれて異世界で自由気ままに動く主人公は本当に多い。鴉野も何作か書いたと思う。調べてみたら二〇年以上前のゲームブックには既にあった。双葉社の『イース』のゲームブック版では主人公は車に轢かれ、魂だけ転移。異世界の冒険者、アドル・クリスティンの身体を乗っ取ってしまい彼と内部で会話しながら目的の完遂を果たす。


 何故一旦死ななければいけないのか。

 言うまでもなく里心がつくので異世界で大暴れ出来ないからだろう。


 『封神演義』では神に成るためには一回死んでもらう必要があるという理由で殺し合うらしいがそれとは違うようだ。


 しんでしまった。


 教会で生き返るのはコンピュータRPGではドラゴンクエスト。


 死んだわけではないが行動不能な重傷。行動可能になるにはレイズ以上の魔法が必要なのがファイナルファンタジー。


 後者は五作目で登場人物の一人が死亡するが、レイズや各種回復アイテムを駆使するも絶対に蘇らないという描写が見られる。意外と珍しい。


 死亡には幾つか段階があると思う。


 意識がある日なくなれば実質死んだようなものだが我々は毎日眠りについている。


 誰かが寝ているからと言って上司や学校の先生に叱られる以外は人々はそれは当たり前のモノとして受け止める。必ず目覚めるという前提があるからだ。


 肉体も死ぬ。身体の重要活動を司る組織の一部の死亡により、人は前者の状態になる。やがて細胞全体が活動を停止し、死ぬ。


 社会的に死ぬこともある。つまり彼もしくは彼女がいなくても社会が成り立つようになっていくことだ。これは致し方ない。悲しい事だが人はいずれ死ぬ。


 記憶の彼方に消えていく死。


 もはや彼や彼女は誰の記憶にも残っておらず、記録を見る者もいない。


 これらを統合して死亡と言うならば、何をもって死んだら生き返るというか。


 動かなくなった祖父を眺め、もう二度と動くことはないと本能的にそれを知った彼を鴉野は見る。彼は気丈にも花を祖父に捧げた。


 娯楽小説書きは因果なもので、死んで火葬場に送られたものは蘇らないという基本的な事すら大ウソを書く。それが絶対に起きないが故にその嘘が美しいと知るのは歳を重ねてからでいい。少なくとも彼が祖父を想い続ける限り祖父の教えは何度でも蘇るであろう。

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