ダイヤモンド(米)は斜め上に 後編
どぶろく裁判
日本において、酒を造る者は酒税法第7条により、所轄税務署長の免許を受けなければならない。本件被告人は自分で飲むため、清酒等を自家製造していた。しかし、無免許であったため、酒税法違反になるとして起訴された。第一審(千葉地方裁判所昭和61年[1986年]3月26日判決)は酒税法第54条第1項により被告人を罰金30万円に処し、第二審(東京高等裁判所昭和61年[1986年]9月29日判決)も控訴を棄却したため、被告人側が上告した。
(Wikipedia日本語版より抜粋)
日本では個人が酒を造ると酒税法に引っかかる。
戦前の資金調達関係の法律が尾を引いているからだそうだ。面倒な話である。この酒税法が自分の幸福追求権の支障になると争点になったのがかの有名などぶろく裁判である。
まぁ細かいことは言う必要もないが。
『お前の幸せの追及はさておき、国の財源になっている税金はちゃんと払ってくれ』
こういうことである。
至極当然な結論になる。
そういう世の中でなければ脱税し放題になってしまう。
会社社長だってどこぞの知事だっておのれや社員の幸せや選挙対策に為に脱税するのですよ。関係ない。税金は納めろ。
一応、ビールセットなどは市販されており、自宅で結構本格的なビールをつくることは可能であるが、道具を市販するのは悪いわけではない。
そう言う訳で由紀子さん(仮名)にビールセットを買う案を打診してみたところ『邪魔過ぎる』と言う実にまっとうな意見を頂いた。
調べてみるとおおよそ趣味の範疇に収まらないほど手間暇かかるらしい。
と言う訳でどぶろくを作ることにする。
切っ掛けは炊いている途中に炊飯器の蓋が開き、ガチガチの芯の残る炊き米を入手したことである。普通なら蒸し器に入れて圧力鍋で炊いて美味しい普通の炊きごはんにする。しかし鴉野はこれをどぶろくにすることにした。ここに炭酸入りのミネラルウォーターを突っ込む。ドパドパ入れる。
なぜに炭酸。それしかなかった。
簡単に言うと容器として丁度いいペットボトルがこの炭酸入りミネラルウォーターだけだったのである。
米こうじにヨーグルト大匙一杯、ドライイースト投入。
しばらく鍋に放置でブツブツブツブツ。悪くはない。
何故か酸い香が気になるが。
季節は夏であり、『腐ってるんじゃね?!』な気もするが無視する。
本来甘い香りがする筈なのだが『まぁヨーグルト入れ過ぎたんだろ』と言うことでコレも無視した。一日たって三日すると酒っぽい匂いになるがなんか酸い。こうして出来たものを越すのだが。
「コーヒーフィルター使おう」
紙を用意してフィルターで濾す。
「これ、濁り酒って言わねえんじゃね?」
綺麗な透明の液体になって出てきた。
但し、三日たっても濾しきれない。コーヒーフィルターさんのフィルタリング力を舐め過ぎである。紙一枚でこの濾し能力。そりゃ開発者の主婦はぼろもうけしたわけである。
出来た代物を鴉野はさっそく試飲してみた。喉を通る熱い感触。すっと鼻に通る香り。嚥下される透明な液体が口の中で放つ味に親子の意見は一致した。
「コレ、酢だわ」
「確かに」
酢は酒ではない。




