詐欺師の条件(または推理小説のアイデアノート)
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拙作『炎の行方(祭り参加作)』のアイデアノート
「鴉野さん」
またてめぇかっ?!
「いやいや、フーとかいわないでくださいっ?! 猫じゃないんですよっ?!」
「わんわん。ニャーニャー ギシギシアンアン オギャー」
「一部変な表現混じりましたよッ?!」
で、なんのようですか。さっさと茶漬け食っていきやがれです。
「それ、帰れって言う意味じゃないですか」
詳しいな。
「どうしても書けないジャンルがあるんです」
……。
「俺、ファンタジーしかかけないのに、ファンタジーの層厚すぎてランキングに乗らないんです」
いや、俺も日刊ファンタジーの端にも乗ったこと無いんだけど。
「と、いうわけでなろう内部のマイナージャンルの書きかた教えてください」
「死ね」
必死で書いてるほかの作者さんに土下座しておけ。そうすれば教えてくれるかも知れん。
「そもそも、ファンタジーなんて面倒じゃないか。現代モノ書けよ」
「え~?! そりゃ仕事をしていりゃ職場にトラックが突っこんできたり、町を歩けば酔漢に囲まれていたり、お店の改装をしたら酔っ払った吹●郵●局の人に『勝手に改装しやがって。若いくせに生意気だ』と暴れられて襲われる人ならネタには困らないでしょうけど」
しばくぞ。
詳細は後の話題にする。
「ちなみに、そいつは暴れた後とりあえず服代だけ請求したが領収書を切ってくれとか抜かした」
「莫迦だ」
だから、警察に突き出せなかった。定年前まで務めれば退職金2000万オーバーだぞ。あの人たち。
「領収書出せるってことは、そんな莫迦に酒を飲ませたってことか吹●郵●局」
「いうな。消される」
むしろそんな酒癖で定年前まで良く勤めた。
「それに、この間苦手の推理モノ克服したじゃないですか」
「普段テキトウに書いてるからな」
「あのへんのコツは?」
「組み方が今までわからなかっただけで、視点が出来たら描けるようになる」
「答えになってません」
「俺もわからん。とりあえず」
「事件が起きた。こういう真相とタイムラインだった。登場人物はこう動いた。こう和解した」
だいたいこんな感じで推理小説は進行する。
「妥当っすね。犯人考えるの面倒でも最後に人間ドラマがあればなんとなく感動しますし」
ぶっちゃけるな。
「苦手なものを書かずに、得意なものを書いただけ」
「意味解らんです。はい」
むう。
「ええと、俺は推理モノが苦手だよな」
「と、いうか金ダライが依頼人の頭を直撃する酷いものを見せられました」
うっせえ。
「とりあえず、苦手なものを把握しないとダメ」
「はぁ」
「推理小説を書くのが苦手」
「そもそもアレは推理小説の範疇にも入りませんでした」
「犯人の心理描写なんて描けるか」
「鴉野さんハッピーエンド至高ですもんね」
「自分が創造した可愛い登場人物たちを犯罪者として追い詰めるのが嫌だ」
「地味にいいこと言いますね」
「だから、読者に犯人になってもらった」
「はいっ?!」
いや、だから。読者に犯人役になってもらったんだよ。
「どうやったら読者さんが犯人になっちゃうんですか。一番ありえないでしょ。ていうか読者さんに失礼です。普通登場人物が犯人になりますよ? 誰が犯人かって予測するのが楽しいんでしょ」
「既にCが犯人と提示済み」
「小説では二人称はまずありえん」
「『我輩は猫である』があるじゃねえっすか」
「ここはなろうだっ?!」
「文学ジャンル人気ですよっ?!」
デフォ設定が文学だからなぁ。
内情は文学とはかけ離れたものも投稿されているが、純文学至高の人頑張っているし。
あ。
補足だ。
二人称は登場人物が読者に語りかけたり、読者そのものを登場人物として出す手法だ。
「構造的にこの話は読者である商人に人外のエルフが語りかけてくる」
「ですね。人外らしいキャラになっています」
「そしてエルフの言動から、このエルフが人間に似た姿を持っているが生態、感性共々人間と異質な存在と提示される」
「そうっすね。ファンタジーでミステリなんて期待できます」
「それ」
「え?」
「二人称なら、商人が何を感じたか、エルフになんと返事したのかは読者が自分で脳内保管して決められるんだ」
「あ」
ゲームブックに多い手法だ。
「あれっすね。ドラクエで主人公の発言がないのと一緒ですね」
「ちゃんとアレは主人公=自分になってるしな」
本来のTRPGでは主人公の発言はプレイヤーである読者が決めるが、コンピュータRPGは発言そのものを省いて行動で語るようになっている。仕様を逆手に取っているのだ。
「じゃ、犯人を読者にすると」
「犯人の心理描写をすっぱぬける」
酷い作者だ。
「でも、二人称って作者が読者の考えていることを規定してしまうので不愉快ですよ」
「だから短編」
気付く前にトンズラする。
「あ、それでエルフでファンタジーなんですね。人間に不慣れなエルフの無礼を描くことで」
「お話への嫌悪感をエルフに対する無礼さと置き換えることが出切る」
オマケに『嘘がつけない』『悪意が見破られる』『悪事を行うと激痛が走る』『人を傷つけることが出来ない』ルールが語られ、世界観をさくっと伝えられる寸法だ。
推理小説の知的遊戯に対する知識はないが、契約祈祷や制約呪などのファンタジーRPG的な知識は豊富な鴉野。
なんでもないファンタジーRPGのお話がブロックを組み合わせるだけで推理小説に化けただけである。何でもない物でも推理小説に転用すれば斬新なギミックになり、知的遊戯に化けるわけだ。
「頻繁に出る()。これは小説では普通ない手法ですよね」
「発表場所がなろうだからね」
「つまり、若年層が多いなろうユーザーは小説作法にあまりこだわらないのを逆手にとって」
「これが二人称だということに気付かれぬよう、意図的に視点のカメラを出して揺らして誤魔化す」
「で。オチと」
「苦手を逆手にとってるわけだ」
「小説書きというより詐欺師っすね」
「詐欺師と記者と小説書きはにているからなぁ」
「そうっすか? 記者さんとかキレますよ」
「本当のことを語って嘘以上のことをなすのが記者。嘘八百を並べて本当を語るのが小説書き。嘘を本当にしてしまうのが詐欺師」
そして詐欺は犯罪です。
「なんか、俺にも推理小説が描ける気がしてきました」
「解らんところは書かず。誤魔化す。わかってるつもりにさせる。問題は何処がわからなくて苦手かを把握することだな」
「苦手を武器にするんですね」
「そういうことだ」
「解ることの世界に引きずり込んで、苦手をさぞ得意なように演出すればいいと」
「そゆこと」
それに。あれは結局主犯が誰だという論理的根拠をエルフは述べていない。
それ以降の会話は「犯人が反論」しだすので物語は炎と共に消えているのだ。
「てか。やり方が詐欺師より酷いです」
ぶぶづけ(茶漬け)くってくか?