りあるばいおはざーど その六
ある日の事だった。
鴉野の勤め先の店の前でお客さんが人だかりを作っていた。
「うーん? どうしたんだろう」
時間的にまだ学生さんが出入りするころあいだ。当然人も多い。あっという間に店の前は混雑状態。鴉野が店の前に出ると、軒先の前にあるバス停で三十路くらいのカップルが。
『ヤッていた』
何をと聞くな。マジで。
濃厚に愛し合う二人は女の子は嫌よ嫌よ。男の子はいいじゃないかいいじゃないか。俺にとってはダメじゃないかダメじゃないか。
お客さんにとってはコレはアレだろもっとやれ。
しばし時が止まっていたが鴉野は叫んだ。
「ごらっ?! 警察呼ぶぞッ?!!」
いや、野暮なのは解っているんだけどね。流石にアレだろ。聞けば近所の公園でもやっているカップルがいるそうだ。
「あそこって某大企業の通り路兼ねた公園ですよね」
「うん」
恐るべしバカップル。この寒さでも関係ない。頑張って愛を育んでください。
そんな鴉野は先日かのバス停前で真面目そうな高校生カップルを見かけた。
手を繋ぐのも遠慮がちで初々しい二人は何事か恥ずかしそうに言葉を交わしあい、やがてキスをした。
「おおおおおおおおっ?! よくやった?!」
思わず拍手しそうになる鴉野。超照れる二人。とりあえず向うはこっちに気付いていない。バス停の人々も少し離れた彼らの青春の一ページに気付いていない。まさにリアル少女漫画の世界である。俺は感動した。
処で、人類は先進国の武器輸出の煽り、現在の経済形態上の問題で現在アフリカなどで死にまくり、
北朝鮮で三〇〇〇〇人粛清され、中国が頑張って一人っ子政策やる反面チベットやウイグル自治区で民族浄化に励み、日本でも某国エリートと結婚しましょうな宗教やお見合いサイトが頑張っているのにも関わらず増えに増えて七〇〇〇〇〇〇〇〇〇人。
ちょっと前のアカどもの頑張りもなくなった今、このままいけば一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇億人も夢ではないらしい。二〇年以上前に『人類の天敵がいれば』と言うことで名作『寄生獣』が産まれたが、下手なばいおはざーどより人間のほうが恐ろしいのかもしれない。
酸素を生み出した植物の台頭など、環境を激変させる生物の登場により地球生物は進化を続けている。人間が別の生物に取って代わられるための準備段階が案外もう始まっているのかも知れないという予測を新井素子が『いまはもういないあたしへ』所収の『ネプチューン』にて描いている。興味ある方は一読してほしい。
まぁ。地球から見て人間がばいおはざーどな有害生物でも、あるいは時期の進化の王を作り出すための踏み台生物であってもどうでもいい。だからといって俺だけ死んでやる義理も無い。
そうして鴉野は好き放題に生きて実に無駄な人生を生きる。
恋人もいなければ友人もいない。どう見ても人類に全く貢献していない。でも死ぬ気はない。それでも人類は寛容らしくまだ鴉野は生きている。
結論。人類バンザイ。
(りあるばいおはざーど おしまい)




