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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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ザワークラウトが納豆になったはなし【2021/02/28】

 ザワークラウトは自宅で作れる。鴉野は再び発酵食品への憧れを高めていた。頼んで母につくってもらう程度には。


 ゆっこさん:れしぴどおりつくったよ


 ワクワクしつつ二人で発酵二日目に実食。


 ゆっこさん:おいしくない

 鴉野:発酵が足りないのかしら


 しかし、『美味しくないもの』として存在を忘れられていたこやつは冷蔵庫の中で牙を研いでいたのである!



 さて話が違うように感じるだろうがそのまま聞いてほしい。本日clubhouseという音声SNSにおいて話の流れから『謎のアジア納豆』『幻のアフリカ納豆を追え』という書籍レビューをした。


 そもそも日本人は『納豆は藁の枯草菌でつくるもの』としているので農薬導入とともに個人宅で納豆を作る文化は絶滅した。


 実のところ納豆に類する食品を『藁で包む』のは世界的に見て少数派であり、容器内の枯草菌や自然界にある葉で発酵させるほうが主流だ。



 余談だが縄文人は豆を葉で包んで燻して保存していたのかもしれないと『謎のアジア納豆』では仮説付けているようだ。保温のために用いた藁が主流になり葉が省かれたのではないかとのことであり稲作以前に納豆があってもおかしくないのだ。


 また、アフリカではパルキアと呼ぶ実やバオバブ、はてはハイビスカスまで納豆にする。枯草菌は宇宙空間やろソレレベルな過酷な環境に耐えるので実はなんでも納豆になり得るしスターターとなる発酵の素も世界的にみて実に多様なのだ。


 また食品としてのレシピも豊富かつダシだけとって捨てるレシピも世界的に見て多い。


 日本人をはじめ納豆民族は我が納豆こそ最も美味しいし他民族には食べられないものと思い込んでいるようだがそんなことは全くない。むしろ日本は納豆後進国である。


 アジアをはじめ山岳部ではタンパク質摂取のため納豆に類する食品は愛されておりグルカ兵は皆で納豆をつくって食べるとのことである。納豆は100年前のイギリスでも食されていたかもしれないのだ!


 鴉野もそんな話の流れで冷蔵庫内部にて数週間放置したザワークラウトの存在を思い出した。なんてこった。



『え、鴉野さん。ザワークラウトって自作できるのですか』

「できます。母と作った」


 そういうわけで久々に実食となる。実に二週間ぶりに食することになる。


「まずい」


 一口たべるなり母ゆっこさんは箸をつけなくなった。


 鴉野も一口。苦い。


 鮮やかな色になるはずの紫キャベツは今やブラックかつvioletでviolenceな異様を放つ。


 客観的にみてこれは普通に発酵失敗である。


 こんなものはヨーロッパの各やまやまを回った母ゆっこさんから見れば『もっとすっぱいけどあじゆたかでおいしい』本物のザワークラウトに及ばない。


 しかし鴉野はこの味に心当たりがあった。『謎のアジア納豆』の著者が述べるように古い納豆は苦味と痛みを放つ。


「ゆっこさん。これ納豆だよ」

「?」



 母には理解不能のようだがアジア納豆は器に残留する枯草菌のみで発酵させる例もある。


 そして納豆菌は冷蔵庫のような過酷な環境でも耐える。ゆっこさんは糖質制限と称して納豆を常食する。乳酸菌を枯草菌が駆逐しておかしくもなんともない。


「成功したよ。これ。ザワークラウト納豆が!」

「そんなのいらない〜」


 ダダをこねられても。


 つまり食品としては不味いとしてもアジア納豆の例に倣いダシとして使用すれば美味いわけだ。


 鴉野は自分で食器を洗う都合、炊きご飯に納豆は入れない。納豆汁にする。


 早速納豆汁にして食した。


 端的に言う。

 めちゃくちゃ美味い!!


 こんな美味い納豆汁は食べた記憶がない。


「納豆汁だ! ほんとうに最高にうまいよこれ!」

「ヤダヤダヤダ! ぜったいたべないからどっかもっていって!?」



 この苦味旨味。まさに甘露である。

 納豆の苦みは味噌でクリアになり納豆の香りが味噌の香りを補強する。とんこつラーメンに納豆を入れたら匂いを打ち消しあって美味しくなるのに似ている。


 何故ゆっこさんが頑なに納豆汁を食べないかというと豪農の孫である彼女は汁飯の類に激しく嫌悪感を示すからである。


 本人は砂糖も満足に口にできない生活をしていたのだか貧富で伝統を断ち切るのは難しいらしい。

 とにかく納豆汁は彼女の嫌悪感を掻き立てるには充分な代物らしいのだ。



 図らずして爆誕した『ザワークラウト納豆汁(仮名)』。



 枯草菌による発酵で旨味を増した味噌汁は腹が膨れてとにかく美味い。とんでもない食品がてきたのであるが母は本気で嫌がっている。まだ拳一つ分残っているので母にも協力してもらわないと供養にならぬ。


「美味い美味い」

「たべないから」


「納豆汁の味がする。ちょっと苦味があったのが実にいい感じで納豆汁にまとまったので真面目に美味しい」



 ここまで『鴉野 兄貴』がレビューをしても母は揺るがない。まぁ『小説家になろう』で鴉野のレビューを真面目に読む人が何人いるかだが。


「ただ、ちりめんじゃこの山椒がビリビリするからかそれに反応して舌が痛い」

「そのちりめんじゃこはお友達が作ったものだし、手間暇かかるもの。食べちゃダメ!」


 あなたがおかずに出したのだ。


 ゆっこさんは鼻が良くないので匂い的にありえない組み合わせの食べ物をまとめて出してしまう。


 てか。ほんとに舌がピリピリするのだが。

 てかこれ痛くね。


「ダシだけとって捨てる手が」

「私はほんと食べないから!」


 ゆっこさんは知人が作ったちりめん山椒をダメにされたと感じたらしいが食い合わせの問題でありそもそもゆっこさんは食い合わせと無縁の舌と嗅覚の持ち主なので関係無さそうである。


 しかし。

 忘れてもらってはこまる。

 これは無笑である。



 細菌はコロニーを形成する。


 良質な腸内細菌フローラを作れば体調や精神の安定に多大な貢献をする。また腸内細菌を移植することで肥満体質を改善することも可能という人もいる。ファクトチェックはしていないので皆さんで検証して欲しい。


 納豆だけを食べることで胃腸内の菌が全て納豆菌になり腹を壊したという都市伝説がある。納豆菌は人に無害なパチルスであり、パチルスにはあの炭疽菌も含まれている。


 納豆菌は令和の今においても『秘伝』『神頼み』であり現在においてもそのまま利用していると別物にすぐ変化してしまう商品化と無縁の菌だ。クローンのくせに変化しまくるのだ。


 お分かりだろうか。

 現在鴉野は激しく腹が痛い。


 水を飲んでいたらだいぶマシになったが、更新が絶えたら食中毒になったものとして欲しい。

挿絵(By みてみん)

※ 割と真似しないでください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 発酵食品は本当に怖いので、お腹に気を付けてください。食用のゴキブリの方がはるかに安全に食べられると思います。
[一言] 画像ありがとうございます。 一見すると 美味しそうな 豆腐とワカメの味噌汁…… う〜ん  たべてみたい
[良い点] 元キャベツに見えない写真がショッキングでした。 すごいっすね……! 勇者を見ました!
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