ひゃはははは汚腐怪(おふかい)は地獄だぜ~!? 魅惑のオカマバー
「えっと。おかしいな」
鴉野は道に迷っていた。
梅田周辺、お初天神前商店街すぐ近く。
婚活パーティ会場はオシャレなアジアンレストラン。
道に迷わないようGoogleマップを参照し、経路を調べ、その場所にたどり着いた鴉野は。
繰 り 返 す が 道 に 迷 っ て い た 。
鴉野兄貴。年齢不詳。
誰もが認める変人もしくは奇人。
そのファッションセンスは人類にモテないと太鼓判を押される男だ。
そんな鴉野は綺麗に風呂に入って身だしなみを整えたのに息急きかけてその場所を探す。
「ええ。指定の住所は解っているのですがそんな店はないのです」
「いえ。間違いない筈です」
鴉野はパーティのスタッフに電話してみる。
「というかビル名違います」
「いえいえ。間違いありません。その住所ならココです」
ココって言うがな。鴉野はその店を見た。
「ジャッ○&ベティ」
言わずと知れた大阪界隈ではそれなりの名店である。
華麗なショーとママのトークが人気で、何十年も営業している。
値段はほどほどで当然ながら団体の予約にも対応してくれる。が。
「オカマバーで婚活パーティって斬新じゃないですか」
「はぁ……」
スタッフの戸惑い声が聞こえる。戸惑いたいのはこっちである。
婚活で入った女の子が魅惑のオカマちゃんに彼氏候補を取られたら修羅場だ。
「愛してみたんだけど。彼女がいた」
とかいう読者世代ではお父さんお母さんが若いころの歌があるものの。
「愛していたんだけど、彼氏がいたなんて」
なら立ち直れないショックを受ける。やかましいわ。
そういう訳で鴉野はカマバーに突撃するか否かを激しく悩んでいた。
結局、裏手に回ったら同じビルでもビル名が違い、目的のレストランにつくと気づいたのは後になってからである。
同じ理由で遂にたどり着く事の無かった勇士は複数名に及び、鴉野、既婚バツイチ子供持ち(四〇路)、期間公務員の取り合いになった。
「この婚活パーティは出来そこないだ! 食べられないよ!」
鴉野でも叫びたくなる魅惑のラインナップである。
というかその中に鴉野も含まれる。
このときの女性陣の苦悩はいかばかりであるか。
結果的に頂いた幾何かのメアドの記された紙切れをゴミ箱に投げながら(鴉野からかかってきても嫌だろう)鴉野は別事を考えていた。
『婚活パーティで指定される店はオフ会にも向いている』