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山にお蚊えり(200文字 詩)
短編と統合
寒い。痒い。
爪で身体を掻きむしり痛みと痒みで目が覚める。
夜風で冷たく冷えた肌にぽつぽつと蚊の刺した痕。
こんなに寒いのに子が欲しくて山から降りてきたのか。
こんなに冷たい人の子の肌が欲しいのか。ならば致し方ない。
冷たい。痛い。
その一刺しで肌を貫き貪るように血を吸って逝くのか。
夜風を縫って相手を探す行き遅れた小さな蚊よ。
こんなにこの世は冷たいのに子が欲しいか。
これほどに寂しいのになおひと肌を求めるのか。