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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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怨霊バスターあかだるま

 突然ながら鴉野は同級生五人ほどと共に小学生の頃に悪霊退治をしていたことを思い出した。


 まあ鴉野の記憶などあてにならない。


 例えば鴉野には家の外に布団を敷き星空を見ながら寝ていた時期が一年くらいあったと覚えているが、二〇歳を超えているのに小学校の校庭にある盛り山の上でそのような奇行をする息子に対して母や御近所様がどのように述べるかは想像に難くない。


 そのような詳細な記憶があるにもかかわらず常識に照らし合わせてなんぼなんでもこんな奇行をすれば池田小学校事件の影響で施設侵入扱いになり退去勧告喰らっておかしくないので母に確認した。


 結論として暑さに耐えかねてもしくは自転車試験の都合で否応なく廊下に敷布を敷いて寝ていたことはあってもそんな奇行はしていないとのこと。


 仮にそのような記憶があるならば幼少の時に流星群を見せるために外泊したから夢に出たのではないかと母はいう。中学だか高校の時に42度の高熱にうなされながら文化祭のポスターを一晩で書き上げて注目されたのは事実っぽいが一年にわたり屋外に布団を敷いて夜空を見上げつつ寝ていた記憶は繰り返しみる同じ夢を現実として鴉野の記憶領域が認知したということが確認された。その上での胡散臭い話である。



「鴉野、今日も行くぞ」

「はい!」


 なぜかいじめっ子グループに連行されていく鴉野。と言っても校舎裏ではなく彼らが住む団地の奥である。老朽化した団地では誰も住んでいない棟があり、そこでは奇妙なことがよく起きる。蝋燭の炎が風もないのにへんに揺れたりロウに火がついたままポタポタ落ちたりとりあえずわけのわからないことを当時の鴉野とそのいじめっこグループは団結して悪霊の仕業と決めつけ退治と称してあっちこっちで侵入行為を繰り返し、時として火の気も辞さずゆっこさんが悪魔除け火気避けに台所に貼ったお札を皆で持ち出して各地の悪霊とやらに喧嘩を売りに行っていた。悪霊もさぞ迷惑だったに違いない。


『というか一方的に自分を悪と決めつけて殴ってくる子供たちの相手をしてくれるってそれいい人、もとい悪霊(?)じゃないか』


 そんな知性があれば知人は高校を落第しないし鴉野も小説なんぞ書いていない。


 とりあえず霊能者に扮したUくんは普段いじめっこの仲間だがこの時だけは映画版の綺麗なジャイアンになる。そんなUくんを普段呼び捨てな鴉野もその悪霊退治を行うときだけは心底彼を尊敬してアシスタント役を買って出た。



 ここで表題の赤だるまなわけである。


 駅弁の容器として母だか父が買い中身を食い尽くした後はそのまま物入れとして鴉野家で運用されていたものである。この話が終わった後不用になったのでゴミ箱に入れたと記憶している。余談になるが昭和やバブル前というものはこのような不要不急のギミックがたかが駅弁であっても満載であった時代である。まぁ物入れに転用するために大仰に作っていたのもあるだろう。どっかの兵庫県のモロゾフプリンみたいに。


 それを持ち出すクソガキども。


 鴉野たちは昭和のクソガキでありこの頃には平成になっていたとしても本質は変わらない。人気のないところで爆竹を鳴らし学校に侵入して高いところから沈む夕日を知人と独占していたりした。美女とならよかったのにこの頃のクソガキは異性と接しないのがかっこいいのだから仕方ない。


 この赤だるまは元々駅弁容器。ただのプラスチック製であり霊能と関係ないのだが鴉野と友人たちは某団地内で遭遇した怪音や謎の煙や発火するロウの原因とする霊とやらを大仰な仕草でこれに封印しお札を貼って退治した。


 それから数年、赤だるまは鴉野の学習机の下で眠っていたのだ。



 ある日、妙な煙が学習机の下から動いてどこかに去っていくのを鴉野は見た。

 鴉野本人も忘れていた赤だるまはこうして再発見された。


 テープでフタをしてお札を貼っていた赤だるまはなぜか開いていた。


 鴉野は知らぬ顔でぼろぼろになったお札を台所に貼り直し、その後も貯金箱として使っていただるまを部屋掃除の際に捨て今に至る。


 現在鴉野に霊障の類は起きていないが当エッセイ読者の皆様にとっては『起きているよ鴉野さん特大の来ているよ! 気付いてお願い!? その事件普通じゃない!? 志村後ろ後ろ!?』案件なのかもしれない。


 そして志村けんを知らない世代が増える頃にはこの話もたぶん今以上に過去の夢だか現実だかわからない話の仲間に入るのであろう。


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