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番外編 バカは死んだくらいで治りはしない 六 痛い

 その夜は熱帯夜で鴉野は眠れぬ夜を過ごしていた。

 別に看護師さんが美人だったからではない。美人だったが。


 あと病院食は上手かったが箸がなかった。

見かねた隣の人がくれなかったら手で食いかねなかった。

(後で看護師さんが用意してくれたが)


 そして、意外と足が痛い。

 変に動くと足のぬったところが開いて血が止まらなくなるそうだ。


「サンダル持ってないけど買わないといけないな」


 地下足袋でも構わないが。うちの会社。


 結局地下足袋に買いなおした。足の裏を怪我しているときはこっちのほうがいたくない。


「と、いうか杖いるぞ。これ」


 変に動くと縫ったところが切れる。

 サンダルは買わないといけないわ、PCはぶっこわれるわ、ディズニー代の請求はくるわ。入院はするわ、保証人たる親は外国の旅の空だわ。


「今月は当たり年だ」


 暴漢にも追っかけられたしな。安定の不幸月だ。


 とにもかくにも朝九時に退院を果たした鴉野。家で洗濯やら執筆に励む。


「杖がないとどうしようもない」


 しばし考える。グラスファイバーの杖は母の山道具であり、当然今はここにない。あとは久さん(仮名)こと父が残した杖が何本かだが。


杖術じょうじゅつじょうはダメだな」


 フローリングが壊滅的になる。


こんなんか論外」


 両端が細くなっている2メートルの棒で、両端に金属補強がある。フローリングが死ぬ。


 となると。


 鴉野はその杖に手を伸ばした。


 普通の杖に見えるがゴムキャップを外すと金属の尖った分銅が出てきた。

 ぐっと引いてみる。丸い杖なので刃はつけにくかったが刺すことは可能だ。


 別名仕込み杖。


「なんでこんなもんウチにあるねん!」


 『もげろ剣』編でも描写してあるが、うちの父上は寡黙だから子供好きの常識人で通っているが……というやつである。


 こんなもん警察に見られたら絶対もめる。


 仕方ない。


 鴉野はゴルフクラブのクラブ部分を切除して作った杖を手に取った。

 これとて軽くて取り回しが楽な『武器』であり、鴉野の父、久さん(仮名)の知り合いのセンセ方から『それいいな。俺にも作ってくれ』と注文が殺到した代物である。実際軽くて使いやすい。


「でも。武器なんだよなぁ」


 母はネパールの旅の空。父は武器を大量に家に置いている。

 どんな家だ。鴉野はため息をついた。


 痛いのは足の裏よりも、鴉野の財布と人生であった。


(番外編 バカは死んだくらいで治りはしない おしまい)

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