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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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夢の師匠たち

 鴉野の足首がカクンと変化する。

 高く上げられた鴉野の足は敵の顎を貫く技になる。


「面白い技を練習しているな」


 隣から旅を共にする『師匠』がニコリと笑う。


「ああ、最近練習している」


 ちょっとまちな。そのまま踏み込んで。


 彼は更に踵を高く上げる方法を教えてくれる。

 顎を突き崩して顔面もしくは喉や胸にかかと落としをかませと暗に教えて来るので。


「無理だよ」


 鴉野は苦笑い。

 しかし大柄な見た目に反して師匠は流石に柔軟である。そのまま連続内回し蹴りや外回し蹴りで実践。


 師匠の名前はジャック・ターナー。

 格闘ゲーム『竜虎の拳』のマイナーキャラクターらしい。


 さて。どういう状況だろうコレ。

 鴉野がこんな技を練習したのはこの夢以降であり、こんな技など思いついたこともない。



 つまりこれは夢の話なので何でも許される。

 許されるのはわかる。


 普通、こういうのはカッコイイ主人公キャラクターが武術を教えてくれる師匠になるのではないか。

 あるいは魅力的なにっぽんいちな女の子とか普段男装で攻撃を喰らうと脱げる女の子等とえっちな体験をするべきなのではないか。


 だが、鴉野の周囲にいるのは例えばチャン・コーハンさんとかチョイ・ボンゲさん(※格闘ゲーム『キングオブファイターズ』シリーズの登場人物)とかの愉快な仲間である。美形キャラのキム・カッファンとか何処いった。みんな肥満だったりガリである。



 怪奇の事件は弟の仕業。


 鴉野の弟は兄が中古で買ってきた古典エロゲ『吸血殲鬼ヴェドゴニア』とか『デアポリカ』をこっそりというか堂々プレイしているのは鴉野も知っていた。

 気が付いたら隠していたドリームキャストでPSOをやっていたし。お前兄がドリームキャストを買ったと同時に当時は激レアグッズだったケーブルテレビ接続モデムを買っていなかったらうちの電話代は酷い事になっていたぞ?!


 鴉野が何を言っているのかわからない。



 ほとんどの読者様はそうだと思うのでこれは昔話だ。

 鴉野も弟も昔はゲームが好きだった。

 ひょっとしたら今でもだが鴉野はここ一〇年ゲーム辞めてなろうに投稿していたので仕方ない。


 で、弟も家に友達を招いてスーパーロボット大戦シリーズや格闘ゲームなどをやり込んでいた。


 鴉野の弟である。

 気づいたらゲームをやらない鴉野までゲームキャラクターの設定を詳しく覚えていた。

 弟よ。兄を洗脳しすぎだ。


 で。鴉野の家は武術を父がやっている。

 否応にも週末は身体を動かす。

 鴉野の夢の中は弟が愛する格闘ゲームの登場人物に侵略されていた。いや、ある意味楽しかったのだが。


 いや、だから出るならブルーマリーさん(『餓狼伝説』)のほうが……。


 こんな話になったのは鴉野が一〇年ぶりになろうの広告に引っかかってソシャゲに手を出したからであり、そのゲームの中に『金貨バンバン箱』とかいうアイテムがあるからである。これがないと後半は育成に支障が出る。


 しかしバンバンと言われると鴉野が思いつくのは。



「スクランブルしてダッシュする歌を歌ってしまうのだが」

「兄貴。そっちの意味でも兄貴ですか」



 ゲーム仲間も呆れる案件である。

 スパロボのやりすぎだ昔の弟よ。

 なぜ鴉野が見たこともないアニメの知識を持っているのか。それは弟に由来する。


 鴉野の親族の中では弟はかなりマトモなのだが、考えてみれば帰宅した兄をいきなりハグして『お兄ちゃんは目覚めちゃったのです』とか言い出した。『吸血殲鬼ヴェドゴニアに登場する吸血鬼ハーフの少女ヒロインルートを攻略して年下の可愛さに目覚めたらしい。

 某大規模オンラインゲームで38歳バツイチと付き合っていたことのある鴉野とは明らかに異なる価値観である。



 そんな弟も就職し、今ではゲームよりお笑いらしい。というか超絶忙しくてゲームどころではないようだ。


 さて、書きだしてみたがオチが思いつかない。

 なので冒頭の話に戻るが鴉野は弟のゲームキャラエピソードに大いに感化されあるいは洗脳され、自分の実家が武術をやるせいで謎の師匠たちの手ほどきを受ける羽目になった。夢の中まで。



 鴉野は武術嫌いであり、小学生より断然弱い。

 身体も貧弱かつ小柄で女装しても違和感がない。

 先日警備会社でメガホン持って広報していたら『女性声じゃん』と皆が思っていたらしい。


『男の声で命令するなってクレーム来たら対策になるね。カラスノくん』


 そんなはずはない。

 そう思っていた。


 警備資格者証をとる場合、地元の生活安全課に逝かねばならない。そこに資格者証をとりに行きたいと電話するとこんな返事が返ってきた。


「本人ですか? 女性ですよね」

「本人です」


 プロの刑事も騙される鴉野のミラクルボイス(地声)。



 そんな貧弱もやしの鴉野に武術の師匠が夢の中でついたところで強くなれるはずはない。そもそも明晰夢で自分の身体能力を再現、あるいは理想の動きが可能な身体能力になってもベースは鴉野であり、目覚めれば当然夢なのでその動きはできなくなる。前述した爪先であごを砕いてそのまま足をおろさずに即踵落としは無理だ。出来るはずはない。



 しかし鴉野はナイフを背中でスイッチハンドして突くとか、竹刀を背中で持ち替えて逆手うちを得意としている。父は『教えた覚えはないから息子が勝手にやっている』と表現している。


 他にも竹刀で脛を打つし、後ろ回し蹴りがまったく当たらない中、膝を入れ替えて内回し気味に放つことでハイキック気味に撃てるようにもなった。

 これも父は『教えていない』という。


 今の鴉野の夢の中にはあの愉快な格闘家たちが登場することはもうない。諸々の根源である弟がいないからだ。

 それでも彼らの教えは鴉野の中に残っているようだ。


 青年よ。少女よ若者よ。

 よく眠りよく学べ。

 さすれば明晰夢にて夢の師匠たちがあなたの学びをサポートしてくれるかもしれない。



 そして可能なら師匠は美形な男子や主人公キャラクター。あるいはセクシーなお姉ちゃんが良いぞ(棒)。


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