掃除は給料に含まない 私穢れちゃったの……(※ジャージさん談)
正月である。
正月と言えば鏡餅で鏡割りだが、こんな会社では鏡割りとかするはずがない。例によってたまりまくる。
『鴉野君。適当に持って帰って良いから』
マジか。ありがとうございます。
最近の鏡餅はデカい塊じゃなくて樹脂製の容器に使いやすい切り餅を詰め込んでいて大変使いやすい。
しめ縄もやらねばならないが、適切な時期を見計らって撤去しないと去年のそれが残っていたりする羽目になるから要注意だ。かの職場を鴉野が退職した年度は鴉野が扇風機やスポットクーラーを掃除していないので次年度の動作保証はしかねる。埃をかぶらないように袋とかかぶせていないし暑かったし大変だったし。
鴉野が就職したばかりの別の会社では数年分の鏡餅が倉庫にゴロゴロしていた。捨てろ。誰も食えない。
『縁起物だからバチがあたるかと』
そう思うなら食えよ!
当時の鏡餅はナイフで切るにはあまりにもデカくて固くて重かった。それはまさに塊であった。
鴉野でなくても大暴れしたいが、鴉野が訪れる職場の人たちは片付けが苦手なのかもしれない。
いや、経理の関係で棚卸はやっているのだが。
鴉野たちが正月休みを終えて仕事始めをすると店舗玄関前に大量の未返却物品が捨てられているのは風物詩だったが(※嫌な風物詩だ)、トラロープを突破して何をしているのだろうか。
そして自称ヤクザが攻め込んできたりするのが鴉野の正月だったので二度とこのようなことがないようにしたい。俺は働きたくないでござる。
鴉野のかつての勤め先が衛生概念的にアレだったのは何度も述べたが、この会社には指定のジャージがある。ナイロンのペラペラもしくは中に綿が入った作業ジャージだ。夏場は地獄の暑さになるので鴉野は最初から着ていない。
「いやー。今日は40℃しかないから涼しいですね」
みんなあたまおかしい。
そのジャージ脱げ。
しかし皆が着る以上着なければいけないと鴉野も着ていた時期がある。それを止めたのは例の女子アルバイトである。
「鴉野さん。超臭いので近づかないでください」
「あ、加齢臭。すまん」
「そーじゃないです」
ジャージが半端なく臭い。
彼女はそう申しており。
「みんな吊るしていますけど激臭ですよ」
「あ。夏場は特にそうだね。洗濯は各自に任せているのだけど……マジで臭いし、週一で洗うか」
ここには洗濯機があった。
ついでだから自分のスニーカーも同時に突っ込んで週一で洗うことにした。
『各自で洗ってほしいが、週末に洗濯するから洗ってほしいジャージとスニーカーあったら置いておくこと。鴉野が洗っておきます』
これでスニーカーの汚さ、ジャージの耐えがたい汚れはまだましになった。油もの扱うのに何年も洗っていないとかあったし。支給したジャージどうした。
「いや、もったいないし」
「まだ着れます」
着るな! 俺は着れるぞじゃねえ!
俺がキレるぞ! 捨ててやる!
靴とジャージを同時に洗っていいのか。
問題ない。汚物の消毒が先決だ。
鴉野は日本人のケガレ思想を否定する。
鴉野の母、ゆっこさんはパンツを洗濯機で洗うのは可能だがスニーカーを洗濯機で洗うのは絶対ダメというケガレ思想を持つ。
スニーカー程度なら洗濯機で洗った方が仕上がりは良いのだが本当にダメらしい。
まあ場合によって洗濯機が傾くこともあってそうなると傾いたままでは機械が動作しないという理由もある。
鴉野が後に人事異動でこの店を去り、愉快な女子バイトと別れた後のこの店の行く先についてはよくわからんが、この異動先の店舗には洗濯機が無かった。
「バケツにウエス入れて手で揉め」
イヤに決まっている。文明何処よ。
というか、何故この店舗、トイレモップないの。お客さんが酔っぱらってウンコ大放出したら手で拭わないといけない。ヤダヤダである。
ケガレ思想より実際の汚れ。
てめえら柄物白物分けろ! 消毒してやる!
白黒つけるぜ。柄物に。
そんなカッコ良くない現在ニートの鴉野であった。
いや、洗濯ぐらいちゃんとしろ。




