番外編 バカは死んだくらいで治りはしない 三 人間、死ぬときは死ぬ
死ぬときは死ぬ。
よくそのセリフを聞くが鴉野の家の連中はとんでもない短命揃いだ。
定年まで生きれば御の字で、たいてい腎臓だの何かに疾患を持っている。
若くして死んだ人間もいる。
二五過ぎれば人生半分超えたようなものだ。
お前らは信長か。ここは平成の世の中だ。楽市楽座ってやかましいわ。
おかげで趣味には一芸通じる連中が多い。
ロクでもない趣味もちも恥ずかしながらいる。
たとえば鴉野の曽祖父はとんでもない短気な男であり、村の青年団が悪さをすると日本刀片手に追い掛け回していたらしい。
『戦死者はほとんどオオカミと将校どもの後ろからの誤射』
などと言っていた日露に参戦した男の話は少ししか鴉野に伝わっていないが、村一番の変り者だったそうだ。
その息子。鴉野の祖父は親の毒気がすごかったからか村一番のお人よしになってしまった。
当時にしては珍しく音楽を愛して大量の蓄音器を保有していたが、親父はそれをマキにしてしまった。
その親父はというと自称空手十段の男である。
普通に黙っているからまともに見えるが、若いころは壁を忍者の真似をして駆け上り、母から『立てば草野球 座ればへぼ麻雀 歩く姿は日本のジャッキーチェン』などと述べられていた。やはり微妙に変わっている。
その息子はというと、こうして場末の小説投稿サイトに大量の文字を書きなぐっている。
こちらは変り者を超えてそれ以外の何かである。
鴉野一族のジンクス超えて完全健康体と思われていた人間もパタンと倒れて要介護になってしまったし、比較的大往生できたのは鴉野が知る限り叔父くらいしかいない気がする。
(まぁ、親戚づきあいが薄いので知らないが。付き合いたくもない連中だし)
そんなこんなで鴉野はめらのーまをねっとで調べていた。
MP消費はってそれはメラゾーマだ。全然違う。
めらのーまは皮膚がんの一種である。
ただのホクロに見えるが、末期になるとグロ画像状態になる。
一年で死ぬなどなど。
そういえば前に似たようなホクロが同じ足にできていた。因果関係があるかもしれない。
あと、身に覚えのないホクロになりかけの染みみたいなものも足の裏にたくさん。
「老化だな。鴉野君廊下にたっていなさい」
ギャグが寒い。
「まぁ、二度ほど大腸がんで引っかかったし、また死ぬ死ぬ詐欺かもなぁ」
鴉野はため息をついた。過去に二度ほど『恥ずかしながら帰ってきましたっ』をやらかした。本気で恥ずかしい。
そもそも現時点では『ホクロ』として処理されている。それはすなわち。
「がん保険が役に立たんだろうが~~!!」
鴉野は微妙に人間の感覚としてずれていた。