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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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209/285

与論島に行ってきました 百合が浜でプロポーズ

 これはまじすごい。

 青く晴れた空の下。潮の香りに胸を膨らませて立ち尽くす男女。女は物理的に胸が。男は物理的に股間が盛り上がっているかもしれないが調べるたくもない。

 石川五右衛門は絶景かな絶景かなと呟いたそうだが沖に現れた砂の山の上に行きかう波の狭間に鴉野たちは立ち尽くしていた。


「きれい」

「まじすっげ」

「やば」

「誰か写真写真」


 今日日は防水機能の付いた携帯も珍しくないのでそういった人々がいる中、鴉野はTHETAを担いでパシャンと撮影。360に広がる翠と青いそら、若い男女のはしゃぐ姿は美しい。老年の男女の笑う姿は微笑ましい。その中を魅入られたように一人歩く鴉野。


 百合が浜の美しさは訪れて体感してほしい。

 しかし浜が出ないぞと呟く人々。

 そう。この日は波が強かった。


「よし」


 わっさわっさ。

 物理的に砂を押しのけ、無理やり陸地を作ろうとあがく鴉野たち。



 聞けばこの四日浜が出ていないらしい。このままでは終われない。

 星の砂を年齢分掬えば幸せになれるらしい。

 そんな伝説がある百合が浜だがなつこおばあちゃん曰く星の砂は最近ほとんど見つからないらしい。


「あ」


 ラッキーなことに星砂を拾った人がいた。


「もらっておきましょうよ」

「絶対舟に戻るまでになくすから鴉野君もらってよ」


 わっさわっさと砂をかき分けた仲間たちはここではしゃぎまくる。だれでも仲良くなれる与論島。

 そのわずかな陸地を波から守り撮影敢行。男たちはやり遂げたのである。一部女性も混じっている。


 ばっしゃーん。


「あっ」「あっ」


 ゲタゲタと残念そうに笑う鴉野たち。

 陸地作り仲間以外も便乗して撮影している。

 アイドルっぽい若いグループも撮影。

 大阪から来たという観光客グループと意気投合。

 THETAを一度戻ってきた船に預け海にダイブで遊んだりして時間を潰す。



 ぷっかぷっかとシャツに海パン姿で波に揺られて空を見る。なんともこの世はちっぽけで面白いじゃないか。楽しみはどこにでもある。それを見つけるには喜びが必要だ。


「あはは」

「やったな」


 はしゃぎ合うおっちゃんおばちゃん。刺青のにーちゃんにその彼女。ここでは皆兄弟だ。一瞬だけ浮かぶ小さな沖合の浜に集った人々と鴉野は歓談に勤しむ。


「君は普段なにやってるん。変な靴……下駄かアレ。飛行機で一緒やったろ。あとその妙なカメラも」

「自転車屋で、ライターの真似事もやっています」


 納得したのか頷くお父ちゃん。

 大阪の何処とか、それなら今度会えるなとか他愛もない話が続く。


「で、その写真くれないかな」

「通信容量的に非現実的ですので後でFacebookにでもアップしますので検索してください。しばらくしたら消しますが」


 鴉野は原則女装姿以外の顔晒しを避けている。

 Facebookを検索するので名前教えてと言われたので鴉野は名前を明かす。



「なにそれ」


 ぽかんとなる男女たち。

 カラスでアニキ? 意味わかんない。


「えっと、工場に勤めていた時にですね」


 青い空の中で状況説明。

 あの日も白い雲が輝いていた。


「通勤中に鴉にフンかけられまして。

 しかたないから会社の水道で頭洗っているのを先輩方に目撃されまして」


 水に身体を沈めて大笑いする人々。


『そーか! からすの あにきかー!』

『いいでそれ! おもしろいわ!』


 ぱしゃばしゃ白い砂と水を跳ねて戯れる。


「わたし、ハトの姉御って言われる! わたしもやられたの! 運がつくからラッキーだって!」


 驚くことに同類がいた。


「おにいちゃん。絶対いい事あるんや。

 そうなるためにできとるねん。大事にしいや」



 実は『鴉野 兄貴』は姓名判断すると吉兆強い名前なのでそのまま使っている。


「鴉野兄貴! お前はすごいで!」

「は、はぁ有難うございます」


 苦笑いしつついろいろ話していると如何な話の話の流れになったのか覚えがないが鴉野はこうつぶやく。


「私はぬらりひょんさんですか」


 水木しげるに言わせれば妖怪の王だが気が付いたら家にいて飯食っているという妙な妖怪である。

 なにそれと問われて解説する鴉野だが実はここで致命的ミスを行っているのを読者の皆様はお分かりだろうか。


『与論島では海の近くで妖怪の話をしてはいけない。絶対に』


 一通りはしゃぎまわった鴉野たち。

 船がわーっと近づいてくる。

 波うち風切ってシェイハシェイハ。


「お。舟がキタで」

「おっ!」


 鴉野はいさんで振り返った。



 ヒャッハーと叫ぶ皆。


「彼女乗ってるで! 鴉野兄貴!」

「マジっすか! ここでプロポーズあげますわ!」


 などと叫んだかはさておき、鴉野がキラキラした目で振り返ったのを一同ははっきり視認していたらしい。皆で大笑いする。


「いや、今のリアクションは最高やった」

「空港からやっぱり忘れられないと帰ってくる。そんなのあったら映画の世界や」

「今すぐこの場で式あげなあかんもん」


 笑い転げる男女と苦笑いする鴉野。

 与論島は笑顔が似合うそんな島。

 ボートに乗ってのんびり丘に戻って背伸びして、スコールをかわしてまた旅だとう。THETAをかばんにぶちこんで。


 あれ、そういえばあいつちゃんと飛行機乗れたのかな。あいつのことだから幼女でも追いかけて。

 心配になったので電話してみる。


「おい。仮想人格。ちゃんと飛行機乗れたか」

「はいはい鴉野さん。島楽しんでますか!

 え。飛行機ってなんのこと。日帰りなんてありえないでしょ。せっかく六〇〇〇〇円も払って」



 え。今水族館巡ってるって。

 意味わからん。お前を名乗る女と一緒に俺は。


「あはは。御冗談。いくら僕にでも分裂能力はありませんよ」


 うーん。わからん。

 わからん時は酒飲んで寝るに限る。

 しかし今は快晴、真ッ昼間。


 THETAを掲げて鴉野はチャリに乗る。

 まぁ世の中いろいろあるさ。


「でもやっぱり失恋とかシット!」


 ブチキレ気味にペダルを蹴って鴉野は爆走する。

 取敢えず何でもいいから美女カムバック!


 それは鴉野の人生には絶対あり得ない。たぶん。

 人生はおっぱいだ! ヒャッハー!


 先ほど一度宿にもどったルートでもない道をあえて選択すると妙な道を歩くことができる。

 それは道なのか迷い道なのか迷走なのかはわからない。小さい島だ。多少迷ったっていいじゃないか。夏日の太陽が笑ってみてくれているさ。

 あ、あの女の子の連絡先聞いていないや!

(以下ギャラリー)



 ごはん!

挿絵(By みてみん)


 この公園の下の岩は干潮時に眼鏡岩になります。

挿絵(By みてみん)


 この日は晴れていて干潮だったので下を通れた!

挿絵(By みてみん)


 もっこもこのなつこおばあちゃんのとこの子猫。

挿絵(By みてみん)


 蒼い海を臨む。

挿絵(By みてみん)


 赤崎海岸360度画像。

挿絵(By みてみん)


 百合が浜360度

挿絵(By みてみん)

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