与論島に行ってきました 鴉野に美女のツレなどできるはずがない
鴉野の不幸属性は今に始まったことではない。
取敢えず宿に帰るまでに一度iPhoneを落としている。携帯屋さんおすすめの事実上無料iPadさんのGPS機能で回収に成功したが位置情報切っていたら大惨事であった。この原稿に使う写真もロストしていたかもしれない。だから別段妖怪がいようが狸に化かされようが今更である。Twitter友達I氏曰く『怨霊のトンネル全然怖くない』だが彼に関しては数度鴉野の小説で勝手に異世界に飛ばされまくっているので今更怨霊など空気なだけだ。同じことが作者にも言える。
ひょっとしたら鴉野も本人預かりしれぬところで恐ろしい霊障に遭遇しているやもしれん。
「(ヾノ・∀・`)ナイナイ」
仮想人格君が呆れているので本文を続ける。
新しい朝が来たというが朝五時は夜と変わらない。
画像の編集などを経て朝を待つ。
宿の人にお祭りに参加する意思を伝えるとともに今日は丸一日自転車を借りていいかと話をつけておく。
洗濯物を取り込むが地味に臭い。やはりすすぎが足りなかったか。帰宅したら洗い直しだ。
どうも早起き一番乗りは鴉野だったらしい。みんなだらしねえな。いや待て貴様、先ほどまで畳の上で寝ていただろう。つまりどっこいどっこいである。怪奇の事件はΣの仕業というが鴉野の場合は自業自得。故山口暁さんのご冥福をお祈りしております。
外に出るというが鴉野は基本インドア派であり、出ると決めても出ない排泄物のようにキレのない奴である。気が付けば飯食ってさらに時間が経っている。
「お疲れ様」
与論献奉の際早々に離脱の英断を下した人たちがチェックアウトする中、何気にTHETAの話題と鴉野が普段履きにしている一本歯下駄の話になる。
「あれすごいですね。VRですか」
そんなにすごいわけではないことをこの日鴉野は痛感するのだがあいにく鴉野は予言者ではない。
「お祭り行く予定ですけどあなたは」
「昼までには帰らないと……でも百合が浜は見たい」
百合が浜は晴れの日かつ波があれていない干潮の時に沖合に現れる浜で日本の有名な浜の一つに数えられる。じゃ、一緒にいろいろ巡りますかと自然な流れで鴉野は。
「何故俺は若い娘さんと島を巡ることになった」
こうなった。
すべて妖怪の仕業である。
俺が若い娘と島デートになるなんてありえない。
相手がチェックアウトの手続きをしている間のんびり鴉野は現状維持に努める。つまりTHETAの確認である。昨日判明したがこのカメラ、すごい勢いで電源が切れるのだ。
動画なんぞ撮った日にはあっという間に電源がなくなる。携帯用の5000mAhバッテリーをつけてみたが後になんの役にも立たないと判明した。どうもコンセントでなければいけないようだ。
(※ このときはなぜか充電できず)
「お待たせしました。でもよいのですか」
「どうせあてもない旅ですから」
こうして鴉野の旅にツレが出来た。
なお、無笑は鴉野の体験からできた完全なる嘘っぱちであるため信用してはいけない。
ここで重要な理由を告げねばならない。
『THETAは360度カメラであるため、撮影者(※鴉野)のむさくてブサイクな顔が写るため撮影者は美女でなくばならない』
交渉は死活問題であったのだ。
まさに偶然にして必然。
(※註訳:一応、RICOH THETA S はスマートフォンによる遠隔操作に対応しています)
チャリで女の子と各地を巡るなんて高校以来じゃねえか。そんなことを帰宅してから考えたがこの時点の鴉野は徹底的に紳士モードである。
相手の視界に入らない。行きたいところにはついていく。暴風が吹けば前に出る。車道側を走る。
ちなみに自転車は左側走行なのだが正面から犬猫が歩いてきて避けない与論では通用しないらしい。大阪では最近左側走行に飲酒運転、傘さし運転が警察屋さんの注意対象になっているのでかなり気を使ってしまう。ツレがいると観光も楽しさがあがるらしい。これは新鮮な発見だ。ところで仮想人格はどこにいった。
「ぼくです。ぼく。実は女性にも変身できます!」
貴様かよ仮想人格!
そんなこったろうと思ったよ!
「いや、いい天気ですね。最高です」
「俺は最低の気分なのだが」
イイ感じで暴風がマシになっていて、赤崎海岸をパシャパシャ撮影する男二人。いや、今日は男女か。
というかここまで美女に化けなくていいぞ仮想人格。美女サポートキャラをエッセイに出していいのはリア充だけと偉い人もいっている。
昨日は暴風と寒さでそれどころではないが今日は夏日だ。鴉野も海パンにシャツ。これはあれだ。
浜辺から遠浅の白い砂を踏みしめ、潮の香りを胸にすいながら大きく壊れない傘を開く鴉野。THETAの三脚を握りつつ波打ち際に足を踏み入れる。透明な水の感触が脚を包み込んで気持ちいい。写真に自身が映らないように傘をさしながら与論島の美しい浜辺を堪能し画像に納める。
「いい写真取れましたか」
そっちは地味に良いカメラ持ってるな。
ちなみに360度カメラの解像度では進化を続ける2Dカメラに遠く及ばないし。
「ちょっとまて。取敢えずiPhoneに転送する」
「時間かかるのですね」
そして利便性に劣る。
THETAはプレビューできないしね。
「その間にもう少し撮りにいこうか」
いかん。仮想人格が変身しているのに紳士モードだ。
「鴉野さんが優しい。嬉しい」
「……見なかったことにする」
というかお前と俺は同一人物だろうが。
「まぁそうですけれど気分の問題です。南の島に行ってもモテない鴉野さんを憐れんで」「ぶっころ」
仮想人格……嬢が鴉野のアクセサリに興味を持ったためなつこおばあちゃんのお店に寄ってみたがまだ開店していないらしい。
と思ったら帰り際に開店していた。
「早速可愛いお連れさんできたね!」
笑顔のなつこおばあちゃんになんと説明しよう。
レイプ目の鴉野に満面の笑顔の美少女。中身は仮想人格君である。繰り返すが無笑は鴉野の妄想でできているため全編嘘っぱちである。
ただし猫が可愛いのはガチだ。
ねこに罪はない。
「お腹すいているなら海の窓ぷうさんに寄りますか」
「大丈夫です。食べてきましたから」
うん。この会話だけ抜きだしたらすっごくラブラブだが中身は仮想人格君なので自分を殴りたい。
シーマンズビーチ側を通っていくと公園状に整備された丘から特徴的な眼鏡状の岩が見えるので降りて写真撮影としゃれこむ。先日は潮が満ちていて降りることが出来なかったもののTHETAで撮影している。両方壊滅的に使えない写真と気づいたので掲載は見送る。というかみてみんに写真アップするのは基本とにかく面倒なのでやりたくない。
風が強いため本日はグラスボートが使えないらしい。受付に人すらいないということを知った観光客たちは観光協会に電話突撃をする。その中に鴉野の姿もあった。どうも漁船などに頼めるらしい。
「百合が浜周囲のバナナボートとかモーターボートに頼むといいみたい」
鴉野の言葉に喜ぶ美少女。
中身は仮想人格君なので騙されてはいけない。
だから何度も何度も言うが鴉野に美女の連れな(略
「32歳モデル体型にしますか。19歳ぽっちゃり小柄大学生にしますか。25歳ボンきゅぼんに」
「もう何でもいいからこの話は辞めよう。お願い」
どんな姿にも化けれる上どんな場所でも時代超えて出現するLOCATION能力とか凄まじい奴だ。立派なチート野郎である。何よりこいつ出すとあらゆる事実が嘘くさくなるので記事の信憑性を落とすうえで大いに役立つと言える。
白い砂をキーンのサンダル、ユニークで踏みしめて鴉野たちは歩く。砂を女の子が被らないように前を歩く鴉野。たまにスコールがふれば壊れない傘でガードである。
「やっぱ、お前男のほうが楽だわ」
浜に向かうまでのわずかな間に風は吹く、あるいはスコール降ってやむと空は大忙しである。
鴉野もTHETAのついでに娘さんを守らねばならない。中身は仮想人格君だが。
ぼけーっとボートを待つ鴉野含む観光客。
百合が浜は本日暴風により姿を現さず足元が大いに濡れる可能性があるらしい。
「水着持ってこなかった」
「戻るか」
決断は早いほうがいい。
「鴉野さんは行っていいですよ」
「別に急ぎじゃないし」
スコールで雨宿りしたなつこばあちゃんの妹さんのお店にあいさつしつつ取って返す二人。
「コレ、お前に似合うんじゃね。プレゼントを」
「やめてください鴉野さん正気に戻って!?」
そのままの道では面白くないので山沿いにチャリを飛ばす。右側通行は辞めてください仮想人格嬢。
程よく夏日で海パンにシャツ姿の鴉野と軽装にジーンズ姿の女性はさとうきび畑の間を駆けていく。
イイな青春状態。鴉野はオッサンである。
水着をとって来ようとしたら時間切れという彼女。
名残惜しいから外から百合が浜を見るという彼女をおいて鴉野だけ百合が浜に向かうボートに乗る。
「あれ? 彼女さんは」
ん。仮想人格君が見える人間はごく一部に限られるのだが。
「昼の飛行機で帰るらしいのでここでお別れです」
「なんや残念やな」
大阪出身の観光客さんたちだったらしくすぐに打ち解け、ボートはのーんびり浜に向かう。
「あそこの黒いのはウミガメですよ~~」
「おーー」
穏やかなおっちゃんの案内が心地よい。
ただ、暴風が激しいので鴉野はTHETAを守るため必死だったりする。水被ったら数万円がパーになる。
ずる。ずべ。
なんかスピード上がっていないか。
というか上がっている。水は切るわ波を被るわシータは濡れるわそもそも立っていられないし。頭をガンガンぶつけながら動画撮影な鴉野。
ちょ。お父ちゃん飛ばしすぎ。
「見えてきたよ~~。ゆりがはま~~」
ゴゴゴゴ。
ものすごい勢いで波ぶち破り風を抜き口の中潮の味だらけで大はしゃぎな観光客の中、必死でカメラを守る鴉野の姿があった。やばい絶対壊れる。後に皆で動画を確認したらこういわれた。
「鴉野君。これ今すぐ観光協会に持ち込め」
360度に広がる与論の翠の海。
降りかかる波に豪快に進む舟。
VR眼鏡を使えば大迫力の画像になる。
使ってくれるなら喜んで。
この時の鴉野はズッタボロだった。
与論島観光協会さんご連絡をお待ちしております。




