最終決戦兵器アキちゃん
きゅぴーん。
仮想人格さん。
見つけました。
今アイに行きますね。
そばにいますよ。
私の囁きを感じていますか。
私の声を聴きたいですか。
私、の臭いを。
『このド畜生! 自分の写真をコラにして遊ぶな!』
うん。演出次第では可愛くとったつもりでも普通に怖いよね。あとこれもコラなし無修正。
後半疲れてきて殺す系の顔になっていたのさ。
『やらないか』
「絶対殺す系ですね。敵の親父のタマとりに来た」
「地味にこの着物着こなせる人いないらしいよ」
コラとか画像加工も得意な人に協力を仰いだ。
「一人が十人になる腕の持ち主」
安風俗みたいだが事実。
「なにそれ恐ろしい」
「結構、撮影の腕とポーズ、後の画像加工が肝らしいの。実際に下着姿を撮ってみたぜ。ホレ見ろ」
「……コレ、男ですよね」
「でも一目にはばれないと思う。全身像でもたぶん」
(みてみんさんに確認をとると『状況次第でアカウント削除などの処分を決めるのでビキニや下着かなど明確な基準は示せない』らしく、掲載を見送りました)
「直すべきところはウエスト程度だが不自然になるのでそのままのほうがいい。ちょっと明るくするとか若く見える処理ならできる。一人が一〇人になる腕をもってして彼はそう仰っており」
「鴉野さん。それ身内補正じゃないですか」
そう思いたい。
「と言うわけで、帰ったらゆっこさんに」
「え」
「母親に見せた」
「えええ」
「なんかまずかったか」
「普通は見せません」
「いや、見ず知らずの人間(※Web)に公開して身内に見せないのはどうかと」
「結果、寝込まれたと」
一晩眠れなかったらしい。
その後、彼女は『これを鴉野弟の見合い写真にして、早く戻ってこいと言おう』という悪戯を画策し。
「さすがに立ち直り早い」
「どっちかと言うと『女装は犯罪じゃないが、あのお人よしは会社の悪事を押し付けられて逮捕されるかもしれないから弟を心配しろ』と言ったのがアレだったんじゃね」
なお、鴉野弟は兄と違い、まともな会社に勤めています。勘ぐらないように。
とにもかくにも鴉野とH氏は『ネタが無いのがネタになった』と言うほどトラブルもなく女装サロンに帰還した。まぁ多少行きたい場所をはしょったが。
「どんな場所ですか」
「ゲイが集まるバーとか、女装の人が集……」
「スト―ップ!
Hさんがいなければやばいでしょ」
「このレポはHさん都合つき次第、後にね」
「ほかにおかみさんがいろいろ企画しているらしい」
「鴉野さん。いつか掘られますよ」
外歩きの道中ではHさんはHさんで鴉野が転ばないよう腕を貸してくれるし、鴉野は鴉野で前を守るように歩く癖が出るしで。
「お互いに肩を組み、前を奪い合うように、かばい合うようにして歩く謎の二人。故に二人とも歩きにくい。困ったものだな。特に俺」
「何おふたがたでイケメン度競っているのですか」
あれ、女たちは何故肩組んで歩くのが多いのか疑問だったのだけれども、ヒールで転びやすい事実のほか、女性は男性に接触しないように歩くし女性に性的な視線を向ける男性から一メートルは距離取る反面、その分女性のいる空間を奪いに行くからだったのね。すげえ怖い。ヒールで踏まれそうになる。
「そうなのですか。知らなかった」
「ガン見しても自慢げにスルーされる」
あと、女性は手の作り、爪の具合とか仕草等をかなり意識して同性を見ている。俺も見ていたし。
「一瞬も気が抜けん。あいつら一瞬一秒で他人の『可愛い』をラーニングしてやがる。特に可愛いと言われる系の女はその傾向高い」
「まぁ実際の女性はほどほどに気を抜いてやっていらっしゃるようです。Hさん曰くモデル歩きは全身運動で女性でもずっとやっていらっしゃると辛いそうで」
「俺は競歩を趣味でやっていたから問題なかったが」
普通に競歩なんてマイナーなのを独学とはいえやっているひとはごくまれだと思うの。それも一二センチ高の一本歯下駄履いてとか。
「日本国内では鴉野さんだけと断言します」
「一応、一本歯の高下駄履いてマラソンしていらっしゃるブロガーさんは実在します」
一般の格闘家のひとは基礎練習として走りこむけれども競歩は大地から足が外れることはないからね。武器術使う人にはいいと思うよ。
「そうなのですか。競歩っていいのか」
「普通に歩くと競歩は失格になるらしい。なのでマラソンと違って歩いて休めない。競歩の歩きで少しマラソン並みの速度で歩き続けないとダメ」
話は変わるがSにもメッセージした。
速攻奥さんにも見せたらしく苦笑いしたそうで。
「さすがSさんです」
「なお、『本気やな』と言われたので『本気出したらこの程度で済まないと思う』と返信して以来返信が無いのだが忙しいのかな」
「Sさん可哀想。友人が女装癖に目覚めたなんて」
「目覚めていない。特技が増えた程度の認識だな」
前回記事後、『黒い下着写真をおねがいします』なメッセをかなり特定の方から頂くようになったので致し方なくブロックしたのだが、その時分かったことが。
「何がですか」
「いやなことは全部日記やお話にギャグとしてかいておくことで克服したと思っていたが、男に性的な目で見られたり、暴力を振るったり振るわれると軽い適応障害みたいな症状がでるっぽい。普通に吐き気や怖気や集中力の低下が来る。なんというか人格やその他を踏みにじられる辛さは経験した人にはぶり返すもので、やる側はすこんと忘れていい思い出くらいにしか思わんのも思い出した」
取敢えず、現時点では女装は新たに追加した特技という認識だな。
まぁ他人に施してもらわないとだめだが。
「●ャッ●ー電撃隊」
「ばか、その名前はやめてくれ。マジで削除される」
で、二〇〇〇文字も書いて今更だがその後の経過を説明したい。
鴉野が二度もそれぞれ別の出会い系サイトに登録しては爆死する話は皆ご存じだと思うが。
「『アキちゃん』で登録した」
「あきちゃん? 誰っすか」
「俺」
「もう何が何だか」
おかみさんから『女装名決めないと』との事で適当に一字ずつ引っこ抜いて作った。『からすのあにき』改め『かのあき』である。
結論を述べると一日で十一件くらい来た。
「なにこれ。鴉野さん」
「どうしよう。みんな目玉大丈夫か。おかみすげえ」
身分証明書の問題は本名と所属、年齢さえ隠さなければ登録できるので男性が女性として登録できる。
それはさておきその内容たるや。
『M女になってくれ』『社長だが現地妻になってくれ』『役員だが(以下略)』『デートし(略)』『釣りに(』
「コレ、みんな冗談で言っているよな」
「ガチだと思います」
「マジか。美人に見えているのか」
本人的には自分の顔の延長でしかないが、皆見る目なさすぎるだろう。最年長に至っては六十六歳だ。
「御盛ん過ぎて呆れます」
「むしろこの年まで独身でひたすら金を稼ぐ人生をしてきたことを振り返ってと続くメッセージに哀愁を感じた。良い人と巡り合ってほしい」
「男、それも鴉野さんに向かって現地妻になれと抜かす見る目のない社長についていく社員たち」
「YOU! 掘っちゃっていいよな?! ねぇねぇ掘っちゃっていいよね?! 勃起しなくなるまで」
「月(※奥さん)に替わってお仕置きよ!」
「股間にウンコついているな!」
食事はおごってくれるし、『その後ゆっくり』らしいよ。ナニをゆっくりかはなろう規約に抵触するのでひかえます。
「釣りに行くつもりで釣られていたですね。鴉野さん」
「こんなオカマに俺が釣られクマ―?!」
いや、真面目におかみとHさんの腕凄い。
「全然関係ないが、使用済み下着はあらかじめポーチに入れていた風呂敷に厳重に封印後、ビニールに封じて十三駅のゴミ箱にポイしたのだが」
「何気に風呂敷持っている用意の良さ」
「『ええ? 捨てるならちょうだいよ』とはゆっこさんの弁」
嘆息する男たち。
「さすがゆっこさんです」
「我が母ながら高度だよな。娘の御下がりじゃなくて息子の御下がりとか」
「黒下着履いてくれって人にあげたら良かったじゃないですか」
「お前はグンゼのパンツに萌えるのか。下着なんて日常を作るためのものでしかない」
(*´з`)<ブー
鴉野のスマートフォンがバイブレーター音を放つ。
「Hさんだ」
「なになに。……『甘いですよ。鴉野さん。グンゼパンツフェチは実在します。白がジャスティスです』」
男たちは頭を抱えて悶絶。
「一生使いたくない知識を手に入れてしまった~~?!」「記憶よ消えろ消えてください?! ボクは人生の三分の一しか生きていないのですよ?!」
狂乱状態から復帰の鴉野。茶を淹れる仮想人格。
「あと、アキちゃんのインスタグラムをおかみさん向けに作った」
「まぁそれは良いでしょう。見事なネカマですが」
「外人さんから性器写真送られてきてさ~~www」
「がぶっ?!」
鴉野はそのムスリム青年のページを開く。
「イケメンだよな。外人さんにしては意外と小さかった。つるつるに剃っているのが好感度高いよな」
(※メッセンジャーから)『可愛いよね~~!』
「鴉野さんたち?! そっちの世界から帰ってきて?! お願いだから?! もう強制的に話を変えましょう?! そうしましょう! お願いします!」
まあいいや。
せっかくだから帰ってからの話だけどさ。
「あえて某さんと呼ぶが彼女、おっぱいでかいよね」
「そんな話題をしますか。鴉野さん」
なんせ百十センチあるらしいし。
その巨大砲台を下着つきとは言えど『見る?』なんて言われたら思わず目を逸らして照れてもおかしくない。
「ちょ?! うらやま?!」
「まぁ聞け」
~~鴉野回想~~
「この横の筋肉が大事なのです。鴉野さん&女装サロンの皆さん。そして下の胸の筋肉も寄せる。これで2カップは作れます」
なぜかちっとも萌えない乳見せである。
以後、いかにおっぱいをつくって維持するかの講座が始まる。
男軍団(見た目は女)。大盛り上がり。
『筋肉! 筋肉! マッシブ!』
~~回想終わり~~
「後半は文字通り話を盛ったがこんな内容だ。
生涯これ以上に萌えない乳魅せ(※ブラ着用)は今後無いと断言できる」
「凄く実学的です。さすが……おっと某さんだった」
「『Mになれ』には激怒していたな。彼女」
「鴉野さん。次の話題行きましょう。出会い系の続きあるでしょう。ちゃっちゃと吐きましょう」
「お、おう。SとMの誤解については後日な」
「さすがに居た堪れなくなってアキちゃんの出会い系アカウントは削除した。男として良心が耐えられないわ。ほうっておくとヤ●ーポイントに換金できるレベルだったし」
いや、本当に男って恋愛ごとには目が無いね。
「まぁ、それは仕方ないでしょう。アレはボクも驚きましたから」
「で、男性枠で女性専用の出会いアプリに登録して一週間くらい放置していた。当然だがなんも音沙汰なかったし」
そして鴉野。そのアプリを開く。
三十人以上の十代後半から二十代の女性の顔写真がずらり。
「『化粧の秘訣を教えてほしい』だそうだ」
なろう小説ならば許せるが、現実世界の男にとって三人以上の異性を相手にするのは特殊能力。
「鴉野さんもってもてですね~~(棒)」
「もてるのは俺じゃなくてアキちゃんな?!」
最初律儀に自分が化粧できるわけではないことを伝えていたが、相手の美貌を褒めたほうがマシだと気づきオカマに徹しようとしたのだが異性と話を続ける難しさって言ったら?!
「Twitterで言うと『良いね!』した女の子としか話せない仕様なのに三十八名もいる」
「自分なら発狂します。ょぅιょならとにかく」
「まぁ失敗したら先ほどまで話せていても即返事なしになるから若い女の子相手は気楽なものさ。ただ、そんな若い娘に振り回される木っ端役員は愛人作る金を社員に還元しろと言いたい」
ここで息を切る鴉野。
「うちの代表なんかエイプリルフールのサプライズで売上上がったからと社員アルバイト全員に手ずから5000円の大入り袋配ってくれたぞ」
「なにそれ。大学生にはマジで朗報」
「こんなに幸せなエイプリルフールはなかったしね」
「まぁ愛人募集な社長や役員は酔い潰し返り討ちして掘っちゃいましょう。彼らは一生勃起しなくて大丈夫」
「俺をホモみたいに言うなよ。ゲイの人が傷つくぞ」
アーー?!
話がとびとびになって読者さん辛くないかな。
ごめんね。で、続きなのだ。
七十近くまで仕事一筋で女を知らず、今更実子が欲しくなった社長は良いとする。年齢差も目をつぶろう。女の子が若いほうが子供はできやすいのは事実だ。
「重度障碍者だと明かした上で付き合ってくれと言う方がいらっしゃった。一番ズキュンと来た。すべてのメッセージの中で一番イケメンだったな」
「鴉野さん。自分がワープアなのにこれ以上」
椅子を譲るなら椅子に座っていなければいけないし、愛情を与えるには愛を持っていないと難しいと思う。
「そういうわけで退会した」
「正常かつ良心的な判断です」
鴉野みたいな偽物より美女を狙うべきだと思う。
誠意があればアラフォー小太りチビでかつ髪薄目のおっさんでもその場で一番の美女にナンパ成功する。
たとえ『桜橋のアポロビルにストリップ見に行こう』というナンパ文句でも。
「鴉野さん。さらっと私怨を混ぜないで」
「マジで今年の花見の席であった珍事な」
「一本歯下駄でカポエイラしていた鴉野さんでした」
「大阪に住んでいながらアポロビル知らんかった」
「知っている方のほうがディープなのですよ」
「次の企画はIさん拉致ってアポロビルかな」
「生涯絶縁されますから辞めてください」
なお、この女装写真はまわりに回ってこうなる。
某映画関係者より贈られた素晴らしい贈り物だ。
「あ、配役表ももらったが普通に未公開映画の内容に触れているのでここでは出せない」
「もう、アキちゃん無双ですよ……鴉野さんも頑張ってくださいね」
そりゃもちろん。
仕事を一所懸命。
その延長に楽しみがあればなお頑張れる。
非日常を愉しめるのは日常あるからこそ。
「だから、店番しているだけでトラック突っ込ませて『支払いに来た』な日常を改善してください神様」
「絶対無理だと思います」
「だめかよ?!」
「じゃ、次の企画はどうしようかな」
「読者さんの判断に委ねましょ」
~~おしまい~~




