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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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おはよう世界

 鴉野は大阪駅のゲートの一つの前で目覚めた。


「ふわああ。よく寝た。この季節の野宿は快適だな」


 貴様はまた何やっているのだ。


 地蔵横丁前のゲートは格子状のシャッターが下りる形で、駅側がよく見える反面駅員さんの巡回が無いらしく、快適に眠れた。


「まだ四時か。始発待つの面倒だな~」


 しかし駅が開く前に逃げておかねば不愉快な目に遭う。

 鴉野は男性なので別に問題がないが女性がここで寝ていたら非常に不味いと思う。

 と思ったらもっと危なさそうなところで寝ているねーちゃんいた。

 確か観覧車下でナンパ待ちしていたお姉ちゃんだ。

 いっそ声をかけてもよかったのかもしれない。手持ちが二千円でなければだが。



 少しさかのぼる。


「最高級のそばみそがある」「おっしゃ!」


 さっきまでの卑屈な態度と敬語はどうした。

 予期せぬ豪華なつまみに鴉野のテンション急上昇。


「よし。獺祭開けるか」「おう」


 C氏とI氏、鴉野の三名はC氏宅で呑んでいた。


 獺祭磨き二割三分。遠心分離仕立て。

 言わずと知れた最高級クラスのブランド日本酒である。


 いや、呑み損ねて未開封で半年ほったらかしだったがな!


「呑めるのか」

「それでも未開封なら。未開封ならやってくれる」

「りばーんど! りばーんど!」


 この三人のうち二人はこのネタがわからないのでこの部分はフィクションである。

 いくら未開封とはいえ、冷蔵庫ではなく冷暗所においた獺祭。その味は当然変化して日本酒らしい雑味が出てくる。勿体ない。


「いけるいける。さすが獺祭」

「おけおけ」


 おちょこで呑んでいたが面倒になって茶碗で呑む。

 普通の人間は獺祭のような高級酒を茶碗で呑まない。


(※ 新梅田食堂街。昼のワンコインバイキングとして男性560円女性460円で有名な居酒屋、『木曽路』さんの夜の居酒屋メニューで一杯千円にて呑むことができます)


 富田漬を食い荒し、ドライフルーツを嗜む。

 チーズを食べて甘栗を剥き、スルメを噛み。


「甘さしょっぱさの無限コンボでいくらでもイケるよね」


 そして巨大モニタと化したテレビでTRPG動画の閲覧。


 実に優雅な日曜日の過ごし方である。



 楽しい宴は泊っていって良いよと仰るC氏に対して早めに帰るといって鴉野たち二人が帰宅することで終わった。


「さすがに三人で一升瓶を開けるのは無謀だった」


 それくらい気付け。


 鴉野は呑み足りないくらいだが問題はI氏だ。

 I氏は機嫌良し、足取りしっかりだが普通に激務でお疲れモード。

 電車の席に座ってトイレに行ったあとは軽く眠ってしまう。


「せっかくだからこのまま大阪で呑みなおします」

「鴉野さんタフっすね」


 とはいえI氏は一升瓶を毎日開けても普通という家の男なのでもちろん酒に強いが、あえてI氏と大阪駅で別れた鴉野はこともあろうに。


「お兄さん。よかったらのまない」

「いくいく」


 大阪の商店街などで客引きは条例違反であったはずである。

 にも関わらず客引きを行う店はほぼ確実に一見のみ狙いのやばい店である。


 知っていて引っかかるな鴉野。

 なんでついていく鴉野。


「日記のネタがないんだ」


 実に切実な理由であった。


 一話一話が短いのでページめくりが億劫。

 絶叫しすぎ。重複表現多し。

 一人一人が何を考えているかわかりにくい。


 そんな鴉野の書く小説に対してこの日記は。


 文量がある。

 絶叫しない。重複ネタはさておき。

 何を考えているか切実にわかる。

 日記のほうが面白い。


 ……Orz(←土下座と凹むを同時に行う姿)



「じゃ、システムを説明します」


 3000円だけで呑めると誘うのがこの手の店であるが、果たしてこれがどうなったらぼったくりとして大阪府に摘発されているのか、あるいはトラブルとなるのかは実体験してみないとわからない。


 皆若い。ガールズバーという奴らしい。年齢を聞くと皆二十歳もしくは二十一歳とのこと。


「えっとね。お客さんは呑み放題で一時間3000円になります。

一時間になったらちゃんと教えますので安心してください」


 普通。というかここは以前通った店では時間計測は教えていないのでありがたいかもである。


「そして女の子、接客担当の女の子の飲み物代が別料金になっています。

2000円、3000円と5000円の器があります。5000円が逆にお得ですね」


 ふーん。

 続けて。


「それで、30%のサービス料金がかかります」


 なにそれどこのサイヤ人なパワーアップ。


「先払いができますので安心です。10500円になります」


 補足説明。500円以下のおつりは出ない。



「顔小さいですね。今日は一人ですか」


 そっちかよ。顔が小さいよりデカい面とか顔の皮が厚いとかじゃないのか。


「さっきまで友達と呑んでいましたよ」



 補足説明。この日の鴉野のスケジュール。


 深夜二時 仕事がやっと終わる。

 深夜三時 ウヰスキーと赤玉スイートワインバカのみ。

 深夜四時 就寝

 朝〇八時 起床

 昼一三時 寄せ鍋を食うのにビールを飲みたいとゆっ子さんが我儘を言うので致し方なく迎え酒をする羽目になる。かなりきつい。

 昼一四時 つまみを入手

 昼一五時 入浴

 夕一六時 I氏とともにC氏宅に。

 夕一七時 三人でなろうの話しながら外人率高いパブで飲み食い。



「鴉野さんはパブで外人さんや女子大生をナンパしようと」

「してません」


「てか、一日中飲んでいるし!?」

「否定しない」


 話を戻そう。



 そして卓呑みを経て現在午後二四時。終電超えである。


「かんぱーい」


 そしてこのシステムの店で三人のみ。

 当然財布へのダメージは加速する。


「ね。ね。乾杯するのに……15000円で良いから」

「普通にお金ないから帰る」

「じゃ、12000円で……」


 なんかすごいな。

 鴉野は取敢えず払ってから出る。

 あてもなくさ迷い歩こうとするそこに別の男がやってくる。


「あ、この間会いましたよね! この後のみませんか」

「さっき別件のぼったくりな店で全部もってかれました」


「いやいや。3000円で良いのです」

「ないない」


「財布あけて3000円だったら呑みましょう」


 もちろん2000円しかない。


「ははは。こやつめ。別の財布があるのでしょう?」

「いや、悪い悪い。金のあるときに頼む」


 何やっているんだ。鴉野。


 幸いなことにこの季節なら風邪などひかない。

 獺祭は良い酔い口なので泥酔はしていない。


 獺祭を包んできた風呂敷は普通に布団代わりになる。

 つまみを大量に入れてきた肩掛けかばんはちょうどいい枕になる。

 尻に財布とケータイを入れて掏られないようにして適当に人が来なくて人目が常にあるような場所で寝る。


「たまには野宿も良いものさ♪」


 ゴロンと横になる鴉野。程よい暖かさと涼しさで大変快適である。

 読者の皆様は間違っても大阪駅周りで声をかけてくる男女の相手をしてはいけない。

 特に女性は酒の入っている状態で無防備な姿をさらしてはいけない。


「女の子をひっかけるのに、女の子に引っかからないわけがないじゃないか」


 そううそぶくと鴉野は寝息を立てだした。おやすみー!


「なにやっているんですか。鴉野さん」


 某猫な方に呆れられるのはそのあとのことである。

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