トンカツな婚活バー
鴉野は高校生時代ドラクエの続きがやりたいがために親戚の集まりをブッチするため『ドキ! 女だらけの水着大会を見たいから帰宅する!』といって逃げたことがある。
叔父は『ここで見てもいいぞ』と仰ってくれたが鴉野の本命はドラクエであり、親戚の子供たちと一緒にエロ番組を見ることではない。ましてや成人した従姉や従兄の前とかどんな拷問だ。
高校生になれば知恵がつく。
仮にここで若き鴉野が『ゲームしたいから親戚の集まりにいきたくない』といえば非常に印象最悪だが、『家に帰って一人でエロ番組見たいんだよ! 言わせんな恥ずかしい!』と高校生が恥ずかしながら言えば一定の理解を男は示すことを知るわけである。
しかし。
そうやって得た知恵なんてどこに捨てたのか。
鴉野はとある大阪駅前のとあるビルの前にいた。
今回は『無笑』の取材として突入する。
某なろう関係の知り合いたちと町ブラしていて見つけた店だが、鴉野の知るなろう関係者で女の子と遊んだり、ネタとは言え一緒にSMバーやオカマバーに突撃してくれるような珍奇な友人はいない。
『婚活バー』
語感的にトンカツに似ているね。
至極どうでも良い。
入場料は3000円~5000円ほど。
内部で酒を買うのは別料金。
女性は無料で酒が飲めるらしい。
(※ 店による)
こんなしょうもないことで虎の子の5000円を浪費する鴉野は立派な阿呆といえる。
中に入って呑んでいれば店側がセッティングした一般女性と15分の会話タイムを経て可能なら連絡先を聞き出して付き合うよというシステムで、店側が満室になれば追い出される。
薄暗い店内の隅に陣取り、いろいろな女性と話をするのはそれなりに面白い。
「えっ? 自転車屋さんなんてめずらしい」
「まぁ似たようなものですが」
鴉野。連日の試験勉強でキレたともいう。
店内にはかなり若い女性が多い。
男性もそれなりにいるが、女性の割合が多い。
恐るべしタダ酒パワーである。
というか。
店の前にいる女の子はナンパしていいんだろうか。
まぁ確実にそのあとはいったら入店拒否されるだろうが。
「え~。それだったら男逆ナンパして、コンパにしましょう。みんなで飲みにいきましょうよ」
連れの女と来たという女性が圧倒的に多い事実に鴉野納得。
それならそこらのモテないリーマンを逆ナンパしてもちゃんとただ酒になる。
もちろん、後で送り狼化することもあると思うが。ここだってそうだろ。
「えっ? 鴉野さん男もナンパできる口ですか」
「余裕っすよ」
冷静に考えたら別の意味、ホモゥ的な意味で女性が問うているのは明白なのに酒代分配のためにほかの男を犠牲者にするなら男に声をかけるのも辞さない態度を見せる鴉野である。
鴉野よ。君は婚活する気があるのか。
「神戸から来ました」
「兵庫から来ました」
「自転車で来れる距離です」
結構、いろんなところから女性は来るらしい。
出待ちの女性が出るほど人気がある模様。
男の酒代は高いがまぁそういうことだ。
コミュ力があればそれなりに楽しめるんだろう。
なんせ皆結婚が目的だから連絡先交換もスムーズである。
というか、結構若くてかわいい女の子が多くてビビった。
一人ちょっと天然系がいた。
「やっぱり、金持ちでいい人見つけたほうが良いすよ」
「え。鴉野さん。どうやって初対面で金持ちとわかるんですか」
天然は深いことを言ってくる。結構面白い。
こうして鴉野は数人の連絡先を手に入れたが、メールはすべてmailDaemonで返ってきた。
LINEに至っては返事もない。
中途半端に意志を通すより、批判覚悟な自爆をかまして恋を掴むことは重要かもしれない。
鴉野のような物見遊山はトンカツ食って帰ったほうが良いかもしれない。




