人間は魔族に勝てるのか 人類は炭素を求めて相争い、窒素を用いて食料用の炭素を確保している
人類は火を使う生き物である。火を扱うためには燃料がいる。
燃料の多くは炭素を起源とする。薪などだ。厄介なことにこの世界、『薪はエルフの恵み』であり、現在の人類は炭素を得る量に制限がある。森はエルフの領土で、勝手に侵犯するわけにはいかないからだ。
つまり、この世界の人類は大きな街を作る場合かなりの制約を課せられている。それを補う魔法の力だが限られた人間しか扱えない。ここまでは良いだろうか。
炭素は地球上で1%にも満たない元素であるが、人類は炭素を求めて戦ってきたといっても過言ではない。あるいは炭素、あるいは火(体内のエネルギーも含む)と人間は共生関係。もしくは『火』が人間を利用しているという見解もあるほどである。
人間の知性を支える炭水化物。糖分などは言うまでもなく炭素を起源とする。衣服もそうだし燃料もそうだ。麻薬もアルコールも炭素が主素材だ。
嗜好品である煙草もそうだし珈琲、コーラ、紅茶などに含まれるカフェインも炭素物質である。
人類は進化していないというが、少なくともカフェイン耐性は進化しているらしい。
カフェインは一応興奮物質なので、一部の競技ではドーピング対象になるそうだ。
人間は川辺に文明を築き、燃料となる木材不足で滅ぶということを繰り返してきた。
日本人は古くから植林を行ってきた。現在の水資源豊かな山々はそのおかげである。お百姓さんは偉いのだ。
人間は木炭に変わる石炭、そして究極的な燃料である石油を見出して飛躍的に発展した。その後、核物質を人間は見出すがここでは割愛する。
火をもって人間は多くの敵を追い回し、捕食してきた。
種族老若男女、群れ全体で敵を追いつめ、それを食う。
やがて狩りをやめた人間は耕作をはじめてこれを主とするようになる。
人間に依存しなければ生きていけない生き物も増え(カイコガなど)、人間に飼われるためのイキモノも生まれた(金魚などは人間がいなければフナに戻るらしい)。取敢えず人間は何をするにも『火』が必要だ。
動き回る以上汗を掻くので『塩分』も必要だったりする。
人間の知性を維持するためには一日中食う必要があるが、人間は調理を行うことでそれを克服した。さらにうまいもの食って賢くなるエンドレス。
本来人間が消化できない、嘗て人間が森を追われる原因になった未熟な果実の持つ渋みすら人間は克服した。人間は未熟な果実を生で食えないが、他の類人猿は食べられるらしい。
やがてひたすら塩を求め、火を維持するために他種族を食いまくってきた人間は落ち着いて定住するようになる。
農耕において、原始農耕はまだ良い。
だが、現代農耕において肥料として使える窒素の確保は重大な課題だ。
人類はハーバー・ボッシュ法を発明して、肥料として使える窒素を確保できたので今の繁栄がある(水素を大量に必要とするが。あと地味に温暖化の要因にも)。
なんでも窒素肥料がない場合、人類の三分の一は餓死するらしい。
窒素ってDNAのもと、タンパク質の材料でもあるんだよな。
なお、窒素、リン、カリウムは現代肥料にはほぼ確実に入っている。
逆を言う。
餓鬼族や犬頭鬼族が増えないのは農業をしないからである。
彼らにとっちゃ子供なんて次から次に産めば良いのでそれでいいのだろう。結論で言えば種族を支える食料生産能力が絶対的に足りないのだ。
彼らを飛躍的に増やすためにはほかの種族が畑仕事をしてやらねばならない。戦役の場合彼らは食い物を求めて魔族軍に参加する。
魔族軍も産めよ増やせよで対応する。
いつだってお百姓さんは大変である。
それにしたって限度がある。彼らは食えるだけ食う種族である。
後先なんて考えるタイプではない。人間で言えば五歳の子供より年若いのだし。
なお、大人になった餓鬼族や犬頭鬼族は農業をすることもあるが自種族のために作ることはない。
理由は言うまでもないが作っても片っ端から悪戯ガキ(この場合普通に餓鬼)が食べるからである。
人間は渋味をそのまま食べられないが彼らはそんなの関係ないとばかりに毒物でも好んで食べる。彼らの文化では毒で自らのカラダが壊れるのを見るのも嗜好のうちに入っている。人間だって酒や煙草を使うが彼らの場合は結構極端なのだ。
さて。窒素の話に戻す。
窒素は大気中のほとんどを占める物質であるが通常の窒素は分子結合がクソ硬い。普通に考えて肥料として使うためには雷でも落ちてもらわないと困る。
人類は経験的に糞尿、魚の干物などのアンモニアなどを窒素として利用できる術を手に入れているが、現代農法ではこんなものでは追い付かないほど人類は繁栄してしまった。
その数なんと100億人。多すぎぃ?!
窒素は火薬の原料にもなる。硝石をご存じであろう。
グアノといって鳥の糞が堆積してそれがそのまま島になっていることがある。
これは農業革命を起こし、『グアノがとれる場所はみんなアメリカ領土』みたいなトンデモ法律ができたりした。後の世で日本とアメリカが戦う場所となる。
とにもかくにも現実世界で1000万人規模の戦闘を行ったのは第一次世界大戦以降だと認識していただけたら幸いである。
窒素固定法は多数の人類を今でも救い続けているが、大量の火薬の原料を無尽蔵に作る技術でもあった。兵士の食料を支え、さらに武器弾薬にもなる。
1000万人の食料を確保し、武器を持たせる。
これは国民皆兵となる身分制度の崩壊なども要因にあるので次回はその辺に触れたい。
こうして人類は炭素を求めて相争い、食糧確保のためのリン不足や水不足を補うためまた争う。
現実世界にも『魔法』があればよいのだが、それは望めないことらしい。
リンは入れりゃいいというわけではなく、土壌によります。
リン酸鉄。リン酸アルミニウムではなく、リン酸カルシウムになってもらわないと困るのです。
しかもリンは窒素と違いイキモノの身体の中で大きく移動しない物質なので必要以上にリンを投入した農場は少なからずあります。
リンにせよカリウムにせよ窒素にせよ微生物などの働きが大きいのですが、この世界に微生物がいるかどうかは作者でもちょっとわかりかねます。




