人間は魔族に勝てるのか まず人間を知ろう
『四天王』で由紀子は『今は人間に勝てるが次の戦役では敵の数は100万。その次は1000万を超える』ようなむちゃくちゃな予測をしていた。
1000万は第一次世界大戦を超える死者になる。
取敢えずファンタジーの世界で1000万人を動員することは無理である。
理由は人類が扱える窒素と炭素が足りないからである。リンも。
窒素?!! 実は関係ある。
あと銀行がないし、人間が貴族制度を採用しているからという意味もある。関係あるのか? ある。大ありだ。
しかし久君。あの世界に現代戦の概念を持ちこんじゃったからな。
武器は竹製長柄槍が主力とは言え、重火器も開発成功しつつある段階っぽいし(外伝では桔梗が火器によって倒されている)。あと野球まで持ちこんでしまった。彼の趣味だが。
野球。関係あるのか。大いにある。魔族にバスケットボール持ちこんだ由紀子も大概であるが。
あの世界。戦争しか娯楽らしい娯楽ないからな。ロクな世界じゃねえ。なんて修羅の世界。
取敢えず敵を知るために己を知ろう。
人間のスペックはあの世界でもこちらでもほぼ変わらない。
あちらのほうが若干現代人よりは体力あるだろうが誤差のうちだ。
魔法を使う個体がいるが少数派で、多くは魔力水晶を埋め込む手術と杖の保持を必要とする。
神の奇蹟や精霊の加護を得た魔術もあるが基本的に人間は魔法を使えないとみて良い。
エルフ、ドワーフなどは魔族ではないが、魔族側につけば魔族として認識される。この辺はスズメは害鳥か否かみたいなものだ。
基本、人類敵対種で人間やそれに準ずる知性と『魔王』に従う社会を持つ者たちが魔族。それ以外は魔獣と呼ばれている。例外は竜族とその眷属くらいだ。
特筆すべき社会制度の違いだが、あの世界の知的生物は人間、魔族含めて4日働いて2日休む社会制度を持っている。
ただし闇曜日は『己を鍛える日』なので厳密には休みと言い難い。休日は光曜日。
一週間が七日もある我々から見れば随分のんびりした社会だといえる。
人間の身体的特徴として、全身にくまなく汗腺を装備しているため老若男女全員で走ることが可能。種族全員の大規模移動を可とする。しかし類人猿の中では最弱の身体能力を弱点として持つ。体格の割に恐ろしく力がない(※人間より小柄なチンパンジーは握力だけで300kgある)。
踵を持ち、直立歩行を行い、肩関節。
背中周りの筋肉が特徴的で投擲能力が高い。
(背筋は姿勢を正す筋肉でもある)
猿は力が強い反面肩関節の柔軟性に欠け、時速30kg程度のボールを投げるそうだ。一方人間は子供でも時速50キロのボールを投げる。
そして時速50キロは『スローボール』と呼ばれる。
完全な拳を作りそれを同族同士への武器として使用できる。
またその器用さで様々な道具を使いこなせる。勿論武具も使える。
猿は完全な握り拳を作れないらしい。
鱗、生体装甲、体毛による防御は期待できないが、服や鎧を装備して代用する。
生殖面では年中発情。
妊娠期間は十月十日というが、これは日本では数え月を採用しているからで実際は266日が目安だ。
あの世界は一か月30日。360日しかない。一週間も地水火風闇光と六日しかない。
基本一子。双子は珍しい。
しかし人間女性はその生涯においてほかの猿とは比較にならないほどの多産を可とする。
双子、三つ子以上を産める猿は人類だけと言われているらしい。
(別項で触れる魔族、『餓鬼族』はそれ以上だが)
一人の母親が十五人の子を産むこともある。
多産多死だが、社会が発達すると逆になる傾向アリ。
子供が戦線に参加するためには魔術師ならば七歳以上。
後方支援要員としては一〇歳以上。前線支援要員一二才前後。
前線で戦うための最低年齢は一四歳前後。
寿命は最大一二〇年程度。
魔術適正者は自らの老化を遅延させる能力を持つ。
また、魔術使用者は老化速度が半減する。ただし寿命は変わらない。
しかし食糧事情、666年続く戦乱などの都合のため、四〇歳以上の個体は珍しい。
総体として、「大型猿類」であり、「群れ」を作り、「汗腺の装備のおかげで全力疾走を維持し、中速度でほかの生物から考えても相当な長距離を群れ全員で移動する」「調理された質の良い、多様な食物を食べる」「投擲など自分の体から離れたものを利用する」「サル類の中で最も多産多死」であることが動物としてのヒトの特徴・生態的地位だといえる。
次話は魔族について語る。
珍しく真面目だ!




