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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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ファンタジーの扉 帰還

 気分が悪くなったら言ってね。すぐおろすから~。


挿絵(By みてみん)


 しょっぱなからの画像テロあい済まぬ。

 釣られる鴉野。相変わらず大爆笑中。


 というか笑う以外何をしろと? だって縛られているもん。

 冒頭でいきなり衝撃映像だが、鴉野にとっては笑劇だった。

 ユーはショック!!!


 すぐおろすから。


 そう娘さんはおっしゃったが、ウヰスキーロックで四杯飲んで釣られてみようとか思ってはいけない。

 ウイスキーを呑んでいる時に逆さづりを受けてはいけない。

 普通にはきたくなる。


 だが、こんな場所で吐いたら『この汚物め~!』とノリノリでお仕置きされそうだ。


「じゃ、ちょっと逆さづりしてみよう!」

「いいすね!」


 ちょっと考えような?! 鴉野?!

 ヒャッハー! 天にも吐き出す気分だぜ~!!


挿絵(By みてみん)


 そういうわけで盛大な汚物ぶちまけなどにはならず、普通におろしてもらって縄をほどいてもらう。


「やっぱ縛ると汗かくよね。鴉野君おごってね♪」


 問答無用。さりげなく@700円の小ビールを飲む女の子。

 とはいえ、鴉野も大笑いしているので大したことはない。


 豆知識。


『人間を縛ると汗をかく』


 クーラーがあって裸同然でも汗をかく。

 一生使わん知識だと思う。


 からんと扉が開くと。


「おお美女三人じゃないですか。華やかですよね」


 HENTAI紳士が現れた。


 というか、一人オカマまじってるぞ~?!

 基本的にフレンドリーなのはこういう店ならではといえる。


「あら、嬉しいですね」


 ノリノリで鴉野も紳士の首筋にキスの真似。

 そこをすかさず写メでショットする娘さん。


「あ。良い匂い」


 ちょ。もどってきてください。

 でもこのアングルいまいちだな。


「撮り直し!www」

「きゃー♪」


 どこにツボがあるのかわからん鴉野である。


「いや、可愛い可愛い。行ける行ける」

「鴉野ちゃん声高いし細いしシャレなってないわ。磨けば光るよ!」

「髪もふっさふさだしね! ふっさふさ!」

「すね毛もうすいよね!」


「あれ? やっぱり股間とか処理しちゃって」


 禿が光ったほうがマシだ?!



「というか、◇■さんのほうが肌きれいだし、色が白いでしょう。たぶん俺よりいけ」

「だよね! いやあ獣のように男たちが俺を見るのは」


「「「戻ってこい!!!」」」


 一斉にツッコむ男女たち。

 ちなみに女の子のお客さんも入ってきている。


(※ なお『無笑』は鴉野の体験をもとにした嘘っぱちですのでこれらの会話は当方の会話ログにはありません)


 いやあ。ファンタジーバーって言うからてっきり。

 前の言い訳を繰り返す鴉野だが、女性も来店するらしい。

 結構こういう店なので皆仲が良い。みんな家族みたいだ。


「ちょっとノリで○ちゃんに噛み千切られた乳首再生中なんですよね」


 ちょ?!


「冗談ですよ」


 は、ははは。


「七月○日。俺は凄いことを知った。乳首は再生すると」

「しません! 冗談です!」


 大笑いする男女たち。


「というか、こういうところで怪我して警察きたらどうなるのかな」


 女の子が首をひねる。


「あれだ。『殴ってください?!』とか言いましたかとか聞かれるんですよ。きっと」

「乳首噛み千切って! とか言ったのとか」


「あなたはそれを怪我をさせるためにやったのですかとか」

「裁判所で再現しないと。釣ってください! とか言ったとか」


 何気にすごい会話だ。


「もっとSMはやると良いよね」

「ですね」


 日蔭な趣味だけに結束力が高い。皆すぐ打ち解けるんだろう。

 鴉野は実際に会った印象として彼らが変態には見えない。

 HENTAI紳士淑女かもしれないが、至極ふつうのまっとうな社会人で、人を思いやれる人間たちだった。

 殴り殴られなのに相手を思いやる信頼がある不思議はある意味武術や創作に近いかもしれない。


「あ。そういえば、知り合いに童貞が」


 フーターズとかに連れて行くだけで煩悩退散と視線を逸らす程度には。


「うちに来なさいって言っておいて。卒業できるわよ」


 いろいろ別の属性に目覚めそうなのでどうなんだろ。

 でもまぁ、宴会の時は必ずうちにという話はちゃんと聞いておく。

 そんなこんなで時間が過ぎ、鴉野は帰宅する。


 ちなみに二時間飲み放題4000円(女性2500円)+女の子に驕ったビール小びん700円の4700円。

 ほかの人も言っていたが破格の安さだ。


「煙草でもなんでもおいておくよ。買っとくから!」

「そ、その下着姿で外に行くのはやばいwww 俺買ってくるwww」


 そういうネタ会話もある。

 しかし素面に戻るのが早い鴉野は別の心配をしていた。


 鴉野は鏡に映った自分の姿を眺めていた。


「帰宅するんですか」

「はい」


「この化粧は」

「そのまま」


 鏡に映った自らの身体はおっさんのする服にガチ女装なメイクであり。


 まじか……。


 顔だけ化粧したおっさんが夜中の国道沿いを疾走している姿は軽くホラーだったに違いない。



 後で鴉野にメッセが来たので紹介する。


『乳首は再生しますよ。鴉野さん。ちょっとプレイが過ぎて千切れた子が半分再生していますから。業界では有名です(概要)。だからちょっと噛んだ程度なら大丈夫』


 どんな業界ですかあああああああああああああ?!!!


 鴉野はイラン知識をまた増やした。


『乳首は再生する』


 こうして鴉野はファンタジーの世界から現世に戻ってきた。

 当たり前だが女装趣味にもM趣味にも目覚めていない。だが。


『鴉野さん! 鴉野さん! 女装しましょう! 良いメイクさんとか紹介できますから!!!』

『あれっすね。鴉野さん。男の人は台風を見て吹っ飛ばされたいっていうM気が』


 実に熱心なメールが複数届く程度には、注目されてしまったらしい。それって帰還できていない。


「よし。次はガチで美熟女バー行くぞ」


 戻ってこい! 鴉野?!!


 そして戻れない道というものもある。


『ホモゥ……』

『ホモホモゥ……(カサカサ)』


 腐女子はどこにでも湧く鬼腐神である。

 餌を与えてはいけない。鴉野自身のことである。


「さぁ! 次は鴉野さんの女装が見れますよね!」

「(嫌だなんて言えない)」

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