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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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夢の中のあなた

 鴉野の夢は総天然色(挨拶)。


 夢というものは不思議なもので嘘と思っていても見ていたり、支離滅裂でも見ている間は真実と思っていたりする。


『金返せ! 金よこせ! そうしないと俺は破滅するんだよ!』


 鴉野は借金取りの彼に詰め寄られていた。


 何でも夢の中で鴉野がハチャメチャするため、その分の借金を払ってもらわないといけないらしい。


『って言っても困るぞ。夢の中だし。現実世界から金は持ちこめない』

『うるさい!』


 こんな感じで鴉野の夢の中には何年も引き続きで登場する人物たちが存在する。


 たまに忘れたころに現れて、あ。あいつ元気なんだなとか思う。


 ただ、高校生のキャラクターは高校生のままだったりして鴉野だけ歳をとっていくが、夢の中の鴉野は高校生になっているので問題ない。


 鴉野の夢は時々グレードアップする。


 音と色に限らず、明晰夢が増えだしたので『夢だ』と見抜くことが増えた。


「食い物に味がしない」

「食っても腹が膨れない」

「匂いがしない」


 夢側も対策をうってきて、最近は殴られるとマジで痛かったりする。やめてくれ。


 夢の中では目を閉じたり息を止めたら目覚めるというが昨今はそれが叶わない。さらに金縛りになっていたらほぼ確実に夢という経験則を鴉野が得てしまったので怖がる前に末端の足だの腕だのを必死で動かして抜け出してしまう。


 夢側の対策も次々と。俺は夢に喧嘩売られているのかもしれない。


 作中人物が出てこないのか。そういう話については『ある』と言っておく。


 『夢を追うものシリーズ』のファルコは線の細いもの凄い美形だが騒がしいので可愛く見える。

 アステリオンのほうのファルコはまず出てこない。あいつ地味だな。


 高校生に戻って何かしている。

 何かしようとは思うがダラダラして何もしないというのが鴉野のよく見る夢だが最近はそういう夢を見なくなった。

 たぶんやり直したいとか思わないようになったからだろう。

 ただでさえ不幸なのにこれ以上厄介ごとにまみれた人生を繰り返したくない。

 たぶん繰り返したらもっとひどい目にあうと。

 あるいは放送大学を始めたのでもう大学生という自覚ができたのかもしれない。


「カラスノ。ペン貸して。濃いの」


 その女子高生の彼女は鴉野の同級生だった子だ。

 鴉野は相変わらず人の名前を覚えるのが苦手であり、同級生の名前などついぞ覚えることなどなく学業を終えたのだが。

 アネコさんを金子さんと覚え、君人さんを直人さんと覚える鴉野である。


 学校であるはずなのだが、地元の街並みが見える中、彼女は落書き帳を手に鴉野が出したペンを試している。

 赤いサインペンはインク切れ。辛うじて使えるものは蛍光の黄色。

 あとはみんな鉛筆だったり色鉛筆。


「うーん。これでいいや。ありがとう」

「いや、久しぶりだな。なにやってた」


 雑談をする鴉野と少女。

 そんなに美人というほどでもないが明るい笑顔の女の子だ。

 背は低めでスタイルは良いとは言えない。

 だが好意的な感情を鴉野は彼女に抱いている。


「じゃね」


 彼女は自分の名前の書いている大きなハンカチを鴉野に押し付ける。


「お、おい」


 名前の書かれたそのハンカチ。


「なに?」


 ここで聞いておかなきゃならん。

 鴉野は恥を忍んで彼女に問う。


「お前の上の名前なんだったけ」


 呆れる彼女は答える。


「『……』!」

「『……』?」


「わかった! 覚えた。メモしておく」

「も~! 忘れるなよ!」


 夢の中に出る人々は美人だったり不細工だったり。

 そういった記憶が隅に残っているのか、鴉野の書く話は時々支離滅裂だったりする。


 夢が壊れるとき、鴉野は彼ら彼女らに会えるのだろうか。

 その時は鴉野はこの世界に生きているとは限らないのだが。

 取敢えずメモ帳に小説のネタとして彼女の名前を書いて居る鴉野は非常に問題がある行動といえよう。

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