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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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信じて裏切られ、信じることで己を騙す

 やべえ。


「どうしたんですか鴉野さん」

「アルバイトの人が辞めちゃった」


「ああ。大変ですね。この時期いろいろと」

「仙人一本歯下駄貸したままだった」


 ため息をつく彼と鴉野。


「どうするのですか」

「後でバイトの人の機嫌直ってから頼んでみよう」


 なんかお客さんと揉めたっぽいんだよね。でもそれで辞めるっていうほどでもない。


 だってさ。


「鴉野さんなんてどうなるんですか」

「まったくだ。俺が首になっていないのに理不尽だ」


 しかし状況が確認できないからどうにもこうにも。件の方は鴉野と話す前に辞めちゃったし。シフトしばらく荒れるよね。


 さて。今回は信じるべき話ってことなんだ。


「鴉野さんの言葉を信じるバカいるんですか」

「おい」


 まぁその。前話でちょっと述べたけど。


『現時点で鴉野さんが確認できる限り、なろうでもっとも警告を受けつつもいまだ首のつながっているユーザーである鴉野さん』


 これ、証明する方法がないよね。鴉野の自己申告でしかない。


 そして鴉野が知っている他者の警告数もまた自己申告しか確認できない。それに、首がつながっていると思っているけどすでに首は切断済みかもしれない。後者は鴉野ですらその時がこないとわからない。


 さっきの話だと『一本歯下駄貸したまま』は鴉野からすれば間違いない事実なんだけど、読者さん側では確認する術はないよね。


「ですね」

「鴉野のシフトが圧迫されてなろう投稿に支障が出ていればまぁ確認できるけど原因は不明のままだ」


「せやな!」


 まぁテンションハイで書いて徹夜していることもあるけど。


 あと、鴉野から確認できる事実は『しばらくシフトがあれる』だけど、実際のバイト君が辞めた理由はわからない。


「当事者ではない読者さんがわかるのは『○月○日。△時から□字にかけての時間、鴉野 兄貴というユーザーは何も投稿しなかった』程度ですね」

「うん。他は確認できないからね」


「そもそも鴉野さんは複数人説あるんですよ」

「ねえわ」


 でも、確認できないしなぁ。


 そうなると、もうある程度相手の言うことを信じているということで会話を進めるしかない。


「人間は信じたい話の根拠をあやふやにしたまま考える必要がありますからね」

「だな」


 では、いつまで信じるか。人間関係としては信じているが、情報として精査した場合どうなるかを考えないとだめだよね。


「なろうの『受けるなろうの投稿法』とか『現役作家が忠言する』とか『プロ作家が投稿している作品』とかですか」

「その話もしないとだめだな」


 たとえば、会社社長を自称する人間がチャットに現れたとする。


「めっちゃ怪しいです」

「しかし、友人の紹介である」


「取敢えず、友人が紹介する彼は社長である。その前提でお話しますよね」

「そうするしかないね」


 ある程度仲良くなり、実際に会うことにしたとする。食事をする約束をして、彼を名乗る人物がその場に現れた。この場合、少なくとも会食の約束を知っている相手が来たことになる。


「ですね」

「だな」


 さらに、その職業でしか知りえない情報や物品を所持していた。実際その仕事を目の当たりにした。などの事実を確認して、相手はたぶん本当に社長なんだろうなとか相手の真偽を調べていく。


「で、領収書切ってその食事を驕ってくれた」

「少なくとも、彼は食事を我々に驕ってくれたという事実は残ります。会社の経費で本当に落とすか否かは確認できませんが」


 自称作家でも、専用アカウントのTwitterとかFacebookとか公式サイトとかを精査しながら真偽確認する。あるいは普通に本人に聞くか。


「でだ。その情報は信じるに値するのかってのを改めて問う。『えらいひとがこういっていた』なら自分の意見じゃないだろ」

「ですね」


 裏を取る。作家なら普通にやっていいと思う。まぁ鴉野とてやり切れていないところが多々あるのだが。

 自称○○の言葉に、『現役作家さん(現役編集さん)がこういっている!』とかを前提に自分が知りえる範囲で真面目に考察するとしたら、そりゃ『信じたいことを信じるための情報』になっちゃう。


「よくわからないのですが」


 じゃ、ヘイトスピーチでよくネタにされるK国を挙げようか。


「『剣道はK国起源』とかですか」

「ソースがネットとはまたあやふやだよな」


 そこらへんはいったん目を瞑る。ネットで『K国の連中が剣道はK国が起源だ』とかいう人間がいるのは『事実』だし。本当にK国の人が言っているのかどうかは確認できないが。

 だが、ここでナショナリズムに凝り固まって、『K国はむかつく』ってだけはどうかと思うんだよね。そりゃナショナリズムは人格形成で必要な仮定だから否定はしないよ?


 しかしね。


「なんですか?」


「北に同民族の敵対国家。しかもあっという間に陸伝いで首都制圧できる距離。

その上には中国ロシアモンゴル。逃げ場と言える海に行こうとすれば日本列島」


「あ」


 これも『事実』だよな。


 そういう情報も見ると何となくわかるんだよ。この条件で生き残るために何をするとか言われたら、他国の知財にせよ文明にせよ起源主張やらなんやらとか、何をしてでも生き残るために努力せざるを得ない。というか、周囲と国力が違いすぎる。

 これで『K国むかつく』とだけな情報を基に相手を叩いたら弱い者いじめレベルだ。


「ですね」


 まぁ、『どうしても逆らうなら相応の態度を出すよ』っていう程度で良いよね。それくらい差がある。


「ちょ?! 鴉野さん怖いです?!」


 そもそも日本海がやばい。なにあのすごいバリヤー。



 あと、鴉野が知る限りでは中国韓国系は語学堪能なんだよ。『事実』というには精査が足りないけど、あくまで鴉野の所感ね。前者は文法や漢字の関係でよくわかるけど、後者は。


「全部ひらがなみたいなものだし、オタ言語としては日本語に負けるし、地域としては周囲に蓋をされたような」


 なんだよな……なんでそんなに語学力あるのだ。


「実際、エリートはよその国に行くために必死で語学力を磨くそうですよ」

「それって、エリートじゃない人はどうするのさ。仮想人格よ」


「うーん。うーん。ヘイトスピーチが好きな人なら、『そういう方しかいない』とおっしゃるのでしょうね」


 まぁそういうわけで、『事実』は複数知ったほうがより相手を理解できる。


「あとですね。日本語は明治のとき、外国語を理解するため膨大な造語を作って文法も輸入したり新たに創造したりしているんです。今の口語体だってそうですよね。戦前は文語体も使っていました。

また、『染色体』などの科学用語もこの時代からの発明でして、『全部日本語で問題ない』となり、逆に外国語を理解しようとしなくなったという歴史的経緯があるのです」

「マジカ?!」


「ふつう、科学者は科学用語を使う関係で外国語を覚えます!」

「すげえな日本」


「HENTAIの国ですから」


 仮想人格の雑学はさておき。

『自分が嫌いな相手を他人が嫌いになるために』

 偏った情報を与えようとする奴を鴉野はこう考える。

『嘘吐き』


「鴉野さんのことですね」

「まったく否定できん。俺も人間関係においての好き嫌いは克服できない」


 俺は聖人君子じゃない。しっかりしすぎて本当の悩みを身近な人に言えない子に『君は泣いてもいいし、叫んでもいい』とカッコいいことを言いつつ超絶お下劣漫画のリツイートを同時にしていたりする。


「まさに鬼畜?!」

「しかし、これが俺なんだよなぁ」


 悪いし、欲にまみれているし、だからこそ後悔したり嫌な思い出に染まって、説教臭いことを言いはなってしまったりする。


「人間関係は克服しましょう」

「努力はしたいな」


 嘘吐きは総じて、自分や他人のため、あるいは意味なくただひたすらに嘘をつくって言うのは『事実』だと思うよ。真偽を確認できないだけで。


「迷惑ですね」

「まぁな」


 そして相手のために善意で嘘をつくこともある。


 俺は本当のことを言っているのかな。

「自分で言わないでください」

 ほんとうに、インターネットは複雑怪奇。


「でも、件の人と獺祭を一緒に飲んだのは事実なんですよね」

「社長じゃないけどな。別の職業だよ。でも言わない。言えない」


 そして、知らなくても問題のないことをスルーして、信じたいことを信じて人は論調を作っていく。


 まこと世の中嘘吐きだらけ。

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