真面目かよ?!
鴉野さん鴉野さん。投資信託って儲かりますか!? 楽しそうに通帳を覗き込む彼に鴉野は返答。
「儲かるわけない」
「ならやるな」
そもそも投資って意味わかっているのかいな。
「わかりません」
「こら?! 経済学部で再来年金融機関内定者?!」
まぁこいつの場合永遠に二十歳なんだが。
「だってそういわないと読者さんに伝わらないでしょう」
「あ~の~なぁ?!」
って知らない人に投資信託をわかりやすく説明しろと?!
「まぁ。これも何かの縁ですから宜しくお願います」
株で儲けようとすると莫大な元手が必要なんだな。もちろん安く買って高く売る原理で少額でも行けなくはないが、長期的視野に立って運用するならガッチリ大きくかって株主分配を受けるほうがいい。
「で、リスクを分散するために複数の会社の株を買うととんでもない元手になる」
「最低額で運用ですよね? せいぜい1000万円やそこいらじゃないですか」
さすがボンボン!?
「と、言うわけでみんなで少額ずつお金を出して、専門家に運用してもらう。資産価値が増えたり減ったりしたら権利を売却することもできる。これがまあ投資信託と考えていい」
「へえ。勿論知っていますからね。ぼくは」
知らないって言わなかったか?! 貴様?!
「定期預金とどう違うのですか」
「定期預金と違ってすぐにお金にできない。損することもかなりある。運用先をある程度自分で決められる。かなぁ」
定期預金であつまったお金は銀行がまとめて企業などに貸している。企業はそのお金を使って事業をして、社員に給料をはらって、社員はその給料を銀行に預けるのね。
「で、銀行はクッソ高い利息つけて人や企業に貸す」
「まぁサラ金よりましですがね」
「ぶっちゃけ損してもいいんだよ。自分で応援している銘柄だし。勿論得したほうが嬉しいけどね」
「へえ」
一応、定期預金は利息が超低いので実際のお金の価値で考えたらマイナスという考えもある。それに株とか資産運用はNISAで多少の優遇措置ついているね。それでも使いにくいんだけど。取敢えず投資している金の使い道はある程度自分で指定できるのは違うと言えるが、それよりも。
「ほら、思ったときにすぐにお金にできない。これを専門用語で『決済リスク』っていうんだけど」
「ええ。微妙に説明が違うのは受け流しましょう」
定額預金しているとほしいものがあったらつい崩して使っちゃうからね。
「手元に使える金は残さない。ちょっと手がかかるけど出せる金もあったら使っちゃうということがわかった」
「自堕落な」
呆れる彼に肩をすくめる鴉野。
「ぶっちゃけ、ミ○オンゴットで給料吹っ飛ばした経験を考えると、ホール行ったと思えばなんともない」
「……」
小遣い帳つけていると、トータル勝ちって言い訳通用しないからな。
「それより大事なことがある」
「なんですか」
鴉野はまじめな表情でつぶやく。
「眠い」
「は?」
「朝からホール並ぶのめんどう」
「おい」
「朝っぱらから長蛇の列作って毎日通うなんて耐えられない」
「ええと」
あいつら真面目かよっ?! なんで並ぶ?!
「並んだほうがいい台取れるじゃないですか」
「面倒だろ。そんな暇があったら俺は寝る」
前話でも言っているが、俺は楽して儲かるのが理想なんだよ! 印税で儲かるとか全然望まないよ! むしろ寝ていて儲かるなら何でも考えるよ?!
「そんな理由で投資信託……」
ため息をつく彼に興奮する鴉野。
「いや、絶対あいつら真面目だよ。俺毎日朝から出勤とか嫌だよ」
「……」
「ブラック企業相手に『給料出せ』って反乱起こす労働者はいるのに、『玉出せ。金出せ。もっと出せ』って脅しかける奴らはいないぞ」
「いるかもしれません」
「しかも家族の財布を抜き取って、闇金に金を借りてでも運営資金を調達してくれるんだぞ。社畜より献身的だろ」
「う? うん?! そ、そういう考えもあるのか……なぁ?!」
「俺、ヘタレだからゆっこさん(※母)敵に回して家の金抜いたりしないぞ」
「ゆっこさんに喧嘩うるのはどうかと思いますが」
「社畜はなんだかんだいって家族サービスするけど、あいつら全収入パチンコに捧げてくれるんだぞ」
「たまには勝ちますよ! そのまま使いますけど」
「俺は不真面目だからな。ホールに通うぐらいなら寝ておく」
「よくわかりました。それで投資信託なんですね」
「使う先も判るからね。日本の土地関連に投資したり、特定銘柄の行方が気になるとニュースを見るのも楽しくなるだろ」
「かも」
「トータル勝ちで月1000円でも入れば幸せだ」
「はは」
「将来的には寝ていても稼げる奴を目指す!」
「がんばってください」
拳を握る鴉野。呆れる彼。
真面目って、翻したら盲目なのかもしれない。
あなたは真面目ですか。




