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無駄遣いというべきか倹約というべきか

「楽して寝て起きてぼーっとして生きていけるなら幸せだ」


 鴉野の普段思うことである。


 古今東西、金持ちでも貧乏人でもできることがある。仕事をサボることと寝ることは誰でもできる。実際にやると身の破滅になるかどうかは違うが。

 笑い話で『貧乏だが悠悠自適と暮らしているカフェのオーナーにもっと事業を拡大して金持ちになって老後は悠悠自適と暮らせ』と説くという話がある。


「鴉野さん。ぼくは小説をバリバリ書いて印税生活したいです」


 うん? それ結構大変だぞ。

 おい。仮想人格。分裂してくれ。某知り合いの発言をそのまま使うわけにはいかん。


「ちょ?! そんな特殊能力ないですから!? どんだけ僕をチートキャラにするつもりなんですか?!」


 ち。使えない奴?! 他人の代弁なんて得意だろ!? 増えるくらいやれ!


「久しぶりに更新したと思ったら?! 鴉野さんの言うことのほうが無茶なんです!! 物理法則無視していますから!」


 性別変えたりロケーションチェンジと称して時代も空間も無視。概念世界にまで飛ぶのは物理法則無視していないのか。


「あれは『貸自転車屋』の時の話でしょう?!」


 その『はなみずき』曰く、『私が何人になっても、国を思い、愛する人を思うならば私は私だ』だぞ。本編では実際そうやって一度散華するし。


「関係なし?! ま、まぁあの子のことは良いでしょう?!」


 ああ。ロリコンとしては『あの姿』のほうが良いんだよな。盲点だった。


「マサオさんと仲良くもげてろ!」


 嫉妬か。醜いな。


(※詳細は拙作『ファンタジー世界で貸し自転車屋さんはじめますた』を見てください)



 どこまで話したっけな。印税ってのがあるんだ。詳しい契約は個々の会社で変わるが、刷った単価の一部が印税として作家の収入になる。

「ふぉおお?!! ぼくも三年で一億稼ぎたい!」

 それってあの。いや言うまい。

「いちおくさんぜんまんも儲けて口座に入れてたままで税務署に叱られたってうらやましいです」

「ちゃんとそのあと支払っているぞ」

 ぶっちゃけ企業で3000万の申告漏れなんてよくある。税理士雇っていてもある。別の知り合いに言わせれば見せしめ的なものが大きいらしい。

 普通の企業ならやっている程度のことを誰かがマスコミ沙汰にしたんだろうっていう。


「あれだ。ぶっちゃけ税務署の腹次第らしい」

「へぇ」


 ただ、それを払えば普通大事にはならないんだけどね。

「払ったんでしょ」

「だよ」

 でも『あそこ』の某偉い人、儲からない本は書かないといって国粋主義な本でもなんでも書く人だしなぁ。


「本○大賞が別の権威になっちゃいましたよね」

「くっそつまらなくなったよな」


 なろうもそのうち権威化するんじゃね。文壇が伝統とか礼儀とかで権威。本屋大賞が商業主義を基にする権威なら。


「なろうはどうします?」

「その場その場で読者の反応を見乍ら、プロットをもとにその日の話を作るから、噺家や浄瑠璃の人間国宝を連れてきて落語形式で読んでいだたこうかな。さすがに文壇でも人間国宝は少ないし、落語もなかなか客入らないしで双方ウィンウィン」


「ぶはは! それは痛快です!!」


 腹を抱えて笑う彼に冷たくほくそ笑む鴉野。


「冗談で言ってると思う?」


「え?」

「え?」


 まぁこの話はおいおいとするとして印税だったね。


「ラノベ作家は毎年100名以上新人が出る」


「めでたいですね」

「企画書が通らなければ次の本が出せないのはわかるよな」


「です……ん?」

「印税が単価30円とする。一万部で30万円になるな」


「すくねえ?!」


 実際は10%っていうけどね。


「それでも文庫本で60万円じゃないですか」


 なんでこんな話なのかというと契約の話があるんだよ。刷った分だけ作家が刷り代払う(名目上は共同出版)。売れた分だけ印税を払う。売れた分だけ印税を払うが、初版に限り4割以上のお金が貰えるなどなど。


「四割?! うひょー?!」

「初版ってことに注目な」


 そして鴉野は息を吸って吐きだすようにつぶやく。


「で、300万円稼いだとする」

「ええ! ひゃっは~! 三百万だ! どうしようかな?!」


 てか、お前、確か縁故で某金融機関に内定決まってなかったっけ?


「プラス三百万円ですよ!?」

「三百万円分徹夜するんだな。がんばれ」


「えっと」

「原稿が上がらず徹夜明けに飲みに行ったり、結構大変だぞ。縁故で入社ならそうそう首切られないと思うが」


「あ、あはは」

「あと、確定申告とか、税理士雇ったりすることもある」


「税理士?」


 まぁ儲けたお金を一切使わずに口座に入れていると叱られるから。

「ぶっちゃけ、経費としてガンガン女遊びに金使って、着道楽して、車かって、ちゃんと経費と収入を申告していればいいんだが」


「最高ですね!」


 鴉野は頭を抱える。


「使わずに口座に貯金だけしていました。倹約といえばいいが、忙しくなっただけといわね?」


「あ」


 お金は活かすものだと思うよ。ワープアの俺が言うのもアレだけどね。


「鴉野さんのジム代って8000円くらいでしたっけ」

「15万円の手取りで考えたら正直痛いな!」


「実家暮らしですよね。就職してから失職しても欠かさずゆっこさん(※母)に毎月五万円渡しているそうですけど」

「いつも死の危険に襲われるから保険も入ってるな」


「かっつかつですね!」


 月曜に銀行に残金すべて入れて五千円出す。金曜に残金を入れて二万円出す。これを繰り返しているよ。


「これなら自己評価しやすいし、崩すときに小銭がないから思いとどまる」


「せこい。小口形式でお金を管理していらっしゃるのですね」

「地味に貯まる。あと小遣い帖もきっちりつけている」


「意外とマメですね」

「投資信託もやってるぞ」


「涙ぐましい資産運用」


 信託は損もするけど、応援している銘柄だからね。まだ納得できる。


「正直、小説のプロット書く暇があったら人生のプロット書かないと俺が死ぬ」


「鴉野さん……」


 お金は活かすものだから、週末はちゃんと使えるときは使うけど、使う必要がないならつかわない。


「あーあ! うどん餃子おいしそうだったなぁ!」


「ははは! 一万円しかないときのお金を使う時の忌避感は異常ですよね!!」


 本日は高槻ジャズストリートの日。


 ちょうどいい曇り空の下、男たちは程よいジャズの音色とともに歩く。その先にあるのは希望か絶望か。


「絶望はいらんのじゃああっ?! 毎年毎年俺を殺す気か運命の神めえぇえ!!」

「鴉野さん。誰も迷惑受けないのですからあきらめてください」

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