表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/285

コンサートをタダで見る方法

『ギャンブルをするより、その胴元になったほうが儲かる』


 これはある種の真理と言える。主催というのはとにかく手間暇かかるのだ。まして荒くれどもの集う鉄火場を管理する場合どれだけ危険かわかったものではない。


 出会いをするなら合コン幹事。サークル代表。それができなければ素直に習い事をするのをお勧めする。

 夜中の茶道教室だとコネを作りたい金持ち男性と手習いをしたい若い看護師などが集まりやすい。昼間の茶道教室だと有閑マダムばかりになるので要注意だ。


 そんなことはまあどうでもいいのだ。


 鴉野は短時間の間、コンサート会場の設置設営運営のスタッフをやっていた時期がある。時給はそこそこいいし、丸一日ガッソリ入れるのは利点だ。


 大きなクラブなら部費の不足を稼ぐべく男女ともに参加していることが多い。一応、部費の不足に悩むサークルやクラブの収入源としては引越し屋などもあるのだが、女性だと負担が大きく、また性的に危険な局面が多いのでダメらしく、知り合いの馬術部部長が部費だけではやっていけないと頭を抱えていた。

 なんせ馬は文字通り『馬みたいに食う』。馬術部のメンバーというのは基本坊ちゃん嬢ちゃんなので金銭トラブルに疎い。しかし部活メンバーでエサ代を捻出せねば馬がやばい。まこと馬の世話というものは大変である。



 正直人がいくらいても足りないコンサート会場も女性の収入源として考えると性的な危険は大概だと思うのだが、まだ人の目が多いのと女性でも負担が少ない仕事が多いのでマシである。とはいえやっぱり肉体労働である。具体的に述べると徹夜がある。

 でも、ケータリング(食事)がついていたりするので結構ありがたい。なにより職務の合間に自分たちが手掛けたコンサートのイベントが成功している様子を垣間見たり、その盛り上がりを控室で聞くことができるのは嬉しいものだ。給料もそこそこいいのが大変宜しい。だが相応に困ったこともあるわけである。



 控室のガードマンをやるときはスーツ着用である。

 夏場は暑くて辛い。しかし耐えなければならない。眠気に。


 そう。眠いのである。普通にしていればファンが来ることはない。


 でも来るときは来る。


 『何者も通すな』


 鴉野の愚直さはここで発揮された。メンバーにそっくりな格好にコスプレしたファンが関係者を名乗って侵入を図ったのだが、鴉野は彼らを通さなかったのである。その時は結果的に褒められたが、本当にメンバーだったらと思うと冷や汗をかいた一件である。



 鴉野は某超有名なコンサート会場のバイトを勝ち取ったことがある。

『今日はどこに行くのですか』

 基本、どんな会場か当日まで知らされない。

「うむ。○○県にいく」

「遠いっすね」


「『M』のコンサートの設営だ」

「うっひょーー!?!」


「ケータリングもあるぞ」

「うおおお」


 ついてみると憔悴したメンバーが出迎えてくれた。なんでも三日がかりの作業であるらしい。とんでもない原っぱにて肉体労働にいそしむ男女たち。


「『M』は?」


 期待に燃える鴉野たちに前任担当者たちは告げた。


「来月来るよ」


 ガチ肉体労働であった。



 さて。鴉野はこのバイトに『○日は必ず帰してくれ』と告げていたのだがそうならないものである。


「今日は徹夜な」


 鴉野たちは盛り上がるコンサート会場の片づけのため待機していた。


「おい。俺朝イチで仕事あるんだが」

「関係ない」


 キレた鴉野は普通に事情を同じアルバイト仲間の偉い人に言って逃亡した。しばらくの間鴉野の電話が鳴り響いていたが普通に仕事中なので無視せざるを得なかった。


 その後、給料の振り込みがなかったことを述べて今回は終わりとしたい。


 主催というものは大変なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ