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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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これがセレブティ

 これは鴉野が某外国人パーティの主催側に参加すれば男女の出会いに関する経費を大幅に減らせることを学ぶ少し前の話である。


 なんか妙に条件のいい婚活パーティを見つけた。


 参加費3000円で良いらしく、女性側はかなり若めの設定。寝ぼけていた鴉野はさくっとそのパーティに登録した。


 あとで男性側参加条件を見てぶっ飛んだ。


『年収500万円以上』


 すみません。ワーキングプアです。


 まぁ駐輪場の売り上げというものは月50万を超えるので嘘ではないといえば嘘ではないが、それは会社の収益であって鴉野の収益ではない。ちなみに余談だが大赤字という北海道の酪農家は収入は一千万以上あったりする。支出が洒落になっていないだけで。


 しかし鴉野はこう思いなおすことにした。

『年収500万円以上の金持ち男と、それに群がる若い娘なら相応に豪華なパーティだろう』

 具体的に述べると婚活パーティというものは参加費5000円で呑み放題のバイキングなどがあったりするのだ。結構コストパフォーマンスは高い。食い放題の焼き肉に女性がついてくると思えば悪くない。

 このあたり焼き肉程度しか想像できない鴉野もアレだが、金持ち男性とそれに群がる女性のパーティなら相応に豪華な食べ物が出るはずだ。


 ああ。鴉野はもっと条件を見るべきだったのである。



 鴉野は他の街には詳しくはない。


 知り合いと寿司を食いに行く際、雨が降って反応が遅れているスマートフォンの地図をうのみにして三分でつくいつもの寿司屋を間違え、十五分かけてはるか遠くの公園までダッシュする程度には詳しくない。

 余裕をもって出たはずの鴉野はまたも道に迷っていた。


 そして迷い迷ってやっと入った会場はなかなか豪華なオフィス風。


 会議室に駆けこむ鴉野。出迎える男女。息せきかけてきた鴉野の喉にはウーロン茶が心地よい。


 ん? 料理は?!


 会議室に集った男女は制限時間以内に男性が自己紹介をしていろいろフリートークして交代するというルールで動いていく。


 あの。俺。なんも食ってないのですけど。普通は料理。出ますよね。なんでウーロン茶?!


『ソフトドリンク』=『ウーロン茶呑み放題』


 日 本 人 よ 。

 こ れ が セ レ ブ テ ィ だ 。


 箱(会議室)。ウーロン茶。人件費。これらのショボイ経費を男女十五名ずつの計三〇名が負担する。女性五千円。男性三千円。主催丸儲け。こ、こ、これは二度と男女ともに行きたくない集いではないだろうか。


 男性側としては俺金持ちアピールがしたいはずだ。というか、甲斐性を見せつける余地が必要である。具体的に言うと驕ってサービスして食い物をよそったり気遣い上手な俺アピールのチャンスである。ウーロン茶呑み放題だけどな!


 女性側としては金持ちにあやかりたいはずなのだが。


 看護師。教師。百歩譲って保育士。



 解説しよう。月三〇万円の月収でも、年三回ボーナスがまともに出れば一回九十万円が三回入ることは前回述べた。


 意味わからん? 結論だけ述べる。


『 女 性 の ほ う が 男 性 よ り 年 収 が 多 い 』


 男性の身なりを見ると、どう見ても金持ちには見えない。もし金持ちならよっぽど身なりを気にしない研究職か何かなのだろう。


 婚活パーティが終わり、カップリングカードをもらえず肩を落としてドナドナして帰る男女の群れの中に鴉野もまたいた。


『寿司でも一人で食ってたほうがマシだ』


 まぁ。この寿司を食ったことで某偉い人と寿司を食うことになるなんて当時の鴉野は想像もつかなかったのだが。感謝すべきは出かけ際に安くて旨い店があると教えてくれた母親である。ちなみにその偉い人は某イベントで隣の席に普通に座っていて、関西の人らしいので、かの旨い寿司屋を紹介したところ、『じゃ連れて行って』『おk』という軽いノリで一緒に食うことが決まった。その人物が鴉野からして、実は卒倒するくらいすごい人だと判明したのは後でグーグル検索してからのことである。


 セレブティは実は隣にいたりする。人間。案外足元の宝物に気付かないものらしい。

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