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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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鴉野さん! 大変です! 金庫の鍵が壊れています!

 今回はフェイクが多い話である。さすがにそうせざるを得ないからだ。『かなり昔の話ということで』納得していただきたい。


 鴉野が出勤してくるとアルバイトの人が『ちょうど良いところに来た!』と声をかけてきたことから物事は始まる。


「お客様に渡す約款を使い切りました」


 なぜそれを放置した?!

 最悪一枚あったらコピーできるのになぜそれを使う。


 曰く、あと一五分で鴉野が来るので相談すればいいと思ったからだそうである。マッハで店長に電話するとあとで店長が来てくれたがそれだっていろいろあるわけで。


『もしもし?! ○○店の鴉野です! ええ。△△店長! 支給約款のコピーをファックスしてください!』



 その日は大雨の癖にお客さんがひっきりなしに来る掻きいれ時で、当然ながら約款はいくらあっても足りない。店長がダッシュで来なければどうなっていたかわからない。


 来た! 店長きた! メイン店長きた! これでかつる!!


 思わずブロンドさんネタが出てしまう勢いでカカカkと店長が約款の補給をして帰っていった。


 で。冒頭のタイトルに戻る。


 金庫の鍵が壊れている。


 おい。なぜそれを先に言わない。

 というか、店長に報告しない。


「どうしましょう。鍵を閉められませんよ」


 あばば。


 取敢えずこういう場合。真っ先に始まるのは無益な争い(犯人捜し)である。まこと、人間というものは責任回避が大好きである。


「鴉野さんじゃないですよね? 金曜日いましたよね?!」

「お前もいただろう」


「というか社員の○○さんもいましたね」

「三人いて誰かがカギを破壊したら、さすがに残りの二人が気づくだろう」


「ぽとっと落として慌てて探そうとして逆に踏んでしまって折っ」

「その可能性は濃厚だな」


 コンタクトじゃないがそういう形だし。


「○○さんが黙っている件は?」

「却下。あの人なら顔に出るよ。正直者だもん」


「てか、あの日バイト代をキミに出してだろ○○さん。その時気づかないほうがおかしい」

「そうですね。じゃ○○さんじゃないですね」


 結論。金曜日ではない。つまり壊れたのは土曜日である。

 鍵はセロテープで補修してあり、当たり前だが金庫に入れて鍵を開けることはできないわけで。


「土曜って誰の担当だったっけ」


 鴉野の言葉に誰かが答える。


「てんち……」


 OK?! 黙れ?! それ以上言うな?! これ以上追求したら恐ろしい反撃が待っている。男たちは問題解決を図るため、思案するのだが。


「ア○ンアルファで直そう」


 ようは鍵を直せば金庫を閉められるのである。ぐるぐるまきにセロテープで補修しているので当たり前だが金庫を閉めることはできない。


 金庫の鍵はプラスティック製であり、もし店長が予備を持っていればそれをつか……あばば。


「だからそれ以上考えるなといっておろうが?!」

「あははっ?! 鴉野さんごめんなさい~!」


 店長はとても優しくて従業員想いだが逆ギレするとかなり怖い。一応、当時鴉野も社員であるため、アルバイトが叱られる局面は避けたい。店長に叱られるのは普段偉そうにしている社員だけで良いはずだ。


「取敢えず、店長に連絡だ」


 鴉野は先ほど来ていただいた店長にもう一度電話することにした。


「店長。何度も申し訳ありません。鍵が壊れているようです」

「押し込んだら開くでしょう」


 隣で首を振るアルバイト。勿論開かない。つまり。


「というわけで、三人も男がいるので、瞬間接着剤買ってきて補修したいのですが」

「わかった。でも万一剥離したら困るからセロテープ一枚は張っておいてね」


 なぜこの場に三人も店員がいるのかというツッコミはなかった。この中の約一名は一時間前に出社して弁当を食べるのがわかっているからだ。ちなみに鴉野ではない。


「と、いうわけで許可が下りたので直す」


 まずサンドペーパーで切断面を磨く。両側にちょんちょんと数滴たらして生乾きでくっつけてしっかり面を合わせる。

 渇いたらサンドペーパーをあてて削れた粉を割れ目に入れてまた瞬間接着剤を垂らしてまたサンドペーパーをあてて割れ目を消して丁寧にテープをはって曲がったところにあたるセロテープ部分はちゃんとハサミで切って。


 繰り返すが失敗したら店長のおしかりを受ける仕事はアルバイトに任せてはいけない。


「な、な、なおったのですか鴉野さん」


 なおったよ?! ばっちりだよ?! こういうのは得意だよ?! しかしアルバイトの人は不安そうであった。金庫に差し込んだら折れるのではと危惧しているのである。


「鴉野さん。お願いです。金庫を閉めるために残業してください!」

「それなら二度出社するわあああ?!」


 なお、この鍵は現役である。らしい。


 らしいというのは鴉野にとってもう関知できない話だからである。


 いろいろツッコミどころが多いが、いろんな意味で『死に』かける一件だったことは言うまでもない。

「鴉野君。シュレッダーが壊れているよ?!」


勝手に開く金庫に躓いて転ぶと、怪我するから大変とバイト氏に置き石を提案したら翌朝大事になっていたという落ち。


 どっちにせよ鴉野は叱られる運命だった。

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