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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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イチジクカレーでブラックジャックによろしく。幻のスノボツアー

『なんか靴下万引きしてしまって叱られている夢を見た』


 母曰く、『初めてなんだろう。相手に謝ってきなさい』『ごめんなさい』って会話していたらしい。あくまで夢の話である。

「案外満たされていないんじゃね? おかん。金使って山登ってるくせに人間関係に不満があるのか?」

「わかんない」


「叱るのは相手のため、怒るのは自分の発散のためだけど、怒られるって大事だぞ。理不尽に感じるけれど『自分で考えなくていい』んだから楽だ。年を取ると人間贅沢だから叱られたくなるもんだ。おかん叱られたいのか」


 母はしばらく考えていた模様だが休みに似たりである。そして今回は鴉野の母の話である。


 彼女はイチジクが好きである。

 イチジクをカレーに入れると美味しい。甘口から激辛になる。これは最近できたラーメン屋でサブメニューとして出てきた。深夜にしかやっていない変なラーメン屋だが美味しい。

 イチジクにカレーじゃないが世の中斜め上な発想が良いことをもたらす例は少なからずあるのだが、結局一部の例でしかなく今回は斜め上な発想が斜め上に発揮された話になる。


 鴉野はスノーボードツアーに参加の手続きをした。

 みんなでスノボを楽しもう! ある種の婚活企画でもある。

 しかし、鴉野がウキウキと準備を整え、有給を取ったと思ったら。


『参加者不足により取りやめます』


 運営。気張れ。

 もう有給取っちゃったよ!? ばっきゃろー?!


 しかし、問題は後に発覚する。


 当然返金手続きがあるのだが自動返信メールによるものであり、鴉野は取りやめのメールと請求のメールをほぼ同時にもらった。当然払い込んでいない。


 数週間後。

『返金したいのですが鴉野さんにいくらメールしても相手してくれません』


 運営から母に電話がかかってきた。母はうかつにも口座を教えてしまったらしい。何故教える?!

 母は古い人間であり、当時では同じ人間でも複数の銀行・郵便口座を持つことができた。大昔はon-lineが無いので支店ごとにお金を管理し、支店が違えば口座が違ったので出先では引き出しできず、同じ支店でも口座を新たに作れた。古い人間は『この口座は光熱費』といった感じでお金を運用していた。つまり、鴉野家には鴉野名義の母管理の口座がある。


「いや、だから振り込んでいないからそれ運営のミス」

「でも受け取ったって言ってたよ」


「だから、普通に前後して相手が間違えているんだろう」


 母いうところ、払っていないなんて言わなくていいとのことだが言うべきである。払っているのに払っていない人間が必ずいるということになるのだから。

 取敢えず先方に『まったく払っていません。自動返信メールを使っているから前後しているはずです。払っているのに払っていない人が最低一人はいるはずですのでそちらを調べてください』と鴉野は電話して解決したかにみえた。



 翌朝。

 鴉野は母に呼び出された。


「銀行のヒトが言うには勝手に膨大な額を振り込んで膨大な利息を請求される恐れがあるから解約しておいたほうがいいって。だからついてきて」


 お い 。


 繰り返す。

 口座の名義人は鴉野になっている。

 鴉野は夕方から仕事である。

「ネットって怖いね」

「おかんの考え過ぎのほうが怖いわっ?!」


 俺の睡眠時間を返せッ!??


 りそな銀行に行くと著作権フリー宣言された『ブラックジャックによろしく』の改編漫画『投資信託によろしく』が置いてあった。りそな銀行さん……いや言うまい。


 繰り返すが。

 斜め上な発想が良いことをもたらす例は少なからずある。

 しかし一部の例でしかなく斜め上な発想は斜め上に発揮されることのほうが多い。


『やっぱり間違えていました』


 運営よ。

 俺の睡眠時間と口座振替の手間暇と、おかんの子守代と有給返せ!!


 オトナは贅沢だ。

 叱る人たち、理不尽に怒る人たちが逝ってしまってからそれを求めてしまうのだから。

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