表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

144/285

特攻 速攻 薄幸

 鴉野が住む町は田舎町なので昭和の風景というものが幼少時には多少は残っており、バキュームカーが数年前までは廻っていた。巡回ご苦労様です。


 かの車両は当然個々の家を巡るわけだが、蓋を閉め忘れると外の空気と匂いが混合し、激臭騒ぎになることはまれにあった。

 今の世の中はゴミ収集車は特定位置にあるゴミを収集するが、鴉野の幼少時には個人宅にて回収をしていた覚えがある。石の板でできたゴミ箱があり、前の部分の木の戸を引き上げるとゴミが溢れる。これを掬って処分する。今は不衛生だし、ゴミ袋があるのでやらないが。


 余談だが納豆を買うと藁の中にビニール袋があってそれに包まれていた。意味がないと思う。


 そんな古い古い光景が残る田舎町。

 当時の鴉野は三輪車で遊んでいた。


 この時代、個々の家の前には大きな石が埋められている。

 もっとも洗面器に入って遊べる当時の鴉野には立派な『岩』であるが。


 どうしてこんなものが道路を占有しているのか。この街の都市計画の上では道路は『存在しない』ことになっており、個々の家の前の道は皆『その人の土地』扱いだった。つまり私道。


 そこを全力ダッシュしていたら光の速さで走った経験があるのだが今回は関係ない。話としても短いし。


 三輪車で遊ぶ鴉野はぴこぴことそれを動かして学校に向かう。


 学校の出入り口には当時は気の利いたコンクリートで覆われた坂道がある。そこに登って三輪車で滑り落ちるという実にスリル満点な遊びをするためである。今なら全力ダッシュで親御さんが止めに来る。


 しかしこの時代である。

 時代が下り、鴉野が小学校に進級し、大きな車の玩具を弟が買ってもらったのだがこの車の玩具の末路は小学校の校庭にて児童たちが坂を下りて遊ぶためにフル活用され外装がごっそりなくなってもなお遊びに使われていた。

 普通に窃盗だが、この時代ではまかり通る。誰が持ち出したかわからんし、鴉野がえっちらほっちら持って帰っても持ち出されていた。

 よくもわるくも人々はおおらかだったといえる。普通に犯罪だ。


 まぁこれが校庭の山なら障害物もないから構いはしない。

 だがこの時代の道路は私道であり、舗装などされているわけがないのだ。


 勢い余って小さな石に躓けばブレーキもない三輪車などくるんくるんとスーパージャンプする。その先に都合よく岩があっても可笑しくも何ともない。


『なんでこんなところに岩を置いているの!』


 幼少時の鴉野の抗議は今の世の中なら親が言うべきところである。

 当時の意図としては自動車の通行を妨げるためにおいていた。


 カーブ時に壁を壊されないためともいう。


 豪快にすっとんだ三輪車は両脚ブレーキもものともせず見事に主人を回転地獄車にかけ、岩とスーパーコンビネーションをかまして撃沈させた。

 鴉野は豪快に回転し、岩の一撃を見事に額の生え際にくらい、頸椎部分も激しいショックを受けて昏倒、泣き出した。


『テキサース!!』


 お前は何歳だ。鴉野よ。

 侍魂ネタなんてわからないから普通に。

 具体的にいえばスタン・ハンセンという昔のレスラーがロープ際で必殺のウエスタンラリアートを放つと直進してきたはずの相手選手は逆回転して後頭部を打つどころかさらに回転して胴体から頭までをマットにぶつける。


 おわかりだろうか。説明した鴉野でも意味不明であるが事実である。


 プロレスならば必殺技だが、当時の鴉野は三歳ほどの体重の軽い子供だったので逆に即死を避けた。

 ここで死んでいたらエコだったかもしれないが、当時の痛すぎて死にたいという鴉野の願いは神に届くことなど無かったのである。



 今の世の中にはペダルがなく、自らの足で走る代わりにオトナが追いつくのも大変な速度をだす二輪車が二歳から五歳児の足として活躍している。ブレーキが無いのは頭に重心が大きくなる幼児にとって急ブレーキは逆にすっころぶ要因になるからと推察されるが、それだって限度がある。


 光速で移動する幼児に遭遇したいならさておき、皆様はくれぐれも周囲の環境には気を付けてもらいたい。鴉野が光の速さで走った不思議な体験談については、本文に記すには短すぎる話なので今回は避けることにする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ