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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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アルバイトにいこう

 鴉野は道に迷っていた。方向音痴がゆうメイトに登録してはいけない。ちなみにこの呼称は2007年廃止だがいまだ通称として残っている。


 鴉野が帰ってこないのは山奥に配置されたからでもある。

 山奥にこれでもかとマンション。さらにスーパー。僻地なのに無駄に人がいる。そんなトンデモなところに好き好んで配置されるヤツはいない。


 まして当時の鴉野は今より体重があり、今より虚弱である。

 当然、自転車でこんなところを上がり下がりできない。


 他のアルバイトの子なら一度郵便局に帰還して昼休みを楽しめるが鴉野にとってそれは不可能である。二度山を登る体力が無いからだ。

 帰投の際は本屋にたちよって新刊をあさるが、鴉野のせいで毎回捜索隊が出ていたらしい。全然役に立っていない。


 とにもかくにもこれが鴉野の初めての就業経験になる。


 実態は学生バイトだが。担任教諭のH氏は社会見学のためにアルバイトに行きたいといった鴉野に対して『きかなかったことにする』と言ってくれた。

 基本的に我が母校は原則バイト禁止で家庭の事情が無い限り許可はされない。


『家庭の事情です』と言い張る鴉野にはホトホト呆れたのかもしれない。


 郵便局のアルバイトは男は外回り、女は内部作業が主だ。

 可愛い女の子はもれなく郵便局員からのナンパもついてくる。永久就職口も見つかって結構なことである。郵便局名物自爆営業の義務も我々にはないし。

 そんなこんなで手に入れた金は貯金に回した。親にも渡したかも。


 念のために親に聞いてみた。

『子供が頑張って稼いだ最初のアルバイト代を搾取するようなそんなひどいことができるわけがない』


 就職時は初任給を一部だけ受け取ってくれたが、その辺は配慮してくれたらしい。なお、100円10円を数か月単位でコツコツ貯めてラノベを買っていた鴉野にとって数万円は夢にも思わぬ大金であり、ましてや十数万円になるとである。全額親に渡しかけて気付いたが社会人となると出費がかさむ。よくできている。一気に金銭感覚が破たんしかねない事態に陥りつつ、よくわからないから貯金とかそういう世界だった。

 この時代になってから子供のころクリアできなかったテレビゲームもコツコツクリアしていたり。


 お金をもらうということはある種の喜びである。

 苦しいこともある。悲しいこともある。辛いこともある。

 泣きたいこともあるし嫌な事だって数えきれない。


 寒さに手を振りまわし(こするなんてもう間に合わない)、道に迷って泣きながら帰り、自転車がパンクして押して帰る。

 郵便はがきは重いし、人見知りするときに書留を配るのは嫌なことだ。

それでも、明日は誰かの役に立ちたいと思えるかもしれない。実際は足を引っ張っていてもだ。

 己の自己満足で迷惑をかけて金だけさらっていくのは如何なものかだが最初は皆そうだと思う。

 やがて自分の失敗を忘れて『俺の若いころは』と若い人にしたり顔をする姿を草葉の陰で先輩方は笑っているものである。

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