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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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200回記念 にせ柳川鍋と久さん(仮名)

 寒い冬。

 鍋の美味しい時期になった。


 鍋と言えば鴉野の父、久さん(仮名)である。


 出汁たっぷりにキムチとその元を投入キムチ鍋。


 なんでもどんな鍋でも翌朝にはキムチ鍋にされて母がキレていた。

 もっとキレて良い。


 ちなみにキムチ鍋は久さんのほうが上手だった。

 母は頑なに父の料理を褒めなかったが。


 曰く。


『一度でも美味しいと言ったらもう努力しない』


 結果的に母は父の料理を美味しいということなく父は旅立った。


 そして柳川鍋である。


 柳川鍋というモノは生きたドジョウをそのまま茹でて豆腐に潜り込んでもがき苦しんだ後に豆腐に潜ったドジョウを卵とじにして喰うのだが、昨今では残酷ということでやらない。というかドジョウがいない。


 昔は田んぼや沼にいたらしいが、今ではとんと見なくなった。


 鴉野家では柳川鍋はドジョウを使わない。豚のバラ肉や牛肉を使う。たまに鶏肉も用いる。


 出汁いっぱい。みりんをきかせて卵とじ。ごぼうをたくさん入れてピーマン。たまに糸こんにゃくも投入される。簡単で美味い。これも久さんが得意で好きだ。


 会社の人にもっていったらこれが大好評。


 あまりにも毎回持ち出すのでこれまた母、ゆっこさん(仮名)がキレた。


 毎回キレている母だが、本人は自称穏やかな性格だそうだ。絶対嘘である。


 当時は珍しかったセラミック土鍋大活躍である。

 とにかく鍋。鍋。ラーメン。餅。鍋は冬の王者と言っていい。



 どうしてこんな話になったか。


 会社の先輩に鴉野と同名のアルバイトのかたがいらっしゃる。ずっとご年輩だが。


「マムシなんて食べたことが無い。ウナギやドジョウは好きだけど」


 マムシ?! 読者さんは目をむくだろうが、『夜明けまで恋して』を読んだ方ならわかるかもしれない。


 久さんはマムシを喰ったことがある。

 もともと島の野生児なので今更といえば今更だが、普通に彼は蛇を食べることができたらしい。


 買取もやっている業者がいたとかいなかったとかおぼろげだが。


 曰く。


『会社のみんなと釣りに行ったらマムシが出てきて、棒で頭を殴り倒して歯に棒切れ二つ突っ込んでひっさいて、肉はホイル焼き、余った生き血と皮はマムシ酒にした』


 ワイルドだろぅ~? と言いたいが自分の父である。


『帰りの車の中は全員夜中なのにチンコビンビンのギンギンで三日くらい眠れなかった』


 当時子供だった鴉野に言ってもわからん。


 ネットゲーム、ファイナルファンタジーXIには騎士の能力として『インビンシブル』なる能力がある。飛び道具以外の物理攻撃を無力化する切り札だ。


 使えばまさに無敵。もちろんヘイト(敵の注目)もビンビン絞る。やかましいわ。


 効果がきれたら萎れて沈む。何がと聞くな。


 もう車内と社内でビンビンちびる。

 ナニを我慢してちびるとか聞くな。削除される。


 夜は女房とギンギンしっぽり。お幸せに。


ゆっこさん:「私は義務は果たした。空手で発散してきなさい」


 鬼か。母よ。


 勢い余った父は空手十段を習得した。たぶんマムシは関係ないが。

 まさにインビンシブルである。誰も勝てない。


 話によると人間は本気を出した猫に負ける強さらしいが、彼は普通に犬を撲殺している。

 噛まれた手を逆に押し込んで押し付けてぼこぼこ殴って殺してしまったそうだ。


 繰り返すようで恐縮だが婚約者の犬である。寮長さんの犬でもある。

 母と結婚したのはここも一因あったんじゃないかと邪推してしまう。


 犬に勝つのみならずマムシも喰ってしまう父。


 しかし『熊殺し』『牛殺し』と違ってなんかショボク感じるのはきっと気のせいだ。


 大山倍達もウィリー・ウィリアムスも牛や熊を殺していない。

 人間が素手で勝てる最強の生き物は犬猫が限界だろう。たぶん。



 さて。鴉野の先輩の話に戻る。


「でも、マムシの生血は効くかもなぁ。マムシエキス配合どころか純正だし」


 先輩はのんびりとそうおっしゃっていた。


 これ以上元気になってどうするのですか。孫がいらっしゃる御歳で。


 関係ないがマムシを柳川鍋にしてみたい。たぶん噛まれると思うが。

 きっと空手十段よりハイパワーになると思う。



「鴉野君。仙人一本歯下駄貸して」

「いいですけど怪我しないでくださいよ」


 別のアルバイトの人はまだ強さを求めていた。

 そのうち彼の息子はハブやマムシをも倒すに違いない。

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