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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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鴉野が警察に捕まった時の話

 鴉野が警察に捕まった時の話を徒然とする。


 寒い日の深夜だったかもしれないが、その日は虫の知らせか何かでなぜか目が覚めた。階下でこそこそ話す両親曰く『祖母がもうそろそろ危篤で今夜が山だ』ということ。鴉野、弟などには知らせず、寝かせておこうということになっていた。

 鴉野は弟を叩き起こし、足が無いのでチャリで祖母のいる病院まで向かうことにした。


 鴉野には当然祖母が二人いるわけだが、父方の祖母と母方の祖母でどっちが好きかと言われたら父方の祖母と答える慣習を二歳前後には身につけていたと思う。どちらかというと母方の祖母のほうがかかわりが深い分好きなのだが、父方に配慮してしまうさかしいガキだったのである。


 そのくせ10000円一枚と10円玉20枚を選べと言われたら迷いなく十円玉と答えたが。


 金額より数が多いほうが好きだったらしい。


 母方の祖母はその都度笑っていたと思うが内心は傷ついていたであろう。

 当時の鴉野はその場その場で主張を変えるほど器用なタイプではなかった。父方の祖母にはこの嘘は優しく、母方の祖母には申し訳なかったと思う。


 父方の祖母は晩年、島に暮らすことができなくなって父である久さん(仮名)を頼って我が家に一時住んでいた。新世紀エヴァンゲリオンという昔話題になったアニメの一挙放送をやると言われて『じゃ見てみよう』と夜を明かした際、それができる別室のテレビがたまたま祖母の部屋だったので印象に残っている。

 正直、アニメなんていい歳こいてからだったので面白いとはさほど思わなかったが、父方の祖母の記憶にはつながっている。

 そんな祖母の入院先はたまたま会社の最寄だったのでこまめに通うことができた。どうせ鴉野はボッチだ。祖母の顔だけ見に行っても問題ない。当時の介護は母がやっていたのでその苦しみは解らなかったが。


 さて、話を元に戻す。祖母が危篤だ。父母は先に向かう。

 鴉野は某宗教団体の先輩から『チャリをやるから家に遊びに来い』と言われて行ってみたら勧誘で、『宗教に入るぐらいなら10キロでも20キロでも歩いて帰る』といって本当にチャリで帰ってきたときの戦利品の偽ロードバイク。『通勤自転車二号君』(仮称)に弟を乗せると全速力で父母姉を追って駆け出した。


 深夜の田舎の国道を疾走するチャリ。


 可也必死で走っている鴉野兄弟となぜか後方からファンファンとパトカー。

『深夜徘徊する未成年がチャリを盗んで疾走している』

 そう判断された鴉野と弟は警察に職務質問を受ける羽目になった。成人しているのに。

 姉貴がいればなんとかなるのだが、生憎いない。

 間の悪いことに身分証明書などあるわけがない。

 しかし祖母は一刻を争う事態である。警察に協力的な鴉野兄弟だがさすがにキレた。


『じゃ、今からその車に載せろ! そして○○病院まで連れて行け!』


 祖母が危篤ということを信じない警察に『間に合ったら捕まえるなりなんなりしろ!』と無茶ぶりをする鴉野。


 大騒ぎのあと、鴉野とその弟は何とか危篤の席に間に合った。


 鴉野と実の息子の区別がつかなくなった祖母。

 真っ先に駆け付けたのに損な役ばかりの姉。

 結果的に鴉野の名前を連呼して祖母は逝った。


「しっかりしたお兄さんですね」


 警察に絡まれても冷静だった鴉野より六歳下の弟だが。

 彼は無関係な人にこのセリフでキレていた。


「お前がしっかりしないから俺が兄に見られるんだ!」


 逆切れだと思うが。すまん弟。

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