最強の条件(シリーズ『魔法少女になれそうにない』。解説)
どんなに喧嘩が強くても。
如何に強大な権力を握っても。
世界中の知識を手にしても。
無限にお金を得ても。
寿命が無限にあろうが、若く美しく可能性があろうが、歳をとって経験を積もうができない可能性があることがある。逆に無力な子供でもできることがある。
2014年も残りわずか。年をこす前にクイズを出します。
十行待ちます。
正解というモノはないのだが鴉野はこう思う。
ヒトの幸せに嫉妬したとしても結果的に祝福できること。
他人の良いところを見つけて尊敬の念を持てること。
悪いことをしたと思ったら素直に謝ること。
自分のほうが正しいと思っても相手の意見や立場を知ろうとすること。
自らやその隣人が破滅しない程度なら自分のモノをより困っている人に譲れること。
可能な限り体系だった知識を常に吸収し、勉強し続けること。
弱い者いじめをしない。もしくは弱者を労わる強さを持つこと。
これらは金が無くても、権力が無くても、喧嘩が弱くても、年齢に関係なくある程度は追求できる要素だ。まぁ境遇の差はどうしようもないけど。
拙作。『魔法少女になれそうにない』は鴉野と友人、美沙斗氏の共作みたいなものだが、『人づきあいは苦手』『男の子は苦手(でもBL成分は嫌いじゃない)』『思い付き』『だるい』この辺から『氷の魔法使い』となり、美沙斗氏の漫画の好みから『圧倒的な力を持つがダウナー系の主人公』となった。
美沙斗氏曰く『ぜんぜん私と似てない(でも大好き)』な主人公は最強クラスのスペックを持っている。
氷の魔法少女で、アイス(冷気)を食べなければ変身できない欠点を持つ。
こっぱずかしいセリフとスマートフォンが必要。恥ずかしいバンクシーンがある。この辺のリスクは置いておいて(充分だ)、利点は多々。
空飛ぶ円盤型ロボット掃除機に変身するパートナー(猫の絵)。『氷の魔法使い』だが本人のイメージ次第でその能力はどんどん進化する。
要は液体を個体にするわけなので高温の気体もしくは液体を超高圧で固めることも不可能ではない(つまり、間接的に火炎系も使える)。人間の成分のほとんどは水であり、細胞壁その他のそれを操ることで傷を治せる。
絶対零度の広範囲攻撃。
冷気を遮断して暖かく過ごせる。
時間を短時間ながら凍結させる。
ぱっと作者が考え付く範囲でも相当ある。普通に最強キャラだ。
でも、作中では彼女はとことん怠惰に過ごす。
せっかくの最強スペックもすべて生活の道具、主にクーラー代わりに使う程度だ。というか、クーラーすら使わずスタバで休憩とか普通にする。
何処が最強なのだ。読者は判断に迷うところだろう。
作中では主人公は誰もができるのに誰もやろうとしない。立場や既得権や利益などでできないことをごく自然に不器用ながらこなす。『なにもしていない』と言いながらはしゃぎ過ぎて倒れた子供を怪我しないように抱きかかえ、部活で疲れた身体を押して老人に席を譲る。
一生ぼっちを誓った友人に彼氏ができれば怨嗟の声とともに祝福し、友達と喧嘩をすれば結果的に素直に謝り、嫌がりながらも勉学もするときはする。
ヒールで痛めた踵をさすり、使おうと思っていた絆創膏を転んだ子供にあげてしまう。
曲がりなりにも将来のことも考えている。
磯部餅の網になりたいとか言い出すが。
強ければその強大な力で強引に解決することも可能である。でも主人公はそれを面倒がってやらない。
しかしもっとも面倒で手間がかかり、普通に傷つく生身でそれをやってのける。
不器用で不愛想。恥ずかしがりながらもそれを成す。
強くても。強いからこそ素直に謝ることはできない。
権力があるからこそ他人の栄達を看過するわけにはいかない。
お金を儲けるためには誰かに貧しくなってもらわねばならない。
小賢しい人間は目先の欲に振り回される。そしてそれでいい。
変に無双の力を描写するより、照れても恥ずかしくても不器用で不愛想でも、悪いことを言ったかもしれない友達に素直に謝れる人。
人間の弱さを知り、怠惰さを理解している人。
若くても年寄りでも、わかっているからこそできないことをやる人。
こちらのほうが鴉野は尊敬するし、強い人だと思う。
もちろん鴉野は上記の条件にまったく該当しない。しっかりしろ鴉野もっと努力しろ。
鴉野の自助努力はさておき、そういうわけでこのお話は主人公が最強でありながらひたすらサボるというどうしようもない話になった。
むしろ、最強の戦闘能力があっても友達に謝れるかどうかは別問題だし。
繰り返すが氏曰く、自分とは似ても似つかないがそれでも好きとのことなのでこれで良いらしい。
もちろん、力で強引に解決せねばならぬこともあるし、その力以上の難題が降りかかることもままあるので、もし連載にするならその辺も描きたいところである。
最強を表現するのって。結構難しい。




