次はクラブに攻め込むぞ
鴉野は『優勝景品』としてハロウィンのカップをもらえた。
たまたま鴉野のタコ踊りを見ていたキックボクシング経験者を名乗る三十路半のお兄さんに『あの蹴りは空手だね?! 良いものを見せてもらったよ!』と謎の台詞を言われたり、前述のイケメンからクリスマスプレパーティのお誘いをもらったりとかあったが毎回毎回なんで女に縁がないのか激しく問い詰めたい。
別に女の子の前であがるわけではないのだが。
憔悴して帰ってきた鴉野を職場の某氏は迎えてくれた。
「なんすかコレ」
手に持った不審物をみながら彼は問う。
「優勝景品らしい」
あとは聞かないでくれ。
せっかくだから画像としてアップする。
一緒に写っているのはクリスマス用のシュトレンだ。
コスプレという非日常は悪くない。
ハロウィンパーティで検索してみるとあちこちのクラブで高くても数千円で参加できるらしい。しかも呑み放題。
「コレ、別に婚活サイト使わなくてもいいよな」
今更気づいたのか。情報弱者は大変だな。
とりあえず大阪の某クラブで外国人を交えて500人規模で行うパーティがあるらしい。期日が迫っているので鴉野はATMにダッシュした。
結論。話はできるが付き合うに至らない。
鴉野はクラブでナンパというのは致命的に合わないらしい。
ある程度は話はするが、途中で面倒になる。
外人のねーちゃんが凄くきれいで写真をバシャバシャ撮られていた。
気さくな人で普通に撮らせてくれたが手ぶれしていた。
「おー! ほね~~!」
「いえーす! ほね~~!」
中にはパンツ一丁にバットマンのマスク。そのケツにハート形の穴を開けただけの外人さんとか、翼を装備してトイレにもいけない人とか、お菓子の箱を顔に被っている強者。半裸で映画『300』のコスプレをしている猛者どもなどなどと鴉野はバシバシなれ合っている。
考えてみれば女の子より男と意気投合してないか。今日はナンパに来ているんだが考え直したほうがいい。鴉野。あと、いい加減スマートフォンを買え。
はじめてクラブというモノを体験したがかなり面白い。
年齢層が極めて若いのは気になるがおっさんもいなくはない。
たった一人でシャツ一枚姿のおっさんが呑んでいた。ナニをしている先輩。ナンパに行きましょう。
レーザーは飛ぶ。酒が入ったお兄ちゃんねーちゃんが踊る。足の踏み場もない大騒ぎ。終わった後は道端に人が溢れかえって大混乱。
あまりに人が多すぎて帰り道が解らなかったのはご愛嬌。
話はできるが連絡先を知るまでに至らない。
最近始まったセーラームーンというアニメのコスプレをしたお姉ちゃんたちの連絡先を聞きそびれた鴉野は一人帰路についた。
隣にゲームコスプレと思しき包帯を顔面にぐるぐる巻きにしたセクシーナースが居たがさすがの鴉野も声をかけなかった。




