Review(レヴュー)! 零(でろ) 第六話 ライトノベルは文学ではない。らしい
連続投稿三回目
文学学校というからには当然皆文学畑の人間である。
そうでないのは鴉野と大工のおっちゃんしかいない。要するに無学なのだ。故に奔放とも言う。
とはいえ無学なら無学なりに本を読み泥の中を這いずる日々を過ごせばそれなりの経験は身につく。人間が得ることの出来る経験など一生分しかないが、濃い薄いの差は出る。それを埋めるのが『読書』であり『勉学』である。
鴉野は当時一日一冊は本を読んでいた。
調子のいいときは二冊読んでいた。
しかし、それは全てライトノベル。ラノベといっていい状態だった。活字中毒に陥った鴉野は新聞をたまに読みながらも、ノンジャンルで本を読み漁っていた。
文学の話になると当時の鴉野とおっちゃんは黙る。知識が無いのである。とはいえ、夏目漱石などなら読んでいる。哲学屋の相槌も打つ。
鴉野はふとしたことからライトノベル批判を受けて反論することがあった。
「でも、『蚊』コレクションって本には文学の要素が入ってますよ」
鼻で笑われた。
とんでもない古い本だが、それはゲームを元に寄稿されたシェアード・ユニバース形式の短編集だ。
「よりにもよってゲームとか」
「もっと本読まないと」
鴉野はえもいわぬもやもやとした気持ちを抱いていたが、酒の中に流した。
「文章の芸や技のみをおって、若者を見捨てるならば、文学など死んでいる」
『君しにたもうことなかれ』と呟いた女もいたし、『御託を言わずに抱け』と言った奴もいる。上司をぶん殴って故郷に帰る話を書いた文豪もいるし、『くたばって死ね』と親に叱られた作家もいる。
『今に見ていろ』
鴉野は人知れず決意した。
絶対。人に見てもらえる話を書くぞ。
まさか、それから時が流れ、Web上に素人小説を集めたコミュニティサイトが誕生するなど当時の鴉野は夢にも思っていなかったのである。
あの頃の仲間たち。まさか彼らがなろうで書いているとは思わんが、書いていたら鴉野と同じくマイナー作家であろう。




