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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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兄貴はバカじゃない

『高卒のバカなのだが』


 鴉野が自らを称するとき、多少の褒め言葉(あるいは持ち上げや揶揄)に対してもっぱら返す言葉である。しかし、その時ばかりは相手が悪かった。

『兄貴は莫迦じゃない』


 鴉野は子供は大好きだ。

 だが、子供の扱いを間違えることがある。

 思春期という大人との合い子ならばなおさらだ。まして異性なら。


 そういえばこの子は兄上と仲が良い。


 多少は鴉野もその恩恵に預かり、ご家族通して必要以上に仲良くなってしまったかもしれない。今この場にいない兄上と重ねられたり、そういった思いを侮辱されたと思われても然るべきものがある。


 しかし、鴉野は何度も言うがアホである。


 もちろん大阪のアホは面白くて偉大な奴という意味もあるが真正のバカでもある。ゆえに、返答を間違えることはかなりある。



 鴉野は些細なことで友人と袂を別った。

 本当にどうでもいい理由で、友人がこういう相手が許せないという理由にケチをつける形になったからだ。


『へーそういうこともあるんですか~』

『ああ。友人だから言ったんですね。ホントありがとうございます~』


 なんか、相手もそうだが、こういった相手としか付き合っていない自らが惨めだと思った。


 鴉野は無駄な時間を持っている。

 何度もなろうのトップでF5を押して感想やメッセが来ていないかチェックしてしまうことがある。


 こういった行動の多くはつながりを求めてだろうが、そんなものはこの世にはない。

 他者とのかかわりが欲しければ外に出たほうが良い。

 クラブのイベントとかなら数千円で参加できる。そして楽しい。

『へ~すごいですね~』

 別に自慢した覚えはないが普通にお気に入り登録が外れていた。


 思えば鴉野は全力で感想を返したりする。

 更新するたびに数千字感想とかスパムだったりするだろう。

 まぁ気持ちはわからんでもないのでこちらも相手が気づかないように引くことにする。


 鴉野は職場となろう以外のかかわりをほとんど持たない。

 携帯電話すら持とうとしないのだから筋金が入っている。

 もちろん、それならば孤独でまったく問題が無いはずだ。そう思う。


『バカじゃない』


 莫迦だろ。

 普通にバカだと思う。

 だが、バカじゃないならばどうすればいいのかくらいは考えたほうが良い。少なくとも、鴉野を賢いと慕ってくれる子供がいたのだから。


 尊敬されるようなオトナでは鴉野は断じてないと重ねて断言できる。

 誰かに自慢できる兄貴を重ねられるような男でもない。

 だが現状に甘んじて自らを貶め続けるならば、それは本物の阿呆である。


 尊敬してくれた子供を失望させれば、子供はどうなるのだろう。

 大人になりたくて大人になろうと子供は思うが、実際に大人になりたくて大人になった大人はいない。ならざるを得なかっただけだ。


『勉強するか』


 鴉野の親戚筋の怪しい兄貴分が放送大学を薦めてきた。

 この従兄は外国で数々の怪しい事業を行う天才肌の男である。

 平気で各国語を操る。


 さて。


『大学? いったら?』


 鴉野の言葉を妄言と思い込んだ会社の偉い人はそうおっしゃった。


『じゃ行きます』


 放送大学の願書は三月と九月受付。ギリギリで鴉野は大学生となった。

 今でも単位をロクに取ることができない。鴉野はバカのままである。

 だが、小説のネタには確実になっているので後悔はないし、とりあえずあの日の失望の目や、かつて友と呼んだ人々の蔑視の面に笑ってやることはできるのだ。


『結構、楽しいよ』


 何より、この年でラーメンに学割が効くのは大変宜しい。

※ 放送大学の学費は個人差がありますが、四年で卒業を目指すなら年間17万円ほどを見込んでおいてください。

 もちろん数科目だけ取って数万円でも、面接授業をたくさん受講してさらに出費を増やして単位を稼ぐことも可能です。

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