楽しい茶道
さどうなのだがちゃどうなのだか知らないが、鴉野は礼節と姿勢の良さ、コネ構築といくばくかの下心を兼ねて放送大学の学習センター近くのホテルの茶道教室に半年通ったことがある。具体的にはなろうの広告に時々出てくる『裏千家茶道初心者教室』に鴉野は通っていた。
茶道はちゃとう、ちゃどうからさどうになり、最近またちゃどうと呼ぶようになったという豆知識を頂いた。有効活用できそうにない。
それでは、現代における茶道のメリットを鴉野なりに紹介したい。
1.所作がキレイになる。
もちろん礼法的な意味合いもあるが、茶道や日本舞踊などなど日本の伝統芸能は体幹を意識した動きが多い。大きな幹を持っているのをイメージするような動きは自然と体重を操り、羽のような軽やかな動きを可能とする。間違っても鴉野のように柄杓を遥か彼方にブッ飛ばしたりしないだろう。あるいは鴉野のように見事なまでにお菓子を懐紙から落としたりはしないと思われる。
駄目じゃないか。お菓子は最高に美味しい。さすが京都の老舗である。
2.出会いの機会になる。
最後の日前に午前午後深夜のクラスにお邪魔させていただいた。それらの傾向はこうである。
午前。
近隣の主婦が多い。金銭的余裕がある人が多くのんびり。
遅刻はまずめったにない。また数が少ないので練習を何度もできる。鴉野はもっぱらこのクラスにいた。仕事サボって何をやっている。一応、火曜は絶対用事があると会社には言ったが茶道とは最後まで口を割らなかった。
午後。
遠方の茶道好きな主婦が多い。遅刻に寛容。
人数は朝より多め。経験者が多い印象。行儀見習いもちらほら。外国人の留学生とかいて結構楽しい。取りあえず拙作のファルコ・ミスリルじゃないので柄杓で遊んではいけない。
あのエピソードは落ち着きのない生徒さんがやっていたのを目撃した実体験に基づく。
夕方以降。
ほとんどが遅刻してくる。というか皆社会人なので仕方ない。
若い娘さん、社会的地位が高まって教養が必要になったサラリーマンが多い。
よって、人脈や出会いを求めるならこの時間帯一択である。
鴉野? 熟女バリバリOKなので問題なかった。俺に隙はない。仲は良いのだがいかんせん数が多すぎて練習は全くできない。また、最初から素人が多いのであとは察しろ。でも熱心にメモする。
鴉野? メモは苦手だ。その場でやらないと忘れる。駄目じゃないか。恋人? さすがに相手がいる人は対象外だ。もっとダメじゃん。ナニを得てきたのかと言われたら腰痛が治ったと答えておこう。ジム通いの成果かもしれないが。
3.教養が付く。
茶道は総合芸術である。
茶を飲むためにお菓子も食べるが実は季節によってきまっていたりする。
道具にせよ菓子にせよお茶にせよTPOに応じたブランドもあったりする。器もいろいろある。道具もいろいろある。茶を飲むためには水場仕事もする。さらに花を活ける。女性なら着物を着る。
当たり前だが掛け軸もかかる。和歌だの古典だのガチで覚えきれない。
4.教養もそうだが話術も大事である。
なんせ次から次と道具の話題、時節の話題が出てくる。
また、感性も必要だ。正客なんざやらされれば、おんぼろの茶釜から浮かび上がる満月を想像して、松葉の香りを想うとか普通にできる必要が出てくる。
鴉野はお点前と言われる茶の淹れ方は全く持って身につかず、歩き方すらわからない状態で半年を過ごしたが、唯一の男性ということで正客の受け答えはある程度やるはめになった。社長仕込みのおべっかが役立った瞬間である。普通にありがたいような厄介な。
女の集団で毒のある冗談をさらりと更なる冗談にして返すとか余裕でできるようでなければやっていけないし、甘え上手なのも必要だ。無駄に童顔で細身で良かった。茶道用のエプロンがビキニ状態の細身過ぎだったが。当時の鴉野はウエスト62.5の時があった。
ペアルックを揶揄されて鴉野ともう一人の主婦は柄にもなく真っ赤になっていたこともある。故意ではない。
こういった一見ややこしい茶道だが、順を追っていろいろ教えてもらえる。珍しい花や美味しいお菓子、変わった掛け軸を見るだけでも楽しいものである。また、姿勢をすっと伸ばし、独特の緊張感の中にて吸う茶の香りはある種記憶に残る。
レモンの味と言われたり梅干しの味と言われたら想起することは誰にでもできる。茶を習った人間は茶の味と言われたら抹茶の香りと味と舌触りが頭に蘇る。結構落ち着くし、集中力も出るものだ。悪くはない。
まぁヤクやってるのかと言われたらどうかと思うが。そんなものじゃないから体験してくれ。どうせ年間五万ほどしかしない。お菓子代でお釣りがくる。
なお、正座の恐怖を抱く方に向けてだが立礼といって最近ではテーブルで行う方法もある。
日本人の体格は刻一刻と変化し、正座や蹲踞、ウ〇コ座りができなくなったらしいがこれなら大丈夫である。実際、足の悪い方もこれならばとやっていたらしい。それどころか、リハビリになって回復したという例すらある。体幹を鍛えるのは意外な効果があるらしいのだ。まぁ普段使わない筋肉を総動員して優雅な動きを作るのでストレッチな事もあるのだろう。
茶道の教室は笑いが絶えない。
手順が狂う。お菓子が飛び出す。
鴉野が『お菓子をどうぞ』と言われる前にお菓子を食べてしまうなどのトラブルがある。
どんだけ腹減ってたんだよ。鴉野。
他にも水差しのふたが転がる。よく滑る。
茶釜のお湯が跳ねる。危険気を付けろ。
濃茶は練りチョコレートみたいで美味しい。苦いけどな。
他にも役割を振り分けるゲーム要素のある練習。
夏場は水差しのふたを葉っぱでやるなど話題も多い。この辺は先生方の人柄もあるのだろうと持ち上げておく。
茶道をやっている女性は所作が綺麗である。
茶道をやるだけあって家に余裕があるのかバレエや日本舞踊などもたしなんでいるのでなおさらだ。
その分、毒を吐くときはキツイが概ね可愛がっていただいたと記憶している。
また、一部から鴉野はナンパ師と思われていた模様だが読者諸氏が知るように実態はこんなモノだ。
最後に着物を着ていくと絶賛された。どれだけ洋服にセンスが無いと思われていたのだろうか。ryotenの日吉屋さんの傘は裏千家ご用達らしいが結構京都の町に合う。
今は忙しくて放送大学の茶道部にも入部届を出していないが、またやってみたいと思うのは否めない。
もし宜しければアナタもはじめてみませんか。
所作がダメダメでも、お菓子だけでも召しませ。
ステキな茶会があなたをお待ちしております。




