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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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襲撃 襲撃 また襲撃 ~肩が抜けても殴り続け、腰が抜けてもおねえちゃんに軽口を放つ日常~ もう吹○郵便局のSさんの話はいいよ

「カラスノ君。妙な年賀状来てないか」

「はい?」


 1月も終わりになって? なにそれ?


上司曰く、うちの店についてのクレーム兼恐喝文をつらつらと社長と他店舗宛てに送り付けたものらしい。


「キミの店で起きた事らしい」

「送付先間違ってませんか。うちには来てませんよ」


「取り敢えず警察呼んだ」

「ですね」


 なお、恐喝は意外と実刑重い。

 なにこれこわい。恐喝まがいの年賀状。地道にあけましておめでとうの文面は忘れないし。長文だし汚いし。住所は書いていないけど郵便局の消印が一致するし。


 なによこれ。あいつじゃん。


 鴉野はピラピラの年賀状(ご丁寧にお年玉付年賀はがき)をひるがえしつつ、そういえばこの書体のままで何度も店にチラシを張り付けていくアレなお人のことを思い出していた。


 まぁぶっちゃけると鴉野が悪いのだろうが、閉店直後だか一分前だが一分後と言った時間にやってきて対応を求めてきたところ、『残業代ないのにヤダ』と鴉野が拒否。いろいろあって店内のものをぶっ壊し、その料金を求められ、弁償を請求された愚か者である。

 何がすごいって『勝手に改装しやがって』と暴れまわった吹田○便局の某Kさんの事件の翌日なのだ。


『本当に一〇〇〇〇円もするものなのか』『誠意ある対応をしろ』『謝れ』『夜道には注意しろ』


 云々と何度もやってきては対応したアルバイトの大学生(こっちは男子)が辟易していた。彼は対人恐怖症になっていたので『鴉野のバカ野郎』を何度も言って踊って笑う訓練をする羽目になったという彼にとって笑えないことがあった。

 そして『誠意ある対応がない』と張り紙を繰り返すようになって最近おとなしくなったなと思ったらの謎の年賀はがきである。


 ここで彼を『ヨロイ元帥(仮名)』と呼ぼう。


 某V3のヨロイ元帥は意外と丁寧な字かつ住所つきで慇懃無礼に送ってくる。こっちのアジト再建時には花輪まで贈ってくれる。

 しかしこれなら本物のヨロイ元帥のほうがもう少しありがたい。あっちは『あけましておめでとうございます。裏切り者は必ず殺す』と実にわかりやすいし。


 さすがに殴り合いにはなっていないがもみ合いで追い出しはした。そりゃそうだろう。暴れるんだもん。というか、なんで残業代も出ないのにこんな連中の相手をしなければならないのか。会社の人にこういわれた。


『店は閉店時刻になってから閉店準備をしなさい』

『閉店時刻になってもお客様の対応はしてください』


 鴉野はこう返した。


『残業代払うならその通りにします』


 鴉野の会社は週40時間は守っていた。鴉野自身が当時は自分のシフトを作っていたし。鴉野の恐ろしいところは残業を一切せずにまとめて帰っていた事実である。前述した夜のバイトの彼がいなくなって数か月、一日最低2時間は出勤していた。そしてどんな忙しい日でも30分以内に閉店作業を終了していたのでサービス残業すら疑われるレベルだった。


『どうして君はどの店舗より早く、というか閉店時間同時に日報を送ってこれるのか』

 予備計算して多少修正入れれば不可能ではない。

『そして一切休みなしで、どんな繁盛期でも残業せずにタイムカード切っているけどどうなっているの?!』


 鴉野は答えた。


『残業代払わないなら、残業しないし、意地でも時間通りにかえってあげます。その結果お客様から態度が悪い。深夜閉店後の対応をしないなどの苦情を受けても私には一切責任を負いかねます。

 私はどんな大変な時期でも警察沙汰に巻き込まれなければ問題なく終了業務を行うことができますが、そのためにお客様が受ける被害、クレームに関しては会社の負担ですのでよろしくお願いします。

 蛇足ですが、うちには私以外に閉店業務を行える人材はおりません。みな深夜までの勤務なうえ、週に二回も襲撃を受けるような職場でありながら相方もつけてもらえない状態で閉店業務を行うことを嫌がっています。私以外にやることができるという方がいらっしゃるならどうぞその方と私を替えてくださいませ』


 翌月。鴉野にも残業代が支払われていた。

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