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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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襲撃 襲撃 また襲撃 ~肩が抜けても殴り続け、腰が抜けてもおねえちゃんに軽口を放つ日常~ 人権 人権 また人権

 『人として生きる権利』編で触れた鴉野の幼年時代だが、人権というものは大事である。アカ中学のインパクトが強すぎて『アカ中学編』と呼称されるが、あれは人権や平和の尊さを語っている。つもりである。たぶん。


 繰り返すが人権は大事だ。


 自分が侵害された場合、それを使って自らを守れるからである。


 そして人権とは先人たちが多大な血を流して得てきた宝であり、別段阿呆どもが自分の既得権益をむさぼるために使いまくっているだけではない。

 事件があればたいていは警察がやってくる。災害が発生すれば自衛隊がやってくる。火事が起これば市役所や消防署の人が助けにくる。あなたの生きる権利を守るために。


 ひるがえして鴉野の生きる権利だがまれによく死にそうになる。


 たとえば会社の自転車が夜中の一時過ぎに駅前に転がっており、盗難されたものであろうから引き取って帰るときに酔っ払い五人に『自転車泥棒』と思われて襲われた時など。

 前話の感想で『鴉野さん超強い』と言われたが強ければ腕が抜けても殴り続ける必要などない。抜けても殴り続けているということはまったく相手に効いていないということである。


 しかし五人も敵がいる場合、必死で反撃しなければいけない。

 押さえこまれれば腹や顔を打たれ、つかまれれば路上にブレーンバスターされ、吹き飛ばされればバイクにぶつかって近くの牛丼&うどんのチェーン店の客を恐怖に陥れる程度には危険である。助けろよ。

 ここが人通りの良い駅前だからすぐに警察が来て鴉野は命拾いしているが、少し駅前から外れた薄暗い路地なら鴉野はゴミ箱の中で静かになっている。少々ガソリン代が消費されるがうんこ製造機が減って大変エコでよろしい。鴉野は小柄でチビで非力であり、一撃で敵を倒すことなどできるはずがない。


 世の中の人間は小柄で華奢でも大男を一撃必殺するSみたいなやつばかりではないのだ。早々に勝つことをあきらめた鴉野はメンバーの中で一番強そうな男の鼻にひたすら中指第一関節を突き立てた突きを連打する。とにかく撃つ。ひたすら撃つ。

 男の彼女と思しき若い姉ちゃんが泣き出した。それを見た男がどなる。何が何だかよくわからんが仲間割れまでしてなぐり合う始末。鴉野に背後から殴られる。仲が悪すぎるだろお前ら。

「大丈夫」

 笑う鴉野。余計怖い。というか相手の彼氏殴りながら気障な態度とっても説得力ゼロである。


 つくづく思うがSや鴉野の父。センセみたいなチート人間を普段目の当たりにしているとこう思うのである。


『こいつら5人よりS一人のほうが強いわ』


 ので、鴉野は警察が到着するまでの10分間を相手の鼻をつぶすことを目的に拳を振るうことに専念した。キレたSを相手にするより数倍マシである。相手が強い強いと言ってもSほどではない。殴られ蹴られ殴られ、これほどの代償を払った反撃なのに残念なことに鼻はつぶれなかった。非力な鴉野ではこんなものである。


『鴉野君。反撃したらあかんやろ。蹴るわ殴るわ』

『反撃しないと死んでますよ?! 相手五人ですよ?!』


 せやな。苦笑いする知り合いの警察。

『鴉野君。普通の人は五人相手に喧嘩しないんや』

『はい。よくわかってます』


 喧嘩を見ていたフルーツ店兼たこ焼き屋のおばちゃんの証言もあったのか鴉野はやっぱり無罪釈放。


『帰ります』


『こいつらどうする』

『酔っ払い無罪っしょ』


 そういって帰った鴉野。後で重大なことに気付いた。


 人間はアドレナリン全開だと痛みを感じない。

 鴉野は見事にアバラを折られていたのだが。


『すいません。治療費請求したいのですがっ?!』


『鴉野君。君が良いっていうから双方和解ってことで聞いてないよ?!』


 何やってる警察。調書とっとけ?!


 自分から己の権利を放棄した鴉野。

 自分で治療費を払う羽目になる。


 人権は大事だ。それが侵害されたら戦うべきだ。

 だが、カッコをつけるために赤の他人であるはるか異国の他人を守ろうとする。そのためには自分や家族、その従業員を顧みない人間の人権意識は人権を侵害する人間の人権意識並みに低い。

 そして治療費を自分で払った鴉野のように決して幸福にはなれないのである。


 カッコをつけていないで自分の権利は守るべきだ。


 某所の『国松』さん。

 頼むからアバラ代払ってください。

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