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鉱石の前世?
いやーもう、うすらぼんやりとした遥か昔の記憶?なんですかね?
なんかこう、二本の足で歩いてたような記憶が。
二本の手で、文字とか書いてたような記憶が。
ちゃんと口があって、誰かと喋ってたような記憶が。
あるような、気がするんですよねぇ。
まあ、今は手も足も口も無い、ただちょっと思い出が豊富な鉱石なんですけどね、ワタクシ。
溶岩で流されてた頃は、なんか泣いたり怒ったりもしてたような気がするんですけどねぇ。
冷えて固まっちゃってからは、すっかり落ち着いちゃいましたからねぇ。
長い永い時間ってのは、色々なモノを朧げにしてしまうみたいです。
まぁ、岩石ベッドも寝心地が悪いわけではないのですよ。
微睡むのには何の問題もありません。
静かで、ひんやりして、心地よいくらいです。
まあ時々、以前立って歩いてた記憶が蘇ると「生き埋めされてる」とか思っちゃう時もあるんですけどね、そんな時はこうやって思い出に浸るのも悪くないです。
それではまた、微睡むといたしましょうか。
それでは皆さん、おやすみなさーい……むにゃむにゃ…………