鉱石の思い出語り
サクサク連続で投稿します。
そうですね……どうしてこんな事になったのか、久方ぶりに思い返してみるとしましょうか。
ワタクシが目を覚ますと、そこは真っ赤でドロドロした液体の中でした。
まあぶっちゃけた話溶岩ですね。
いやぁひっじょーに熱かった。
今考えてみると、ワタクシあそこに溶け込んでたんですねぇ。
端的に表現するなら、沸かし過ぎたお風呂ですか。
アレに全身浸かって流されてるような、そんな感じです。
だからって湯船で実験しちゃいけませんよー危ないですからねー。
良い子も悪い子も、ワタクシとのお約束です。
さて、そうそう思い出話でしたね。
あれはどれくらい昔の事でしたかねぇ……うん、年月は忘れましたね。
岩の中は変化が無さ過ぎますね、日の出日の入りすらわかりませんからね。
ただ少しずつ溶岩が冷めてゆく過程で、ワタクシはどうやら溶岩の他の部分と比重が違ったんですかね。
溶岩全体にうっすらと広がっていたワタクシの意識?みたいな部分は、少しずつ少しずつ底に沈殿していきました。
こんなふうに思い出話が出来そうなほど意識がハッキリしたのも、まあその辺ですね。
それまでは「あああながされてるううううう」みたいな。
漢字変換すら出来てませんでしたよちょっと恥ずかしいですね。
まあそんな感じで、溶岩の底で密かに集まったワタクシは、こうしてワタクシというそこそこ巨大な鉱石の塊となったわけです。
完成したワタクシの周りで溶岩が固まり、ジャストフィットな岩石ベッドの完成です。
これが、今までのワタクシ誕生までの経緯ですかね。
え?
違和感を感じる?
ああはいはいそうでしょう。
生まれて?この方地面の底だったはずのワタクシが、風呂やら日の出やら漢字やら、知らないはずの言葉をペラペラ口走る……くち……いやまあ喋っているわけですからね。
そうですね、一言で説明するならば……
ワタクシ、『鉱石』になる前は、『人間』と呼ばれる存在だったみたいです。