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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
世界統一編
6/43

戦争の始まり

シャオが魔法を教え始めてから、アイの魔法使いとしての資質は日に日に開花していった。

防御魔法なら、おそらくアキラの攻撃魔法をしのげるまでに、治癒なら、死んでさえいなければ回復させるだけの魔法を操れるようになっていた。

アイには元々それくらい直ぐにでも習得できるだけの素質はあった。

シャオはそれをアキラに話した。

ちゃんと教えれば、相応の能力を発揮する事は当たり前であるとシャオは言った。

それを聞いたアキラは、今後起こり得るであろう惨事を想定し、雄志軍に魔法を教えて欲しい旨シャオにお願いをした。

トキョウには、正式な騎士団や魔法部隊は存在しない。

ただこの町で、魔法や剣技に優れている者が集まっている雄志軍だけが存在していた。

戦争をしたことがない国なので、それも当然だった。

しかしここ最近、かなり近くまで戦火が及んでいて、流石に対策が迫られていたのである。

アイの父であるアキラのお願いに、シャオは断る事ができず、明日から教える事を了承した。


日は変わり、いよいよシャオが雄志軍に魔法を教える日が来た。

その日はいつもと違い朝から屋敷があわただしかった。

アイがお祈りから帰ってくる頃には、アキラは町に出かける準備を終え、今正に出かける所だった。

「お父さん今日は早いね。何かあったの?」

いつもならアキラはまだ寝ている時間なのでアイは驚いたが、笑顔でそう訊ねた。

「ああ、今から少し出る。詳しくは帰ってから話すよ。そうそうシャオ君には、今日の魔法講習は中止だと伝えておいてくれ」

「うん、わかった」

アキラの言葉にアイは頷いた。

直ぐにアキラは急いで出かけていった。

昼になると、アイはシャオと共にいつものように魔法を操っていた。

アイの魔法技術は常に上達していた。

更にはその魔力も、心なしか上昇しているようだった。


時々うっすらと出ている黒い霧が、太陽の光を霞ませる景色も、いつしかシャオにとって見慣れた景色となっていた。

しかしトキョウの寒さにはあまり慣れていないようで、アイの魔法練習を見ているだけのシャオにとっては、かなり辛く感じていた。

それでもシャオはアイの練習を見ていた。

もうここでこうしている事が、シャオにとっては当たり前になっていた。

休憩中に並んで暖かいお茶を飲む姿も、昔からの友達のようだった。

シャオは世界統一の事は頭の隅に追いやり、何でもない会話ををアイと楽しんでいた。

そんな時だった。

ミサが血相を変えて庭に走り込んできた。

息が荒く、かなり走ってきたようだった。

「大変だよ!アイ!みっ‥‥」

そこまで言ったミサだったが、荒い息にその後の言葉を詰まらせた。

「どうしたの?そんな血相変えて」

「まあ落ち着いて。どうかしたの?」

アイとシャオはいつもミサと話す感じで訊ねた。

ミサは一度深呼吸をして落ち着き、次の瞬間大きな声で叫んだ。

「南のインディア国の魔法部隊が攻めてきたんだよー!!!」

ミサの目から涙があふれ、その声は枯れていた。

「えっ?」

ミサの言葉に、ただミサの事を唖然と見つめるだけだった。

「今、おじさんとシュータ先生が話をしているんだけど、このままだとヤバいよ!」

その言葉を聞いて、シャオは立ち上がった。

争いなど日常茶飯事な毎日を送っていたシャオだが、何か凄く嫌な気持ちになった。

そして、助けなければと思った。

「何処?案内して!アイ!お前も行くぞ!」

シャオの言葉に我に返ったアイは、ミサを先頭に町の方へと走り出した。

既に疲れ切っていたミサだが、それでも共に全力で町中を走った。

その時間はとにかく長く感じられた。

早く、早く。

力の限り走った。

ほどなくして、町の中央広場へと到着した。

そこには人が集まっていた。

よく見ると、人々は広場の中心を囲うようにして中に注目していた。

その中心には、アキラとシュータ、そして見た事の無い人々が数十人、アキラたちと向かい合うようにして立っていた。

ようやく広場についたシャオたちは、アキラに近づいて行く。

シャオはアキラたちの斜め後ろに立ち、向かい合う人々を睨んだ。

「子供?子供を呼んでどうするつもりだ?はははー!」

インディアの部隊長らしき人物がそう言って笑った。

「お前たち、どうして此処に。危険だから下がっていなさい」

アキラは後ろを振り返らず、少し強い口調で言った。

しかしアイもシャオもその場を動かなかった。

「おとなしく我が国に下れば悪いようにはしない。金と人をちょっとばかり提供してくれって言っているだけじゃねぇか」

「此処が人類発祥の地と知っているのか?!戦争をするために金と人を出す事なんてできる訳がない」

どうやらこの人たちは、このトキョウを支配下に収める為にやってきたようだ。

アキラはその部隊長らしき男を睨みつけたまま、それを断固拒否していた。

「なるべく実力行使はしたくなかったが、致し方ない。とりあえずおまえさんには死んでもらうかな」

部隊長らしき男がそういうと、後ろの者たちの所へ、黒の魔力が集まっていくのが見えた。

町の木々から黒の魔力を集めている事は明らかで、攻撃魔法が予想できた。

「アイ!魔法防御を前方ミドルレンジに展開!」

シャオのその声に、アイはとっさに、そしていつも練習していた通りに、白の魔力を前方に放つ。

白い光の塊が、アイの目の前からアキラの前へと移動する。

それと時を同じくして、相手の周りに集まっていた黒の魔力がこちら側に飛んできた。

黒のエネルギーブラストという魔法だ。

魔力をそのままターゲットにぶつけダメージを与える。

魔法の中では最も単純で簡単な部類のモノで、効果効率は悪い。

それでも数十人からなる魔法であれば、普通の人がくらえばひとたまりもない。

しかしアイが放った魔力が魔法防御としてアキラの前で展開し、全ての黒を遮断した。

遮断された黒の魔法は、何事もなかったかのようにはじけて消えた。

「間に合ったな」

シャオはそう言いながらアキラの横に立った。

「なんだ?何が起こったんだ?もう一度だ!やれ!」

再度放たれるエネルギーブラストだが、先ほどと同じくこちらへは届かない。

「そんなショボい魔法が届くかよ。おいおっさん!これは宣戦布告ととらえていいんだよな?」

シャオは部隊長らしき人を笑顔で睨む。

「だったらなんだ?少しくらい防御魔法が使えても問題はない。別の手段を取るまでだ!」

少しあとずさりしながら、部隊長らしき人は声を上げた。

すると後ろにいた数十人が左右に分かれようと動き出す。

「魔矢!」

シャオがそう言うと、分かれようと動き出した数十人全てに向けて、手から魔法の矢が放たれた。

その数は一目では数えきれない数だった。

魔法の矢、『マジックミサイル』と呼ばれるその魔法は、対象を外さない魔法と言われているが、威力はそれほど大きなものではない。

しかし術者の魔力によっては、一度に放てる数も増やせるし威力も上がる。

シャオの魔力はまだ完全には回復していなかったが、今のシャオが放つ魔矢でも、普通の人なら軽く死に至らしめるくらいの威力があった。

それはこの場にいた人々を驚かせるに十分であったが、最も驚かせたのは、魔法を発動するまでの時間だった。

ノータイムで魔法を発動させたシャオに全ての人が驚いた。

気が付けば、全てのインディアの者が地に伏していた。


これだけの魔法が使えるのなら、先ほどインディアの者がエネルギーブラストで攻撃してくる前に倒す事は可能だった。

ただそれをしていたら、魔力の激突によって爆発が起こり、周りに被害が及んでいた可能性もあった。

何故それを回避しようと思ったのか、シャオには分からなかった。

いや、考えたくなかった。

(ちょっとアイに魔法を試させてみたかったしな)

そう自分に言い聞かせた。


マジックミサイルは、全て対象の心臓を貫き、生きているインディアの者は1人もいなかった。

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