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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
エルフ編
43/43

すべての人に祝福を

魔力の回復の為、シャオとアイはしばらく休んだ。

ダークエルフたちは闇の力によってシャオとアイに襲い掛かりそうになるものの、それをシャナクルが制していた。

「我が息子よ。お前が何処までできるのか。覚悟が本当なのか。見せてもらうぜ」

シャナクル自身はギリギリの所で闇の力を抑えていた。


魔力が回復した後、地下世界にできた穴から、シャオとアイはサザンに乗って魔界に入った。

魔界は黒の霧に包まれ、人間界にあった黒の霧の世界よりも暗い世界だった。

何処まで下りたら地面につくのかも分からない中、サザンは下降を続けた。

しばらくすると、いつの間にか魔界の地へと到着していた。

ダークエルフたちも付いてきていた。

シャオとアイを見守る為、或いは逃げないように見張る為だったかもしれない。

とにかくシャオとアイ、そしてサザンの周りを取り囲むようにダークエルフたちが立っていた。

「じゃあやるぜご先祖様!あんたの子孫がどれだけ凄い魔法使いなのか見せてやる!」

「すげえ魔力を持ってるのは分かってるさ。流石に俺の子孫といった所だな。ただ、魔界は人間界と広さは同じだぜ!この全ての魂を浄化するのは並大抵では無理だぞ」

二人の会話を見ていたアイは、少し似ている所がある事に笑顔を漏らした。

「じゃあアイ。とっととやっちまうか?もちろん、死ぬ気なんてこれっぽちも無いぜ!」

「もちろんだよ。シャオと一緒ならきっと大丈夫!」

二人は笑顔だった。

しかし本当は気が付いていた。

おそらく自分たちは死んでしまうだろうと。

せいぜい7割浄化して、今よりもかなりマシな状態になればと思っていた。

「じゃあシャナクル、サザン。あとは頼むぜ。魔法の間俺達を守ってくれ」

「分かっている。お前ら!俺が良いと言うまでは襲ったりするんじゃねぇぞ!」

「デキルカギリマモロウ。タダココハマカイダ。サイアクノバアイハヒキカエスコトモカンガエテオケ」

シャオは笑顔で答えた。

二人は手をつないだ。

シャオの魔力がアイの魔力に同化してゆく。

二人の魔力が一つになった時、アイは魔法を発動した。

「浄化!」

魔法はいたってシンプルなものだ。

祈りを捧げ、魂の穢れを禊ぎ天に返す。

アイが子供の頃毎日やっていた事だ。

この魔法に関しては、アイはダントツで世界一だ。

これはアイにしかできない事だと言えるだろう。

そしてそれは、世界一の魔法使いであるシャオの協力があって、初めて可能性が見えてくる挑戦だった。

少しずつ、本当に少しずつこの辺りの霧が薄くなっている。

しかしそう急に変わるものではない。

長期戦になりそうだった。

祈りは続く。

1時間、2時間、集中を切らさずに魔法を続けるのは難しい。

だがその分、続ける事で効果は何倍にもなってゆく。

最初の1時間よりも最後の1秒の方が効果が高くなる。

これは何度も挑戦できるものではない。

マラソンランナーが一生の内で何度ベストの走りができるだろうか。

2時間そこそこのマラソンでもそれほどできるものではない。

魔法を続けるというのは、本当ならそれ以上に苦しい事だ。

いやそもそもできるものではない。

それにこの魔法が何度も挑戦できないのには理由がある。

最初の内は良いが、扱う魂が多くなっている時に魔法を止めると、浄化途中で魂が放置される事になる。

その魂は、より大きな穢れを帯び戻ってくる事になる。

それは大きな穢れだ。

下手をすると始めた時よりも状況が悪化する事になるだろう。

やり直しも難しい、普通はできない事を、シャオとアイは続けていた。

シャオとアイは祈りを続けて動かない。

しかしこの状況に我慢ができなかったのは、シャオやアイではなかった。

ダークエルフたちがしびれを切らして動き始めた。

サザンとシャナクルがそれを止めに入る。

かろうじて理性を保っているレベルのダークエルフが、イライラとする感情を抑えるには限界だった。

サザンとシャナクルと幾人かのダークエルフだけが正気を保ち、シャオとアイの邪魔はさせないよう努めていたが、始まってから10時間が過ぎた所で限界だった。

ダークエルフの攻撃がシャオとアイをかすめる。

しかし二人は微動だにせず、祈りを続けた。

「まだだ。まだみんな抑えろ!これはボスである俺の命令だ!」

シャナクルも闇にのまれそうになる中、かろうじて正気を保っているのだ。

他にもまだ正気を保てている者がいる方が不思議なくらいだった。

そこはやはり賢いエルフと言った所なのだろう。

しかしそろそろ限界だった。

魔界の魔物も集まってきていて、もうどうにもならない状況だった。

一人のダークエルフが放ったエネルギーブラストがシャオを直撃した。

一瞬シャオの集中が途切れかかる。

しかしそこはシャオ、なんとか修正して持ち直した。

それでもこの揺らぎは、かなり大きなほつれとなった事は間違いなかった。

「一旦やめた方がいい!今のはマズイ。やり直すべきだ!」

そう何度もできるものではないと言う事は、シャナクルも分かっていた。

しかしそう言わざるを得ないくらい、状況は大きく悪い方へと傾いていた。

更にアイに向かってエネルギーブラストが向かっていた。

もう誰にも止められない。

そう思われた。

その時だった。

「おまたせー!」

いきなりアサミが現れ、エネルギブラストを受け流した。

「ホンマ人使い荒いのお。金にもならん事でなんでこんなに働かなあかんねん!」

ムサシも世界の命運がかかっているとあっては助けに来るしかなかった。

「間に合いましたか?」

エルファンが状況を説明する為地上へ戻っていたが、ようやく今魔界へ来てシャオたちを見つける事ができていた。

「間に合っては、なさそうだねぇ~。でもさぁ~俺達が手伝えばまだなんとかなるよねぇ~。アサリたん」

「はい。この魔除けの桃刀は魔を斬り喰らう刀です。お手伝いできるはずです!」

アサリが刀を振ると、シャオとアイの表情に少し笑みがこぼれたように見えた。

「そしてこのシュウカたん~幸か不幸か正式な天皇となり神の加護を得る事ができましたぁ~。アイちゃんほどじゃないけど私も祈らせていただきま~っす」

シュウカはそう言うと、シャオとアイの横に並び、同じように祈りを捧げ始めた。

そのシュウカに、魔除けの桃刀を構えたアサリから魔力が流れて行った。

シャオとアイ、そしてシュウカとアサリによる世界の浄化だった。

それから1時間もしない内に、世界の浄化は無事達成された。


世界の浄化が行われ、1年が経った。

今日は天皇であるシュウカと、アサリの結婚式が執り行われていた。

かつてあった日本という国の統治体制は、今全世界へと広がった。

全ての人々が天皇を象徴としてまとまり、天皇は権威の存在として君臨する。

天皇は全ての人々の幸せを願い祈る存在として、人々の代表者に権力を与える。

権力を与えられた者は、天皇の宝物である人々を幸せにするために世界を統治する。

この三権分立の理想世界が、長き年月をかけてようやく誕生していた。

「おめでとう!シュウカ!とか言ったら不敬罪とかになるやったっけ?」

「ヒサヨシは今まで通りにしてほしい。遠縁だが一応親戚関係だしな」

「シュウカも今まで通りの方がええわ。つっても天皇がそれやったらまずいんかな」

「今日は無理だな。眠い目ができない‥‥」

この日だけはシュウカもちゃらんぽらんにはできなかった。

ちなみにヒサヨシは、秋華の宮家の男系血筋を継承している親戚だった。

「シュウカー!なんでわしがまだ世界の‥‥関白?やねん!今までの王と全然変わってへんぞー!」

「では、征夷大将軍?或いは総理大臣?なんなら今まで通り王でも構いませんよ?」

「もおええわ!」

そういうムサシも、別に本気で嫌なわけではなく、これはもうお約束のやり取りだった。

「アサリ綺麗だ。おめでとう!」

「ありがとうアサミ。これからも一緒に頑張りましょうね」

ムサシとアサミの結婚式も、近々執り行われる予定だった。

「陛下、おめでとうございます」

「おめでとさん」

「くっそ!シュウカの野郎、自分だけ可愛い奥さん手に入れやがって、絶対死なす!」

「駄目ですよソーシさん。そんな事言ったら。おめでとうございます」

新撰組のみんなも目いっぱいめでたい日を祝っていた。

「陛下おめでとうございますー。アサリちゃんもおめでとうですよー」

「天皇彌栄!陛下とアサリさんに幸あれ!です」

サスケとコタロウもこの日ばかりはバカな事は言わなかった。

他にも世界中から各地を預かる領主が集まってきていた。

しかしシャオとアイの姿はなかった。

「シャオとアイは何しとるんや?」

「ちゃんと神界も含めて全世界に連絡は入れているんだけどね」

「そういや神界でもご神木育てるんやーとか訳わからん事言ってたなぁ」

シャオとアイは、あの浄化の魔法を終えてからしばらくして、また再び旅に出ていた。

今度は神界を巡ると言っていた。

浄化の魔法が成功したとは言え、一度闇に落ちたものはすぐには戻らなかった。

そういうモノたちを助けると言って出て行った。

「まあでもそろそろあいつら来そうな気がするで。ほら、声が聞こえへんか?」

ヒサヨシに言われて、ムサシとアサミは耳を澄ませた。

「だから、殺しちゃ駄目なのは人間だけじゃなくて、虫も駄目なんだよ!」

「なんでそうなるの?ゴキブリは流石に殺すでしょ?」

訳の分からない会話が聞こえてきた。

「いやでもさ、ゴキブリにだって穢れた魂があるかもしれないし、殺さないに越した事はないだろ?」

「確かに殺さない精神をシャオが持ってくれるのは嬉しいんだけどさ、ちょっと極端だよ!」

ヒサヨシたちは空を見上げた。

そこにはドラゴンに乗るシャオとアイの姿があった。

「なんか知らんけど、昔のシャオとアイちゃんの立場が逆になった気がすんな」

「そうなんか?」

「うん。いつもアイさんが『殺しちゃダメ―』って言ってたもんね」

シャオとアイは皆が見ている事に気が付いた。

「なあなあお前ら、ゴキブリも殺しちゃ駄目だと思うよな?」

「そんな事ないよ。瞬殺するべきだよね?」

みんな苦笑いした。

「シュウカとアサリ、結婚おめでとう!」


この作品は、私が最初に書き始めた作品であり、現時点で最後に完成した作品でもあります。{笑}

※2022年6月14日。

その理由は、途中で書くのが嫌になり止めたからですが、どうして嫌になったのかは今ではもう忘れています。

多分理由はいくつもあったかと思います。

キャラが出すぎて書き分けが面倒になったとかw

でもおそらくは、終わりが見えたのに先が長く疲れたからだったのではないかと思います。

私は話を書く時、とりあえず設定と数話分思いつけば書き始めます。

その時、どういう終わりにするかなんて全く考えていません。

最初から結論が決まっている話なんて、書いてて面白くないですからw

で、書き始めるとキャラが勝手に動き出し、話は自然に進んでいきます。

書いている私も読者なのです。

それで書き進めているうちに、先の展開や終わりが見えてくるのです。

終わりが見えてくると、もう書いている方としてはあまり面白くなくなってくるわけです。

だから私の作品は、後半走る事が多いのです。{苦笑}

終わりが見えたら、『さっさと仕上げてしまおう』となるわけです。

でもこの作品はそもそも長い作品で、終わりが見えてもまだまだ先は長かったわけです。

正直言うと、世界統一編、エルフ編、魔界編と3章に分ける予定でした。

ちなみに書き始めた時は、『シャオという超凄い魔法使いが世界を平和に導く話』くらいの気持ちで書き始めています。

実は最初、この作品タイトルは『マジックソード』だったんですよ。

でも細かく書きすぎて、この3章編成が思いついた頃まだ話の1%も進んでいなくて、嫌になって書き直したんです。

それでなんとかエルフ編を書く所までいったんですが、思った以上にキャラが動かなくて、話が広がらなかったんですよね。

このまま書いても面白く書けない。

それで書くのを止めました。

それで今になって書こうと思ったのは、エルフ編と魔界編の話になる所だけで一緒にしてしまえばすぐに書けると気が付き、まとめて終わらせたわけです。

だから後半は少し展開が早く感じたかもしれません。

そんなわけで後半は少し走りぎみになりましたが、伝えたいテーマは色々と盛り込めましたし、割と納得しています。

此処に登場するキャラをモデルに、別の作品でも使おうと思えるくらいには好きな作品ですね。

あくまで私自身の話ですが。

ただまとめるにあたって、元々予定していなかった話を入れたので、全体的に書き直す必要も出てきました。

所々ですけどね。

それにチープな表現とか、日本語がおかしい個所も多々あったわけで、書き直したのは良かったと思います。

でも元の部分も残したかったので、最初の方は変に硬いかもしれません。

あまり描写はしないのですが、前半は結構やってますね。

初めて書いた作品ですし、小説とはこんなものだというイメージもありましたからね。

最近のは楽しむ為に書いているので、そういうのは一切ない軽いものとなっています。

そんなわけで、やっと完成してホッとしています。

いや、嬉しいですね。

心から、魔法使いシャオを最後まで読んでくださいましてありがとうございました。


ちなみに最初に考えていた後半ストーリー39話以降は‥‥


この後、なんとかエルフ達と分かりあえるようになる為、殺さない戦いを繰り返すも、タイムリミットが近づく。

しかたなくシャオ達は強硬策に出るが、結局、吸気口をふさぐ事かなわず、魔界の門が再び開く事に。

門は壊れ、魔獣があふれ出し、魔獣との戦いを余儀なくされる。

そこでようやく、エルフとの和解が成って、共に魔獣に立ち向かい、問題を解決。

それで平和が訪れる、そんな話にしようと考えていました。

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