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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
世界統一編
29/43

最後の戦い

ヒサヨシがシャオたちと合流したのは、トキョウが落ちた次の日。

ヒサヨシはローランドがトキョウに侵攻してきた事、そしてアキラの死を伝えた。

アイは泣き、他の面々も皆ショックだった。

「すまん。わしがちょっとトキョウを離れた隙に攻め込まれた。それもトキョウの北、黒の霧の中から来たみたいや。流石に想定外やった。すまん」

ヒサヨシは何度も謝っていた。

しかしそれを責める事など誰にもできない。

そんな方法でトキョウに侵攻してくる事など、ヒサヨシ以外は誰も予想できなかったのだから。

「それでローランドが来てる事もあるし、こっちの戦力を分けるのは得策やないと思て、わしは此処にきたんやけど‥‥」

シャオは少し疑問を感じていた。

ヒサヨシがこうもアッサリと逃げて来たからだ。

しかしヒサヨシの言う事も正しいと思ったので、疑問は心の奥へと追いやっていた。

「問題は、この後どうするかだ。トキョウを取り戻しに行くのか、それとも‥‥」

シャオの言葉にも、皆どうしていいのか分からない。

沈黙の中、アイの嗚咽だけが響いていた。

シャオはただ、アイを抱きしめていた。

「やっぱりここは、ローランドとの直接対決しかないんちゃうか?戦力もカンセイの町に退避した2000人と、ここにおるだけや」

「そうだな。ローランドをやれば‥‥この戦いは終わるかもしれない‥‥」

シャオは泣いているアイの事が気になっていた。

それでも今後の事を考えて、それを口に出していた。

「それで決戦の場としてここカンチュウは無理やろ。トキョウが落ちた今、どうするかも分からん。そこでや、未だにトキョウにもローラシアにも属さない地、エベス南ルートの東の玄関口ファイン国に行こうと思うねん。あそこの王はちょっとした知り合いでな。同盟には参加してくれへんかったけど、困ってるわしらを見捨てる奴やない。それにこの状況やと戦力も欲しいはずや。どや?最終決戦の地はファインにして」

「ああ」

皆の代わりに、シャオが少し気のない返事を返した。

シャオは以前から違和感を覚えていた。

全てがヒサヨシの思い通りに動いているのではないかと。

それが今、ますます大きくなっていた。


次の日には、シャオたちは既にファインに向かって出発していた。

そして2日後にはファインへと到着。

時を同じくしてヒサヨシの妖精や、ヒサヨシ傘下の2000人の部隊もファインへと入った。

その間にもローラシアの者たちは、中央大陸の町を次々と占拠していた。

中央大陸の町には、もう戦力らしい戦力はない。

逆らう事もできずにローラシアに下って行った。

そんな中、ヒサヨシの妖精ツーイツが、ローランドと話をしていた。

「わたくしはイニシエの遣い、ツーイツと申します」

ツーイツは片膝をついて頭を下げた。

「イニシエ、ですか。その遣いがどういったご用件ですかな?」

「今やこの世界はローランド様がほぼ手中にしたと言っても過言ではありません。それでもまだ残された地が在り、逆らう者もいます。我々はローランド様が完全に世界を一つにする事を望んでいます。もちろん我々もいずれは傘下に入るでしょう。ローランド様がイニシエ以外のすべてを治める王となられた暁には。つまりその時までイニシエは戦場にしないでいただきたくお願いに参りました」

「ふむ。進んで傘下に入ろうとする国を無下に扱うつもりはありません。それはお約束しましょう」

「ありがとうございます。ローランド様が世界の王になられる日を心よりお待ちしております」

「それではイニシエの長‥‥誰だったかな?」

「シュウカにございます」

「シュウカ殿には、確かに承ったとお伝えください」

「はい。それではわたくしは失礼させていただきます」

ツーイツは話がまとまると、スッとその場を後にした。

「どう思われますか、ゲパルト」

「何か裏があるように思われますが‥‥」

「でしょうね。ただどちらにしろ構いません。まずはイニシエ以外を、そしてシャナクルを倒します」

「はい」

「もうすぐだ‥‥」

ローランドは青い空を見上げた。


ファインでもヒサヨシの妖精は色々と準備をしていた。

テンホウとチーホウは進入路にトラップを仕掛け、奇襲のシミュレーションをしていた。

ショウスウの具現化した扉から、色々なトラップを取り出してはセットしてゆく。

ショウスウの扉は妖精界に繋がっているらしく、色々な物が出て来た。

ちなみにヒサヨシがチャイルドの町を焼き尽くした時は、テンホウとチーホウによりあらかじめ沢山の爆発物をセットし、それを一斉に爆発させたわけで、ヒサヨシがとんでもない能力を持っているわけではない。

それはただヒサヨシの力を大きく見せる為のものであった。

リュウイーは情報収集と伝達に飛び回り、コクシとサンゲンは国境の見張りをしていた。

そして1週間後、ローランドは中央大陸をほぼ手中に収めていた。

時を同じくして、ファインに新撰組も来ていた。

最終決戦はいよいよ目前だった。


ローランドと精鋭部隊2000人、エリート部隊2000人、各6部隊10000人がファインへと向かっていた。

その情報は既にシャオたちの耳に入り、皆待ち構えていた。

ローランドは真っ向勝負の構えで、真っすぐと部隊を進めてくる。

そこで爆発が起こった。

ローラシア軍の前衛であるラビット率いる第六部隊が、爆発に巻き込まれる。

「魔力を感じなかった。いったいどういう事?」

魔力による魔法トラップは警戒していたが、それでも第六部隊は爆発の中にいた。

ラビットも第六部隊メンバーも動揺していた。

これはヒサヨシの妖精が仕掛けた、古の技術による爆発だった。

現在はイニシエにのみ伝わる技術。

シャオたちも驚いていた。

「これは古の魔法か?」

そんな中、テンホウとチーホウが追い打ちをかける。

「ここで出来るだけ戦力を削るぞ!」

「アイアイサー!」

2人は更に古の技術で敵を攻撃し続けた。

「皆さん気を付けてください。魔法とは違う爆発です。マジックシールド展開!」

ラビットは必死に対処するものの、その被害は甚大で他の部隊にも及んでいた。

第九部隊隊長のカオス、第七部隊隊長マーシャルもその被害に遭っていた。

「ヴアッ!」

「いったい何処から?ぎゃあぁー」

それを見た第五部隊隊長エーテル、第三部隊隊長ウィン、そして第一部隊隊長キングは冷静な対応で回避を試みた。

「落ち着いてください。爆発物が潜んでいるなら、先に爆発させてしまえばいいのです」

「ふっ!雑魚を盾に進むも良し!」

「先の道は私が切り開こう。逃げ遅れた者は知らんからな。はっはっはー!」

3人の隊長は、第六部隊がまだ残るエリアを含む、前方へ向けてエネルギーブラストを放った。

逃げ遅れた者たちを巻き込み、大きな爆発が連鎖して、シャオたちへと続く道で次々と爆発が起こる。

その爆発は、やや後方を進む各部隊にも被害を広げ、そして止まった。

「よし!おそらくトラップは全て排除できたであろう!進めー!」

キングの声に各部隊は再び前進を開始した。

「第七第九部隊の残存兵は第六部隊に合流しろ!」

「おそらくトラップはもうありません。人の動きのみ注意してください」

かなりの被害が出たものの、その後の対処は早く、既に何事も無かったかのように行軍していた。

テンホウとチーホウの奇襲も既に周知され、シールドも展開していた。

「ここまでだな。一旦引いて後は影に紛れるぞ!」

「オッケー」

テンホウとチーホウはその場を離れた。

シャオはブルードラゴンを呼び出し、その背に乗り空へと上がる。

アイはいつも通り最後方から援護、その前にシュータ、ムサシ、アサリ、アサミが並ぶ陣形だ。

その前にヒサヨシと指揮下の部隊、そして妖精たちが待ち構えていた。

「シャナクルの魔法に気を付けてください」

「ドラゴンは我々が何とかする。各部隊は地上の奴らを頼んだ」

「ふん!何故イーグルがエリート部隊を指揮しているんだ?」

「おそらく敗戦の中で、少しは対応策を持っているのでは?」

「ドラゴンを相手にするのもアレですし、まあいいじゃないですか」

第一部隊の隊長であるキングにとっては、第二部隊の隊長であったイーグルが、エリート部隊を率いている事に少し納得がいかなかった。

「先手必勝!」

シャオはドラゴンのブレスに合わせて魔法を放った。

ローラシア部隊の前衛広範囲を結界が包む。

中で氷の矢が吹き荒れた。

「アイスブリザード!?この広範囲は対応できない!」

シャオは上級魔法で、まずは数を減らす事を考えていた。

「まだまだー!」

何度も魔法を放ち、ローラシア軍の数を一気に減らしてゆく。

「桁違いの魔力だ。イーグル!ドラゴンを早くなんとかしろ!」

上空のドラゴンを何とかすれば、シャオが上空から攻撃する場合、飛翔をコントロールしながらになる。

そうすれば当然攻撃の魔力は弱くなるし、ドラゴンのブレスや魔力の助力も無くなる。

キングはまずそこから何とかしなければならないと判断していた。

「ブルードラゴンは水属性だ。ライトニング系魔法で集中攻撃しろ!」

イーグルの指示で、エリート部隊は上空に展開し、ライトニング系魔法でドラゴンを攻撃する。

しかしライトニング系魔法は上空からの攻撃が基本であり、シャオがマジックシールドで上方を守る中ではなかなか効果的にダメージは与えられなかった。

「ちっ!上空からでは駄目だ。ライトニングボルトで確実に少しずつでもダメージを与えろ!」

イーグルとエリート部隊が、シャオとドラゴンに苦戦する中、地上では既に両勢力が入り交じって戦っていた。

「あれだけやってもまだこれだけ残っとるんか。しんどいのぉ」

「それになかなかの使い手の集まり。精鋭部隊を相手にするまで余力を残しておかなければなりません」

「しんどいこっちゃ」

ヒサヨシも妖精たちもかなりの使い手だが、数で圧倒的に負けていては流石に苦戦していた。

アイは魔法障壁や魔法防御等を駆使し、味方が1対1で戦える状況になるよう補佐していた。

「次です!」

「次から次へと‥‥もうやだぁ」

「わしはまだまだいけるでー」

「はぁ、はぁ、はぁ‥‥」

アサリやアサミ、ムサシはまだ余裕があったが、シュータは辛かった。

シュータは短期決戦には強いが、持久戦では魔力が持たない。

少しずつ疲労感が見えてきていた。

新撰組の面々は、多対一には慣れたもので中央で暴れている。

シャオの容赦ないサポートも、楽勝で受け入れていた。

「あいつらすげえな。これならもっと強力な魔法でサポートできるな」

シャオはアイスレインを放った。


ローラシアの各部隊は、かなり数を減らしていた。

「なかなか相手もやりますね」

「左様でございますな」

「こんな所で見てるだけなんて我慢ならねぇ。精鋭部隊は任せるから俺も行って来るぞ!」

ローランドの作戦は、数で相手を疲れさせた後に精鋭部隊で片づけるというものだった。

数で圧倒的に勝っているのだから、それが戦いの定石だろう。

しかしイージスは、見ているだけは性に合わないようで、作戦を無視して戦場へ向かった。

「全く、友だから楽をさせてやろうと思っていましたのに。イージスにはお気に召さなかったようですね」

「しかしまあ、彼ならほとんど問題はないでしょう」

ローランドとゲパルト、そして精鋭部隊は後方で待機を続けた。

「お前の相手は俺だ!」

イージスは新撰組のソーシに向かって行った。

「厄介な奴が来たな」

「あれはソーシ、お前に任せるよ」

「確かに相手できるのはソーシさんだけですね」

「あんちくしょうのこんちくしょう!相手してやらぁー!」

ソーシとイージスの剣がぶつかる。

辺りに爆風が広がった。

「剣の腕は五分と見た。しかーし!俺はそれだけじゃねーぞ!」

今日のイージスは剣だけにこだわらず、魔法も使ってきた。

「うわっ!こいつきったねぇー!」

「今日は負けるわけにはいかねーんだわ。お遊びはおしまいねー」

ソーシが押され始めた。

他の新撰組メンバーは、自分の戦闘を続けるのが精一杯で、助ける事もできない。

「ソーシ!ちっ!雑魚がウジャウジャと!」

「僕もいっぱいいっぱいです。くっ!」

「ヤバい。なんとかならねぇか?!くっ!なんともならねぇー!」

「これで終わりだ!」

イージスの魔法がソーシを襲う。

魔法が命中したソーシは一瞬動きを止めた。

「危ない!」

トシゾーがかばおうとしたが全く間に合わず、ソーシはイージスの剣に貫かれた。

「なかなか楽しかったぞ!」

そう言ったイージスは、ソーシから抜いたその剣でトシゾーも斬った。

「グッ‥‥あっ‥‥」

ソーシとトシゾーが倒れた。

「雑魚は粗方片付いた。おまえらソーシとトシを頼む。サイトー、2人でやるぞ!」

コンドーは新撰組メンバーに2人の事を頼むと、サイトーと共にイージスの前に出て向かい合った。


戦況はかなり分かりやすくなってきていた。

ヒサヨシ傘下の部隊とローラシアの各部隊はほぼ壊滅していた。

上空ではライトニングを浴び続けたドラゴンがナイフへと形を変えていた。

「ワシハソロソロゲンカイダ。アトハナイフニモドッテホサシヨウ‥‥」

ナイフはシャオの手の中に納まった。

シャオは自然落下する中、アイスブリザードで残りのエリート部隊を結界に閉じ込める。

そして地上に落ちる寸前に飛翔を発動し、再び上空へと昇った。

「はぁ、はぁ‥‥(きついな‥‥)」

(エリート部隊は全滅か。これ以上俺にシャナクルの相手はきつい。一度引くか)

イーグルはシャオの相手はせずアイたちの方へと向かった。


シュータはラビットの相手をしていた。

魔力は見る見る小さくなっており、シュータの限界は明らかだった。

「シュータ先生!下がってください」

しかしアイの言葉はシュータには届いていなかった。

そこへ突然やってきたイーグルがシュータを襲った。

シュータはただ襲い来る剣をまともに受けて、そして倒れた。

「先生!」

「今度はこの鬱陶しいマスタークラスの白魔術師だ!」

イーグルはアイに襲い掛かった。

「シャナクル様にアイ殿は任されているのでな」

トムキャットがイーグルの前に立ちはだかる。

「裏切り者が!」

しかしイーグルとトムキャットの力量は、明らかにトムキャットが上だ。

イーグルは無駄な戦いを避けた。

「お前の相手は他に任せる」

イーグルは後方へと引いて行った。


ヒサヨシの妖精たちは健在だが、かなりの疲労があった。

動きも少し重くなっているように見えた。

イージスを相手にしている新撰組も防戦一方だ。

もちろんアイたちもかなり疲れていた。

「そろそろですね。精鋭部隊の皆さん、一気に敵を殲滅してください」

ローランドの声に、今まで静観していた精鋭部隊が戦場に出て来た。

その動きは、エリート部隊をもしのぐスピードだ。

シャオは上級魔法で迎え撃った。

「テラアイスレイン!」

無数の氷の矢が、巨大な魔力を伴って精鋭部隊を襲う。

しかしそのほとんどがレジストされ、そしてシールドにより防がれていた。

「範囲魔法では殺れないか」

シャオは再び魔力を高めた。


精鋭部隊が参戦してきた事で、トキョウの面々は次々とやられていった。

「ダメだ!相手にできない。引くぞ」

「はい」

コンドーが地面を地の刀で斬りつけ爆発を起こし、サイトーの風の刀で風を起こした。

「煙幕?逃げるのね」

イージスは追う事も無く見送った。

その目はアイの近くにいるトムキャットをとらえた。

「トムキャット!一度やりたい相手だった。勝負だ!」

イージスはトムキャットへと向かって行った。

アイの傍で戦うアサリ、アサミ、ムサシ、トムキャットは、ラビット、キング、ウィン、エーテルを相手にしていた。

そこにイージスが来た事で一気に押され始める。

「トムキャット!勝負!」

イージスは戦いを楽しんでいた。

「この者の相手は私がする。他は何とかしてくだされ」

トムキャットとイージスの剣が交錯した。


アサリはそろそろ限界だった。

魔力は絶大だが、無駄な動きが多かった。

アサリは最後の力を振り絞りラビットへと向かった。

ラビットはギガメテオで応戦する。

それはアサリをまともに捕らえたが、アサリは怯まずラビットを斬りつけた。

ラビットの体が崩れる。

それに重なるようにアサリも倒れた。

「アサリ!」

アサリにとどめをさそうとしていたエーテルの前に立つアサミ。

アサミはエーテルの剣を受け止めた。

「お前の相手をしているのは俺だ!」

アサミと戦っていたキングが、アサミを後方から襲った。

「アサミはわしが守るんじゃ!」

キングの剣がアサミをかすめる。

そのタイミングでムサシの剣がキングをとらえた。

「ウッ‥‥」

キングは倒れた。

「そして美味しい所は私のものです」

ムサシに攻撃しようとしたウィンを、アイがシンボルロッドで背後から突き刺した。

シンボルロッドは鞘から抜かれていた。

アイが、初めて人を殺すつもりで攻撃した。

「ヴア‥‥まさか‥‥」

ウィンは左胸を貫かれていた。

アイは泣いていた。


ヒサヨシは妖精たちとのコンビネーションを駆使し、精鋭部隊を相手にしていた。

シャオも補佐していたが、妖精は次々にやられていった。

「あかん!わしも本気ださなヤバいやんけ!まだローランドは何もしとらんのに!」

ヒサヨシは魔力を高めた。

(一発勝負や。外したらこの戦い負けるで)

「チューレン!みんなでなんとか精鋭部隊を抑えてくれ!」

ヒサヨシは精鋭部隊の集まる所を結界で覆った。

「魔の結界や。滅びの結界ほどやないけど強力やで!シャオ!中に強力な魔法頼むわ!」

ヒサヨシの声に、シャオは結界内に魔法をぶち込んだ。

「ライトニングブリザード!」

ライトニングブリザードは、広範囲を対象としたライトニングとブリザードの複合魔法だ。

その威力自体はそこそこのものではあるが、結界によりエリアを限定される事により、威力は絶大なものとなる。

「やったか?」

しかしかなりの者たちはそれに耐えていた。

「流石に精鋭部隊、全滅とはいかないか」

「少し引いて戦力を集中させるで」

シャオとヒサヨシは、アイたちと合流して精鋭部隊を迎え撃つ事にした。

そこへイーグルもやってきた。

「そろそろ限界だろ!?今なら俺でも殺れる!」

シャオたちの中でまだ戦えそうなのは、シャオとヒサヨシ、トムキャットとアイ、そしてアサミとムサシだけだった。

それをイージスとイーグル、多数の精鋭部隊が襲う。

明らかにシャオたちは不利だった。

アイは初めて人を殺してしまった事で動揺しており、魔法には迷いがあった。

サポートが上手くいかない。

「アイ!しっかりせえ!」

「ダメだよぉ」

精鋭部隊の使い手の剣が、ムサシをとらえた。

「まだまだや!」

振り向きその者を斬ったムサシの背中からは大量の血が流れていた。

「大丈夫?」

「これくらい平気や!」

そうは言ったムサシだが、その視線は虚ろだった。

シャオももう限界に近い。

ヒサヨシも先ほどの結界でかなり消耗している。

アイは動揺し、トムキャットはイージスに完全に抑えられていた。

「そろそろ、決着の時間ですね」

ローランドはそういうと、ゲパルトを連れてシャオたちへと向かった。

「シャナクル!終わりです」

ローランドはシャオたちに向けてテラメテオを放った。

これだけの魔法、完全に止められる者など、シャオたちの中にはもういなかった。

巨大な火球がシャオたちを飲み込もうとする。

ヤバい、もう駄目だ、皆そう思った。

その時だった。

二枚の扇子が火球の前に現れる。

その扇子が魔法防御を展開した。

テラメテオはそれにぶつかると、次の瞬間には消えていた。

「何です?」

驚いたローランドが辺りを見回すと、右前方に人の姿をとらえた。

「誰だ?」

「は~い!シュウカちゃんで~す!」

眠そうな目をしたその男は、イニシエのシュウカだった。

「シュウカ、きとったんかい」

「ま~ねぇ~‥‥そいじゃ~最後の仕上げと行きますかぁ~‥‥しんど‥‥」

シュウカの扇子が風に乗って舞い上がると、広げた状態から閉じた状態へと変わる。

その途端、先から凝縮された魔力が精鋭部隊を次々と攻撃していった。

虚を突かれた精鋭部隊は次々と倒れた。

扇子は黒の魔力を集めながら、移動し攻撃を繰り返す。

更にはシュウカが操る魔法の糸も精鋭部隊を襲った。

糸の攻撃はさほど強力ではないものの、攻撃のコンビネーションもあり、少しずつ精鋭部隊にダメージを与えていた。

「シャオ!ローランドを殺れるか?」

シャオはただ頷いてローランドへと向かう。

ヒサヨシも後に続いた。

「シャナクル‥‥早々に決着をつけてあげますよ。そしてあの者もね」

ローランドはチラッとシュウカを見て言った。

「私も久しぶりに本気でやりますか」

ゲパルトも参戦して、最後の戦いが始まった。

(もう魔力が限界だ。アレを使って一発で決める!)

シャオが使おうとしている魔法。

それは聖騎士団から逃げる際使ったもので、持っている魔力を全て解放するというものだ。

人は魔力を70%くらいまでしか使えない。

魔力が無くなると命に係わるわけで、自然と残り30%くらいでストップがかかるのだ。

そのリミッターを外して魔法を使えば、命を落とす可能性あるし、魔力の回復も通常より時間がかかる。

シャオにとっては最後の勝負だった。

(なんとか隙を作らないと‥‥)

シャオはローランドの攻撃をかわしながら隙を探っていた。

ヒサヨシはゲパルトと剣を交えている。

ヒサヨシもどうやらかわすので精一杯のようだった。

(きっつ!こいつ強いわ)

「無駄です。もう勝敗は決していますよ」

ローランドは剣を抜きシャオに襲い掛かった。

「魔法使いはサポートが無い限り、剣には勝てませんよ」

ローランドの剣がシャオを襲う。

シャオはためらわず自らも間を詰めた。

ローランドの剣がシャオの腹の辺りを貫いた。

「さらばです。シャナクル」

そういうローランドへ更に体を近づけたシャオは、ローランドへ触れた。

(ゼロレンジからの魔法だ。防ぎようがないだろ‥‥)

シャオはローランドに魔力を流し込んだ。

「何?」

シャオの魔法、それは白魔術。

白魔術は基本的に、エネルギーブラスト以外攻撃系の魔法はほぼ存在しない。

しかし逆スペルというものが存在する。

シャオは治癒回復魔法の逆スペルを発動した。

「なっ!?なんだ?うがぁ~!」

ローランドの体を激痛が襲う。

体から血が滲みだした。

ローランドはもがき苦しんだのち、ぐったりと体の力が抜けたようだった。

(やったか‥‥)

シャオはローランドと共に倒れた。

「シャオ!!」

アイの悲痛な叫び声が辺りに響いた。

「まだだなぁ~」

シュウカはローランドを見ていた。

その姿はゆっくりと立ち上がった。

「はあ、はあ、かなりヤバかったですね‥‥しかし、私の勝ちです」

シャオの魔力は途中で尽きていた。

かなりのダメージは与えたものの、ローランドを仕留める事はできなかった。

「ヤバい!わしも限界や!シュウカ!なんとかなるか?!」

「あ~‥‥きついな‥‥でもやるしかないかぁ~」

シュウカやムサシは、なんとか精鋭部隊を無力化する事はできていた。

「わしも‥‥もうあかん‥‥」

「私も‥‥」

ムサシもアサミも限界で、2人は重なるように倒れた。

今この場に立っているのは、アイとトムキャット、ヒサヨシとシュウカ、イーグルとイージス、そしてローランドとゲパルトだけだった。

ローランドが更にシャオに剣を突き刺した。

何度も何度もシャオを貫いた。

「まだ何かあるかもしれませんからね。確実にしとめておきます」

ローランドのその姿を見て、皆狂気に震えた。

シャオの仲間たちは、皆もう駄目だと思った。

その時だった。

眩しい光が辺りを包んだ。

その光はアイの魔力だった。

持っているシンボルロッドを膨大な魔力が包む。

その魔力の大きさは誰もが信じられないくらいの大きさだった。

アイは虚ろな目でシャオを見ていた。

「これは‥‥」

「信じられない」

皆動きを止め、ただアイを見た。

アイの魔力は更に膨張し、一気に凝縮されるとシャオへと向かった。

それは一瞬の事で誰も動けなかった。

シャオはその魔力を受けると光に包まれた。

先ほどの光よりも更に眩しい光。

辺りの景色は全てが白に包まれた。

誰もが目を開けていられなかった。

ゆっくりと光が収束してゆく。

閉じていた目は、ゆっくりと開かれていった。

するとそこにシャオが立っていた。

「蘇生?んなアホな」

「ゼロレンジからでもあそこまでの傷はなかなか蘇生できないんだけどねぇ~‥‥愛の力かぁ~‥‥ああ、洒落だよ‥‥」

「凄いな‥‥はは‥‥」

敵味方関係なく驚いていた。

「信じられません。しかし復活したのならもう一度倒すまでです!」

皆が動きを止めている中、ローランドだけがシャオに向かった。

シャオはアッサリと攻撃をかわす。

ローランドは連続で剣を振るった。

しかし一切当たらなかった。

シャオが不意にローランドに掌を向ける。

魔力は感じられない。

それでも次の瞬間には膨大な魔力がローランドへ向けて放たれた。

「ノータイムでこの魔力?!バカなっ!」

ローランドはマジックシールドで防ごうとしたが、それをアッサリと突き破りローランドをとらえた。

その姿は一瞬で消し飛んだ。

「ローランド!」

見ていたイージスがシャオに向かう。

しかしそれも、シャオの放つ膨大な魔力に飲み込まれ、その姿を消した。

「わ、我々の負けですな‥‥」

「ああ‥‥」

ゲパルトとイーグルは剣を足元へと落とした。

2人の背中から、シュウカとヒサヨシが剣を突き刺した。

「後は仕上げだけぇ~」

「そやな‥‥」

こうしてローラシア国、ローランドとの戦いは終わった。

ヒサヨシの妖精スウアンによる癒しの風が、何人かの命を救っていた。

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