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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
世界統一編
23/43

城塞都市イニシエ

次の日から、バトル大会に参加した者の割と多くが、雄志軍に参加してくれるという事になった。

しかしその中で一番期待されるムサシが渋っていた。

「是非お願いしたい。どうか我々と共にローラシアの戦争を止める事に協力していただけないか?」

「そんなんゆわれてもなー。わしは金を稼いで後は悠々自適に暮らしたいだけやし」

アキラの頼みも、ムサシは聞く気がなさそうだった。

「でもさ、金があってもローラシアが世界を統一してしまったら、悠々自適とか無理じゃないかな。ローラシアの民は王にとって家畜みたいなもの。もしもムサシの住む場所がローラシアに占拠されたら、ムサシの金もどうなるか」

「それやったら他に移ればええねん」

「だから、この地球上全てがローラシアになるんだって」

どうでもいいといった感じのムサシだったが、シャオの言葉に驚きの表情へと変わった。

「なんやと!?誰に断ってそんな事すんねん!そんな奴はわしがゆるさんで!」

「だから、その悪い奴を一緒に倒そうって話」

シャオは満面の笑顔でムサシを見た。

「あ‥‥でもなー‥‥わしはタダで働くのはいやや。報酬はあるんろうな?」

ムサシはニヤッと笑って親指と人差し指で円を作った。

「その点は約束するわ。わしが責任を持って払うで」

ヒサヨシの言葉にムサシは手を打った。

「よっしゃ!交渉は成立や。ほならローラシアが攻めてきたら呼んでくれ」

そう言って立ち去ろうとするムサシの手を掴み、ニコニコとした笑顔でアサミが言った。

「じゃあこれからみんなで特訓よ。今のままじゃ勝てない相手だからね」

「げ?そうなん?」

渋い顔をしたムサシを、アサミは引きずっていった。

「だーまーさーれーたー!」

引きずられていくムサシを、皆は笑顔で見送った。


バトル大会から1週間が過ぎた。

既にイタリー国はローラシアの傘下に入っていた。

ローラシアの第二部隊隊長『イーグル』は、更に東へと軍を進めるべく、イタリーの王と話をしていた。

「で、ここから東に行く為にはエベス山脈を越えなければならない。そのルートが北と南に1つずつか。でも南には城塞都市イニシエがあるから北から行けと、そういう事だな」

イーグルは割とイケメンな顔を王に近づけて言った。

「そうです。たとえあなた方でもイニシエを通って行くのは危険です。はい」

「俺達でも危険だと?それは俺達でも無理って言ってるのかな?」

イーグルはイタリーの王の胸ぐらを掴んで睨みつけた。

「いえ、あなた方なら大丈夫だと思われるのですが、無理はする必要がないかと。はい」

「俺達は急いでるの。そんな遠回りはしたくないわけ。南から行くから案内してくれるよな」

「はい。わかりましたでございます。はい」

イタリーの王は、ただイーグルの言うがままにするしかなかった。

「それと戦争資金と食料を準備しろ。税は70%に上げて、半分はローラシアが世界の為に使ってやる。文句を言う奴がいたら俺たちがぶっ殺してやるから」

「はい。言われた通りさせていただきますでございます。はい」

イタリーの王は、既に王の威厳も何もなかった。

(とはいえ、もうすぐ第四部隊と第八部隊も合流するし、それまでは念の為に待つか‥‥)

こんなイーグルではあったが、イタリーの王の意見も少しは聞く耳を持っていた。

一応部隊長と言った所であった。

中央大陸に入っているローラシアの部隊は、第四部隊、第六部隊、第八部隊、第十部隊、そして第二部隊の計5部隊だった。

内アトランティス国から北に第六部隊と第十部隊が侵攻。

東にその他が向かっていた。

1日が過ぎて、予定していた部隊が合流した。

北へ向かった部隊はこれからフレンチ国攻略に、第二部隊他はイニシエに向かった。


1週間が過ぎた。

ローラシアの第二部隊を含む3部隊は、イニシエの壁のまで来ていた。

「これがイニシエの壁か‥‥」

イーグルは第四部隊隊長『ニコル』と、第八部隊隊長『エヴァー』と共に壁を見上げていた。

部隊長は、部隊番号が少ない方が上の立場となっている。

「こんな大規模に壁で囲まれている町なんて初めてですね」

ニコルは少し小柄だが、常にニコニコと笑顔を絶やさない、少し可愛い感じのする男だった。

「大した事ないわよ。さっさとぶっ壊してしまえば同じ事よ」

エヴァーはスケ番的な雰囲気漂う女性で、勝気な性格が顔にでていた。

「お出迎えも無しか。こんな警備体制でよくも城塞都市とか言えたもんだな」

イーグルは鼻で笑った。

「イーグル、そろそろ行きましょう。エヴァーがイライラしてきましたよ」

「そうだな。あいつが暴走したら止めるがの面倒だ」

ニコルの笑顔の先にあるエヴァーを見ながら、イーグルは1つため息をついた。

「まずは入り口、或いは壁の破壊だ!あとは隊長の指示に従って確実に敵を駆逐していく!第二部隊はまず門を攻撃だ。一斉にエネルギーブラスト!」

イーグルの言葉に、第二部隊の面々は魔力を高め始めた。

そして待ってましたとばかりにエヴァーも第八部隊への命令を告げた!

「私たちはとにかく壁を壊すよ!魔法を打って打って打ちまくれ!」

「それでは我々は他の部隊の掩護に回りますか。呼吸を合わせて各自やってください」

ローラシア軍の攻撃が始まった。

門や壁にぶつかる魔力が爆発し、辺りに大きな音が響く。

流石にローラシア軍と言えるような強力な魔法だった。


その頃中では、イニシエの長『シュウカ』が、遠くから聞こえる爆発音によって眠りから目を覚ました。

庭の木に吊るしたハンモックで寝ていたようだ。

「五月蠅いなぁ~‥‥お~い、新選組!ちょっと追っ払ってきて!よろろ~」

そう言ってシュウカは再び目を閉じた。

しかしその眠りを邪魔するように、イニシエの忍者と呼ばれる2人の女性『サスケ』と『コタロウ』が声をかけた。

「シュウカ様。寝てる場合じゃないですよー。わんさか敵が来てますよー」

「そうです。今回の相手はかなりの手練れです。対応した方がよろしいかと」

ちなみにこの2人、女性なのに男性の名前なのには訳があった。

これは、とりえずシュウカが分かりやすく付けた為だ。

容姿は割と可愛らしいクノイチで、正直名前は不釣り合い極まりなかったが、そういう意地悪なネーミングはシュウカの趣味だった。

再び目を開けたシュウカは、寝ぼけた顔でそう言う2人を見た。

「ニッコー」

「お目覚めになりましたか」

2人の笑顔を見てシュウカはようやく体を起こして伸びをした。

「新選組だけじゃ無理かのぉ~?」

シュウカはまだ寝ぼけているようだった。

「うんうん。無理!無理っすよー。私たちも行きますから、早く来てくださいねー!」

「そうです。シュウカ様、よろしくお願いします」

2人はそう言ってスッとその姿を消した。

正確には高速でその場を去った。

「久しぶりにかなりの使い手が来ちゃったみたいねぇ~しゃーない。ぼくちんも行っちゃうかぁ~」

シュウカは眠い目をこすりながら、それでも魔力を高めて飛翔した。


壁の外では、門の前へ出て新選組の面々が、ローラシア軍を相手にしていた。

新選組はこのイニシエの警備部隊で、剣の使い手たちが集まっている。

中でも局長の『コンドー』と、副長の『トシゾー』、そして『ソーシ』と『サイトー』は強力な剣士だった。

ちなみにこれらの名前も、シュウカが勝手につけた名前だった。

「今回の相手は、かなりやばくねぇか?」

「ヤバいのはあんたの顔だ」

「ヤバいのはシュウカの頭だ!」

「皆さん、訳の分からない事言ってないで、敵を斬ってください」

新選組主力の4人は、敵に囲まれながらも上手く対処していた。

「数が多すぎるぞ?ホントはあっちの壁を壊そうとしている奴ら、なんとかしないといけねぇんじゃね?」

「ああ、あっちはサスケとコタローががなんとか防ぐだろ?ほっとけほっとけ!」

「そうそう、壁が壊されて困るのはシュウカだし、関係ないよ」

「ソーシさん、あんたホントに味方ですか?」

無駄話をしながらも、集まる敵を斬ってゆく実力はかなりのものだった。

壁の上では、ようやく到着したサスケとコタロウが、息つく間もなくマジックシールドを展開していた。

「省エネで壁を守るよー」

「はあい。さぁスケちゃん!」

「スケちゃんゆうなー」

壁の上の2人も、無駄口をたたきながら敵から放たれるエネルギーブラストを上手く防ぐ技量はかなり高かった。

「なかなか手こずるな。かなりの使い手がいるようだ」

イーグルの言う通り、ローラシア軍はかなりてこずっていた。

これは正直想定していなかった。

少しずつ新選組の下っ端連中は数を減らしていたが、それ以上にローラシア軍の方に被害は多かった。

そこにようやくシュウカが壁の上へと到着した。

「シュウカ様遅いよー。敵の数も多すぎだしー。対応が間に合わないよー」

「そうそう。もう寝ぼけてる場合じゃないですよ。ちゃっちゃとやっちゃってください」

2人の言葉も、聞いているのか聞いていないのかよく分からない状態で、シュウカは目をこすった」

「あー‥‥じゃあ手榴弾でもばら撒いちゃうかぁ~ふふふ‥‥死ねや新撰組!」

「おーい‥‥」

という2人の言葉も聞かず、シュウカは壁の上から、下で戦闘している者たちへ向けて手榴弾を投げ始めた。

手榴弾は、魔力を凝縮した小さな黒い塊で、少しの時間をおいて爆発する。

シュウカオリジナルの魔法で具現化したもので、大きさは手に収まるくらいで楕円形をしていた。

たちまち壁の前のあらゆる所で爆発が起こった。

「な、なんだ?味方がいるのに爆破している?」

イーグルは一旦後ろへと引いた。

「相変わらず敵味方関係無しだな」

「ああ、それだけ信頼されているって事だろうよ。くぅー!」

「シュウカさまー!手加減してくださいよー!うわっ!シュウカの野郎ゆるさねぇ!此畜生!」

「もうどうにでもしてください。ヤバい人は門の中へと避難してくださいねー!」

新撰組の4人を残して、他のメンバーは門の中へと避難した。

残った4人は、なんだかんだと言いながら、それでもこの中で敵を倒していった。

高度に洗練されたコンビネーションと言えるかもしれない。

「これ、コンビネーションって言うの?」

「ああ、言うんじゃね?言わなきゃやってられんでしょ?」

「とにかくシュウカの奴死なす!ぜってー死なす!」

「はいはい口ではなく手を動かしましょうねー」

コンビネーションではなくとも、攻撃は上手くかみ合っていた。

「あそこですか」

壁の上のシュウカに気が付いたニコルは、飛翔で上空へと飛び出した。

そして辺りを窺った後、シュウカの前へと降りて来た。

「なかなか面白い魔法ですね」

ニコルはいつもの笑顔で話しかけた。

シュウカは何もこたえず、その間もポンポンと手榴弾を投げ続けた。

「申し訳ありませんが、あなたには死んでいただきますね」

ニコルは魔力を高めた。

「私たちはソロソロ‥‥」

サスケは一声シュウカに声をかけると、コタロウを連れてゆっくりその場から離れた。

ニコルはシュウカに向けてメガメテオを放った。

シュウカはようやく手榴弾を投げるのを止めてニコルを見た。

目の前にはメガメテオが迫っていた。

回避は不可能な距離だとニコルは確信した。

シュウカに更なる攻撃をする為に向かっていった。

次の瞬間シュウカの周りを結界が包みメガメテオを遮断した。

「何ですか?」

ニコルは、メガメテオを受けてダメージを負うであろうシュウカに、追い打ちするべく向かって跳んでいたが、想定外に一瞬動きを止めた。

シュウカはその隙を見逃さず、逆にニコルに接近して剣で斬りつけた。

「くっ!」

ニコルはそれをかわそうと、体を横へと跳ばす。

しかしシュウカの剣が蛇のようにグニャリと曲がり、ニコルの足をとらえて斬りつけた。

ニコルはその場に倒れた。


シュウカの剣は、伸縮自在で波をうつように曲がる魔法の剣、『ウェヴスォード』だった。

ちなみに新撰組の4人も、魔法の剣を操っている。

それは片刃の『刀』と呼ばれるものだ。

コンドーの持つ刀は、黄色いオーラに覆われた、振れば爆発を起こす地の刀。

トシゾーのは赤いオーラで覆われ、対象に火をつける炎の刀。

ソーシのは青いオーラで覆われ、斬りつけた場所を凍らせる氷の刀。

そしてサイトーのは緑のオーラで覆われた、電撃を加える風の刀だ。

ついでにサスケとコタロウの持つ剣も、『忍者刀』と言われる魔法の剣で、使用者の魔力を高めるものだった。


「その剣はウェヴスォード?」

ニコルがそう声を出した時、目の前にはシュウカが立っていた。

強大な魔力を発していた。

(ヤバい!)

そう思ったニコルは、飛翔で空へ逃げようとする。

しかしそれよりも早く、シュウカのテラボルトがニコルに落ちた。

「ぐあぁ!」

それでもニコルはなんとかレジスト(抵抗)して空へと逃げた。

「強い。私だけでは勝てませんね。いや、あの強さは精鋭部隊以上です‥‥」

ニコルは意識をなんとか保ちつつ、第四部隊の後方へとたどり着いた。

そしてそこで倒れた。

「あれをレジストしてくるかぁ~。つよぉ~!」

シュウカはそう言いながらニコルを見送ると、再び手榴弾を投げ始めた。

「ニコルがやられた?何者だあいつは?中央大陸にそれほどの使い手がいたのか。それにこいつらも強い」

イーグルはトシゾーと剣を交えていた。

「剣技では五分だが、あの魔法の剣相手では分が悪いか」

イーグルの頭では、一旦引く事を考えていた。

「こいつら強い!この爆破の中、関係なくやりやがる!」

エヴァーはソーシ相手に押されていた。

「ちゃっちゃと終わらせるよー!僕はもう疲れたよ。お前も疲れたろ?」

ソーシは涼しい顔で余裕があった。

「イーグル!」

「ああ、一旦引くぞ!」

そう言うと、エヴァーとイーグルは部隊後方へと姿を消した。

直ぐにローラシア軍は全員で引き始めた。

「ふう。やっと引いてくれるか」

「なかなかやる奴だったな」

「ああー!天使が見えるー!」

「ソーシさんはまだ生きてますよ」

戦闘を終えた新撰組の4人は、引いていくローラシア軍を見ながら並んで立っていた。

「とりあえず出直す!今度はこうはいかんからな」

イーグルの捨て台詞は、4人へは届かなかった。

「久しぶりに手こずったな」

「これくらいの方がやりがいはある」

「トシさん本気で言ってるの?バカだよね?楽な方がいいに決まってんじゃん!」

「まあまあ。トシゾーさんも、こうでも言わないとやってられないんですよ」

各々言いたい事を言いながら、門から中へと入っていった。


その頃、ローラシアの帰っていった道の方から、爆発音がいくつも鳴り響いていた。

「こんな所にトラップだと?!」

ローラシア軍は壊滅状態だった。

この爆破は、逃げる敵をただでは逃がさないようにする為の、サスケとコタロウによる地雷魔法だった。

地雷魔法とは、魔力を圧縮したものを地中にセットし、そこに人の魔力が触れると爆発する魔法だ。

気を付ければ回避は可能だが、爆発はかなり大きいのでくらうとかなりダメージを受ける。

しかも油断している者に突如襲う爆発であるから、防御が間に合わず効果は絶大だった。

逃げ帰ったのは、各部隊長と他数百人だけだった。

3部隊で4500人いたそのほとんどがやられた。

ローラシア大国最大の敗戦だった。

ちなみに勝てないと思ったらすぐに撤退、或いは死んだフリをするのがモットーの新撰組に死者はなかった。

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