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魔法使いシャオ  作者: 秋華(秋山 華道)
世界統一編
17/43

南へ

シャオは一度家に戻り、こちらに来る時に持ってきた食料を全て洞窟へと運んだ。

移動は全て飛翔を使ったので、魔獣と出合う事はなかった。

持ち帰った食料は、皆で分けて食した。

魔界の門へと向かうのは、シャオとナディア、それにチューレンとアサリとアサミに決めた。

アイにはナディアの代わりに結界を張ってもらわなければならない。

アイも本当はシャオと共に行きたかったが、他に結界が張れる者がいなかった。

いや、実際はもう1人いたわけだが、交代で結界を張る者が必要というわけだ。

そしてアイにはもう一つやらなければならない事があった。

ここに居る誰かに結界魔法を教え、その後の準備をする事だ。

上手く魔界の門が閉じられたとしても、こちらの世界にいる魔獣はそのまま残る事になる。

魔界の門を閉じられれば海の荒れは収まるし、助けの者を南の大陸へ送る事も可能だが、それまではまだ洞窟生活を続ける事になるだろう。

それができるようにしておく必要があった。

洞窟には念の為、チンロウも残った。

魔獣と戦える者として、或いは食料調達要員として必要と考えた。


南の大陸は他と比べれば小さな大陸だった。

とは言え大陸の中心まではかなりの距離がある。

普通に歩いて行くなら2週間くらいだろうか。

この距離だと、魔力を使って全力で走れば2日くらいで着く。

飛翔でも半日。

ただどちらで行くにしてもかなりの魔力を消費する事になるだろう。

近くまで行ったら1日休む必要がありそうだ。

シャオたちは、飛翔で一気に近くまで行き、1日休んでから門へ向かう事にした。

太陽が頂点に達した頃、シャオたちは空へと昇った。

「ナディア姐、重い‥‥」

「なんだって?私は太ってないよ。あんたが軟弱なんだよ」

飛翔中、その程度の会話をするくらいには余裕があった。

スピードはやや抑えていたが、それでも今日中には近くまで行ける計算だった。

ちなみにアサリもアサミも既に飛翔が使えた。

アサリは結構魔力の使用に無駄が多かったが、魔力の絶対量が多いのでなんとかなっていると言った感じではあった。

アサミは無駄が無く省エネ飛行だったので、全く問題がない。

チューレンは風に乗って空に浮いている感じで、こちらも問題はなさそうだった。

「アサリ、大丈夫か?」

「少し辛いですね。でももう少しなら大丈夫です」

シャオはその返事を聞いて、一旦ここらで休憩が必要だと判断した。

何故なら、地上に下りたら魔獣と遭遇するかもしれないのだ。

完全に魔力が切れた状態で下りるのは危険なのである。

「少し休むぞ!出来るだけ見晴らしの良い所に下りる」

シャオはそう言うと高度を下げた。

他もそれに続いた。

少し丘になっている荒野へと一同は下り立った。

辺りが見渡せるので、魔獣が近づけば一目で変わる場所だ。

飛んでいたスピードと時間から、おそらく中間地点辺りかと思われる。

ナディアの持っている本に、過去の受け継ぐ者が追記したであろう地図からそれが推測できた。


各々岩などに腰をかけ体を休めた。

とりあえず周りに魔獣の姿はなさそうで、シャオは安心して横になった。

次に飛んだら、後は今日の目的地までノンストップだ。

しっかり休んでおこうと思った。

下りたらいきなり戦闘、なんて事もあり得るのだから。

「わたくしは疲れていませんから、皆さんはしばらく眠っても構いませんよ。わたくしが見ていますから」

「そっか。ならばよろしく」

シャオはチューレンに任せて目を閉じた。

いくらかの時間が流れ、シャオは目を覚ました。

太陽の位置が大きく変わっていない事から、それほどの時間は経っていない。

それでもかなり回復できたようだった。

その後少しして、他のみんなも目を覚ました。

問題はなさそうだった。

準備ができた者から立ち上がった。

いつでも出発は可能である。

その時遠くに魔獣の姿が見えた。

町で見た狼魔獣よりも体の大きな魔獣だった。

数もかなり多かった。

「出発するぞ!戦闘は極力避けたいからな」

シャオがそう言うと、皆は頷き空へと昇った。

直ぐにその魔獣たちは見えなくなった。


シャオたちは無言で、目的地を目指して飛び続けた。

太陽はかなり傾き、空が赤くなり始めていた。

地図通りなら、そろそろ魔界の門が見えるはずだ。

直ぐにシャオの目にそれは捉えられた。

「ストップ!」

シャオは皆に声をかけた。

それを聞いて皆空中で静止した。

「目的地は確認した。今日はこの辺りで休めそうな所を探す」

そうは言ったものの、辺りは全て森だった。

「何処も森だねぇ」

アサミは何処に下りて良いのか分からず、シャオを見た。

「とりあえず下りるしかなさそうだな。洞窟か何かを探すぞ」

シャオはそのまま真下へと下りて行った。

他もそれに続いた。

「このまま門を閉じに行ってもいいんじゃないかな?」

「だな。私は全く疲れてない。門を閉じるのは私だし、今から行っても問題ないよ」

アサミの提案に、ナディアはガッツポーズしながら賛成した。

「門の近くにはどんな魔物がいるかも分からない。嫌な予感がするんだ。門の傍に行く時は皆が万全で臨みたい」

「そうです。我々に失敗は許されません。命はいくつもあるものではないのですから」

シャオとチューレンの言葉に、アサミもナディアも納得した。

森の中へ下りると、とにかく休める所を探す。

歩きながら木の実など食べられる物を集めるのも忘れない。

辺りは既に少し暗くなり始めている。

魔獣は夜行性の種が多いと言われているので、夜になる前に休める場所を確保したかった。

皆足早に森を歩いた。

太陽は既に沈み、もう間もなく空の色が闇に染まろうかという頃、岩の割れ目が見えた。

「あそこ!中に入れるかな?」

「ああ。あそこなら入って休めるかもしれない」

アサミが見つけたのは洞窟のようだった。

皆期待してそこへ向かった。

その時だった。

その割れ目から何かが飛び出してきた。

羽を持ったそれは、先頭にいたアサミに襲い掛かった。

「危ない!」

シャオの言葉に、アサミはとっさに剣を抜いた。

元々剣士だったアサミの反応は早く、間一髪の所で魔獣らしきものの爪の攻撃を受け止めた。

「ガーゴイルか」

ガーゴイルは羽を持つ魔獣で、洞窟など暗い所を好んで住み着いている。

昼間はあまり外には出ない夜行性の魔獣でもある。

「おそらくあそこはガーゴイルの巣だ。中にはまだいるぞ!」

シャオがそう言っている間にも、次々とガーゴイルが穴から出てくる。

結局合計10体のガーゴイルが穴から出てきて、シャオたちを取り囲んだ。

「やるしかねぇな。ナディア姐は俺の後ろに」

ガーゴイルが襲ってきた。

アサリとアサミは剣で対応した。

魔法で戦うには状況が少々きつい。

シャオはまず背後と頭上にマジックシールドを展開した。

「チューレン、補佐を頼む!」

「承知いたしました」

チューレンはシャオに近づくガーゴイルだけに対応を絞る。

その間シャオは魔力を高めた。

アサリとアサミは既に姉妹のコンビネーションで1体を倒していた。

「まず1体っと!」

「油断は禁物ですよ!」

アサミがライトニングの魔法で牽制し、アサリの剣がガーゴイルを切り裂いていた。

シャオの魔力が一際大きくなる。

チューレンは複数のガーゴイルを相手に苦戦していた。

「アイスレイン!」


アイスレインとは、コールド系魔法の1つで、アイスストームとは少し違う。

アイスストームは氷の刃で切り裂く魔法であるが、アイスレインは氷の矢が空から降ってきて敵を突き刺す。

範囲攻撃が可能で、多くの敵を一度に攻撃するのに効果的である。


全てのガーゴイルの頭上から、氷の矢が雨のように降り注ぐ。

空を飛ぶガーゴイルの羽も貫き、それらは地面へと落ちて来た。

そこに追い打ちをかけるように更に氷の矢は降り注ぎ、ガーゴイルを何度も突き刺していった。

全てのガーゴイルが地面に倒れ息絶えていた。

「ここまでかなりの魔力を使っていたから、ためるのに時間がかかった。しかしこの辺りの寒さが魔法の威力を高めてくれて助かったな」

万全のシャオならもっと簡単に対処できただろうが、今日は魔力を使いすぎていた。

朝早くから起こされ、狼魔獣を相手し、飛翔で洞窟と家を往復し、更に半日此処まで飛翔となれば、シャオでも流石にきつかった。

「穴の中、まだ残っていないか確認してくる」

シャオはライトの魔法を使って中を照らした。

中はそれほど広くはなくて、何もいない事はすぐに確認できた。

「大丈夫そうだ。中に入ろう!」

シャオの言葉に皆安心してその洞穴へと入った。

皆が入った後ナディアが結界を張った。

これで今晩は此処でゆっくり休めそうだった。

森で採った木の実などを食べてから、皆は体を休めた。

結界はシャオとナディアで交代しながら維持した。

こうして皆、今日の疲れはしっかりと取る事ができた。


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